ツルコザクラとは
学名 | Saponaria ocymoides |
科名・属名 | ナデシコ科・サボンソウ属 |
原産地 | ヨーロッパ |
別名 | サポナリア・オキモイデス、ロックソープワート |
開花時期 | 4~7月 |
ツルコザクラは4~7月に開花する多年草です。草丈は15~30cm、赤みを帯びた茎が地面を這うように横に広がります。ヨーロッパや西アジアに自生するサポナリアの仲間で、育てやすく寒さや乾燥にも強いです。花つきがよく、わき芽もたくさん出るためグランドカバーにもおすすめですよ。
ツルコザクラの特徴
特徴①シバザクラによく似た花
ツルコザクラの花は直径1cmくらいと小さく、5枚の花びらを持っています。花の色はピンクや白などで低い位置にびっしりと咲くのが特徴です。このようなツルコザクラの花は、見た目がシバザクラによく似ています。しかし、両者は葉の形や開花時期の違いで簡単に見分けられます。
ツルコザクラとシバザクラの見分け方
- 葉の形:ツルコザクラの葉は丸みがあるが、シバザクラの葉は芝のように細い
- 開花時期:ツルコザクラは4~7月、シバザクラは4~5月に開花する
ボタニ子
ツルコザクラには、ピンク色だけでなく白い花が咲く品種もあるんだね!
ボタ爺
白い花が咲く「スノーチップ」は珍しい種類じゃが、時期によってはネットショップなどで購入できるぞい。
特徴②石けんのように泡立つ葉
ツルコザクラの葉には白い毛が生えており、水に浸してもむと石けんのような泡が出ます。これは、ツルコザクラにサポニンという成分が含まれているからです。サポニンは水に混ぜると泡立つ性質を持っています。なお、ツルコザクラの別名「ロックソープワート」とは、岩礁地に生える石けんの草という意味です。
ボタニ子
ツルコザクラは、20~30種類もの品種があるサポナリアの中でも「シャボンソウ」と同じサボンソウ属に分類されているよ。
ボタ爺
シャボンソウは「石けん草」とも呼ばれる植物で、かつて石けんのかわりに使われていたんじゃ。
特徴➂強い耐寒性
ツルコザクラは耐寒性が強く、寒冷地でも冬越しできます。霜対策も必要ありません。環境差はありますが、-15℃くらいまでは耐えられる丈夫な植物です。冬の間雪に埋もれていても、春になったらまた花を楽しめます。その反面、暑さにはやや弱いため、夏の時期は注意しましょう。
ツルコザクラの栽培カレンダー
季節ごとにすること
苗が出回る春には植え付けを
3~5月には植え付けをしましょう。春は苗が手に入りやすく、元気な株を選ぶのにも適した時期です。この時期には園芸店やホームセンターなどで苗が販売されます。また、ツルコザクラは休眠期の冬には上部が枯れてなくなりますが、暖かくなると新芽が出てきてつぼみを付けます。このため、春に元気な株を見きわめて購入するのがおすすめです。
夏越しでは蒸れ対策が肝心
梅雨や長雨の時期にはしっかりと蒸れ対策をおこないましょう。蒸れ対策では、用土の水はけや栽培場所(風通しのよさ)、花がら摘みなどが重要です。鉢植えの場合には、必要に応じて雨があたらない場所に避難させてください。また、咲き終わった花を残しておくと蒸れやすくなります。種をとらないときは花がら摘みをこまめにおこないましょう。
秋には植え替えや株分けを
花が終わった後の10~11月には植え替えをしたり、株分けで増やしたりしましょう。なお、ツルコザクラは毎年植え替えをする必要はなく、根詰まりなどが気にならなければそのままでも大丈夫です。植え替えや株分けをするときには肥料も与えてください。また、植え付けや種まきは春だけでなく秋にも可能です。
ボタニ子
耐寒性の強いツルコザクラの栽培では、冬越しの準備はいらないよ。
ツルコザクラの育て方【準備~植え付け】
栽培環境
ツルコザクラは過湿を嫌うため、風通しがよく乾燥した場所に植えてください。日当たりのよい環境を好みますが暑さにはやや弱く、夏の西日が当たる場所などは避けたほうが安心です。もともと石の多い場所に自生している植物で、ロックガーデンで岩の間にも植え付けられますよ。
用土
ツルコザクラは土質を選ばず、やせ地でもよく育ちます。ただし、夏の高温多湿には弱いため排水性のよい用土を使ってください。市販の山野草用の土など、鹿沼土や山砂を多く含む土が栽培に適しています。また、ややアルカリ性の土壌を好むため、苦土石灰などを少量施しておきましょう。
植え付け
植え付けは春か秋におこなってください。苗は、種やさし芽などから育てるか、流通量の多い春に購入しましょう。ツルコザクラは花壇でもプランターでも栽培でき、寄せ植えにも使えます。植え付け後はゆっくりと効果が長続きする緩効性肥料を施してください。置き肥を使うのもおすすめです。
ツルコザクラの育て方【日常管理】
水やり
乾燥した環境を好むツルコザクラは、水やりの手間がほとんどかかりません。地植えの場合は基本的に水やり不要で、自然に降る雨だけで育てられます。鉢植えの場合は用土が乾いてからたっぷりと水を与えてください。暑い時期には根腐れしやすくなるため、多湿にならないよう注意しましょう。
肥料
ツルコザクラはやせ地でもよく育つため、追肥はほとんど必要ありません。鉢植えの場合のみ、早春と秋に緩効性肥料を追加で与えてください。追肥すると、花つきがよくなる効果があります。地植えの場合は元肥を与えれば追肥は不要です。
病害虫
夏は根腐れや白絹病にかかりやすいです。白絹病は、株もとや土の表面に白い絹糸のようなものが現れ、茎や株が腐ったり葉が黄色くなって枯れたりする病気で、一度発生したら治療できません。そのため、水はけをよくするなどの対策をしておきましょう。害虫はアブラムシやマメコガネなどに要注意です。見つけたら、繁殖する前に殺虫しましょう。
植え替え
植え替え時期は春か秋です。植え替えたら肥料を施してください。地植えでは広がりすぎた地下茎が気になるときに抜き取りますが、何年か植えっぱなしにしても問題ありません。植え替えの手間を省くために根止めストッパーなどで地下茎の侵入を防止しておくのも一案です。鉢植えの場合は、根詰まりしそうなときに植え替えましょう。
ツルコザクラの育て方【さまざまな増やし方】
花数の増やし方
ツルコザクラの花数を増やすには、まず摘芯をしてわき芽の発生を促しましょう。摘芯では、すべての茎の先(2つの花の下で茎が枝分かれしているところ)を消毒した剪定ばさみで切ります。切った後は緩効性肥料を施してください。一度満開を迎えた後で花が少なくなったら切り戻して、再度わき芽の発生を促しましょう。切り戻すと花をより長く楽しめます。
ボタニ子
ツルコザクラはそのままでもよく分枝するけれど、摘芯・切り戻しという2つの剪定方法で花をもっと増やせるよ。
ボタ爺
切り戻しでは、株の形を整えながら伸びた茎や葉を大胆にばっさりと切るとよいぞい。
株の増やし方
ツルコザクラの株を増やすには、さし芽・種まき・株分けがおすすめです。さし芽では、親株から茎(5~7cmくらいが目安)を切り取り、下のほうの葉を取り除きます。茎を水につけて給水させた後、土にさして発根を促しましょう。種まきで増やす場合には、発芽まで乾燥させないよう注意します。大きくなった株は、掘り起こして2つに株分けしましょう。
ボタニ子
ツルコザクラの株はこぼれ種でも自然に増えるけれど、さし芽・種まき・株分けによって一気に増やせるよ。
ボタ爺
ツルコザクラの種はなかなか売られていないのじゃが、フリマサイトなどに出品されていることがあるぞい。
ボタニ子
開花後に種を採取しておくのもおすすめだよ。
ツルコザクラを満開に咲かせよう
ツルコザクラはよく分枝して増えやすくグランドカバーにおすすめです。また、ほかの植物を枯らしてしまうほどの繁殖力はないため、寄せ植えにも向きます。夏越しにさえ注意すれば、手入れの手間も少なく育てやすい植物ですよ。ぜひ花壇などに植えて、びっしりと満開に咲かせてみてくださいね。
出典:写真AC