ヤマフジとは
ヤマフジの特徴
ヤマフジはつるで巻き付いて成長するマメ科の植物です。落葉樹でフジ属に分類されるため観光地などで目にするふじの花と同じ特徴をもっています。日本の固有種で別名は野藤(ノフジ)とも呼ばれます。ヤマフジ、ノフジという名はその名の通り山や野に生育することが由来となっています。淡い紫色の花が主流です。
ヤマフジの花の色
写真:白花美短の苗
4月から5月にかけて花を咲かせるヤマフジ。花の色は淡い紫色が主流ですが白い花の園芸品種も存在します。シロバナヤマフジもしくはシロカピタン(白花美短)という品種名で流通しています。また最近では桃色の花もアカカピタン(赤花美短)、昭和紅という名で流通し始めています。
つるは右巻き?左巻き?
ヤマフジのつるは右巻きです。右巻きというのは上から見たときに反時計回りに巻き付いている状態のことを示します。左下から右の上に向かって反時計回りで巻き付いていきます。この右巻き左巻きという規格の考え方は近年になって変わったため反時計回り、と覚えたほうがややこしくなくて良いかもしれません。
右巻きと左巻きの混在の原因
ヤマフジや朝顔のつるの右巻き左巻きについてはしばしば混在がみられます。ヤマフジにおいても右巻きと記載されているところと左巻きと記載されているところがあるのです。文部省による学術用語が制定された近年までは日本古来からの考え方から参照して左巻きという説が一般的でした。以下のサイトで詳しく説明されています。
ヤマフジとふじ(ノダフジ)の違い
つるの巻き付く向き
前述したようにヤマフジのつるは右巻きです。対してノダフジと呼ばれる普通のふじの花のつるは左巻きになります。二つの植物の違いはつるが左巻きか右巻きかによって見分けることができます。ふじにも白い花を咲かせる品種がありますがシロバナヤマフジと異なりつるはやはり左巻きです。
花の序列の長さの違い
花が鈴なりになって咲く花序(花の集団)の長さはヤマフジのほうがふじより短くなります。観光地などで地面につくほど長く花をつけるふじとは違い、ヤマフジはブドウくらいの房の長さの花をたくさんつけます。蝶のような形をした花を並べてみてもヤマフジのほうが大きめです。
葉の数の違い
ふじの葉は楕円形の小葉を並べてつける特徴がありますがヤマフジの小葉が11枚前後なのに比べてふじは19枚近くあります。
シナフジという別種も
ヤマフジと同じくつるが右巻きのふじの仲間でシナフジという品種も存在します。花序が細長く伸びるところに違いがあります。その名が示すように中国が原産で昭和になってから渡来しました。
ヤマフジの分布
山地で見ることができるヤマフジ
ヤマフジは本州の西南部及び四国、九州の山地に分布しています。比較的暖かい地方を好みますが中部地方や関東地方でも確認されています。日本に自生しているのはヤマフジとふじ(別名ノダフジ)の二種ですが本州より西南地域の低い山では両方が見ることができます。
シロバナヤマフジも自生している
西日本ではシロバナヤマフジも自生しています。紫の花と白い花が大きな木のてっぺんまで巻き付いて登っていく姿は開花時期にはとても目立ちます。
ヤマフジは繁殖力旺盛
ヤマフジは低い山や林に分布し、大木に巻き付いて登っていく植物ですがそのせいで巻き付かれた植物が枯れてしまう場合もあります。繁殖力の旺盛なヤマフジは他の植物の光合成を阻害してしまうことがあるのです。また締め付けて倒してしまうこともあります。その繁殖力の高さから少しずつその分布を広げています。
ヤマフジの育て方
観賞用に栽培可能
紫だけでなく赤や白など様々な品種があるヤマフジは観賞するために栽培できます。育て方も難しくありません。基本的にはふじの花と同じく日当たりがよい、水はけのいい湿潤な土の場所で管理しましょう。ただし、藤棚を作るのはヤマフジより普通のふじが適しています。ヤマフジは壁や支柱に這わせて観賞しましょう。
肥料は有機肥料を
植え付ける前にたい肥や腐葉土を混ぜ込みます。追加の肥料として油かすなどの有機肥料をまきます。
2月~3月 | 冬場の施肥(油粕や有機肥料、堆肥など) |
3月 | 植え付け、植え替え(鉢植えの場合) |
4月~5月 | 開花時期 |
5月 | 花後の施肥(冬場の施肥と同様) |
6月 | 剪定 |
根の扱いに注意
ヤマフジは頻繁に植え替えをすることを好まない植物です。地植えの際はしっかり場所を選びましょう。鉢植えの場合は数年に一度、3月に一回り大きい鉢に入れ替えます。その際は根の形を崩さないように丁寧に移動させましょう。
花が咲かない場合は
ヤマフジは比較的花が咲きやすい植物ですが植え替えなどをきっかけに咲かなくなってしまう場合もあります。虫や病気のケアだけではなく次の点も注意しましょう。
花の後の種を間引く
マメ科のヤマフジはえんどう豆のような房に入った種を多くつけます。適度に種を間引いてやらないと養分が取られて翌年の花付きに影響してしまいます。
剪定で根の伸長より葉を優先させる
鉢植えの場合、あまり大きい鉢に植え替えてしまうと根が充実するまで花が咲かなくなってしまいます。また鉢植えでは咲いていたのに地植えにしたら咲かなくなってしまう要因も根の伸長に関係があります。6月に剪定し、葉をよく繁らせることで花芽の付きをよくしましょう。
まとめ
藤の花の長い房が風に揺れる様子はなんとも日本的な風情があって美しいですよね。山地で見かけるヤマフジは美しさだけではなく木の上まで巻き付く生命力の強さを感じます。園芸品種として育て方も簡単なヤマフジは紫だけではなく桃色や白も流通しているのでぜひお気に入りを見つけてみてくださいね。
写真:ヤマフジ