西洋シャクナゲ(石楠花)とは
西洋シャクナゲ(石楠花)とは、名前が示すように、西洋で品種改良された石楠花の園芸品種の総称です。日本シャクナゲ(石楠花)と区別するために、学名でもあるロードデンドロンと呼ばれることがあります。常緑の低木で、花が豪華で色の種類も豊富にあることから、「花木の女王」と言われ、庭のシンボルツリーとしても人気が高い植物です。
高嶺の花の語源
手の届かない美人を意味する言葉「高嶺の花」の語源は、シャクナゲの原種と言われています。シャクナゲの原種は非常に美しい花姿をしていますが、高山植物であるため入手困難な植物でした。誰もが欲しがる美しい花だけど、容易に手に入れられないシャクナゲを、恋人にするどころか、近づくこともできない憧れの美人に重ねたのでしょう。
西洋シャクナゲの基本データ
学名 | Rhododendron cvc. |
科名 | ツツジ科 |
属名 | ツツジ属 |
別名 | ロードデンドロン、シャクナゲ(石楠花/石南花)、 |
原産地 | ヨーロッパでの品種改良種 |
開花時期 | 4月~6月 |
花色 | 赤、白、ピンク、オレンジ、黄、紫、茶 |
樹高 | 30cm~150cm |
西洋シャクナゲの特徴
西洋シャクナゲの特徴は、何といっても「花木の女王」と呼ばれるほど大きくて豪華な花です。西洋シャクナゲの歴史は19世紀、中国に自生していた石楠花の原種がヨーロッパに持ち込まれたことから始まります。その花の豪華さ、美しさに魅せられた当時のヨーロッパの人たちによって品種改良がおこなわれた結果、より豪華な花を持つ西洋シャクナゲが誕生しました。
明治時代に逆輸入
西洋シャクナゲは、明治時代に日本へ輸入されました。ですが石楠花は元々は、ヒマラヤや中国などアジアを原産とする常緑広葉樹で、西洋シャクナゲ自体、アジアからもたらされた原種を品種改良した植物です。日本にも、アズマシャクナゲ、ホソバシャクナゲ、ヤクシマシャクナゲなど、数種類の自生種が存在しています。よって西洋シャクナゲは、日本へ逆輸入された植物であるとも言えます。
西洋シャクナゲの開花時期
西洋シャクナゲの開花時期は4月から6月上旬ですが、環境や品種によって差があります。西洋シャクナゲを育てる際は、自分の住む地域の気候条件や、品種の開花時期について調べておいたほうがよいでしょう。
日本シャクナゲ(石楠花)との違い
シャクナゲ(石楠花)は大きく分けると、西洋シャクナゲと日本シャクナゲの2種類があります。西洋シャクナゲは前に触れたように、ヨーロッパで品種改良された園芸品種です。対して日本シャクナゲは日本の高山などで自生していた品種をいいます。この両種を見分ける方法は葉を見ることです。日本シャクナゲは葉裏が茶褐色で薄い毛が生えているという特徴があるのに対して、西洋シャクナゲの葉裏は緑色で、毛も生えていません。
ミニシャクナゲとは?
ミニシャクナゲとは、名前が示すようにシャクナゲの小型品種のことです。シャクナゲの中でもあまり大きくならない品種を交配させて、よりコンパクトに育つように改良しました。地植えはもちろん、鉢植えでも育てられます。人気の高まりに従って多くのミニシャクナゲが生まれており、人気の高い品種には、ヒカゲツツジを改良した「レン」、ミニシャクナゲの中でも珍しい紫色の花をつける「黒潮」などがあります。
西洋シャクナゲの品種
品種改良が進んでいる西洋シャクナゲは、園芸品種だけでも5000種類はあると言われている、とても品種が多い植物です。ここでは、ごく一部ですが、西洋シャクナゲの品種を紹介しましょう。
桜狩(サクラガリ)
桜狩は名前が示すように、桜のような優しいピンク色の花をたくさんつける園芸品種です。1つのつぼみから10輪以上の花を咲かせます。満開時は本物の桜に負けない華麗な美しさを見せてくれるでしょう。学名は「Rhododendron'Sakuragari'」といい、学名にも品種名の桜狩がついてきます。なお、桜狩の花色の濃さは、日照条件や咲き進み具合によって変化することがあるので注意しましょう。
マダム・マッソン
マダム・マッソンは、黄色いブロッチ(斑点)が入るのが特徴の白花品種です。強健で花つきがよく、日本でも古くから栽培されてきました。「清涼殿」という別名もあります。その美しさと育てやすさから人気も高く、西洋シャクナゲの白花の最上位品種と呼ばれるほど評価が高い品種です。
ちなみに清涼殿とは、平安京の内裏(だいり:宮城内にある天皇陛下の私的区域)のうち、天皇陛下の日常の居所として使用されていた御殿のことです。現在の京都御所には、安政2年(1855年)に再建された物が伝わっています。
つまりマダム・マッソンの気品ある美しさは、高貴な御方のお住まいとされた御殿の名前を付けられるほどの評価を得ていた、ということだね。さすが白花の最上位品種と呼ばれるだけのことはある!
プレジデント・ルーズベルト
プレジデント・ルーズベルトは西洋シャクナゲの代表的品種の1つです。ストロベリーレッドと白の花色が特徴的な大輪の花を咲かせます。もうひとつの大きな特徴として、黄色い斑模様が入る葉を持っています。この斑入りの葉と、遠目からだと濃いピンク色にも見える花色との組み合わせが、個性的で美しいです。
モーニング・マジック
モーニング・マジックは、ヤクシマシャクナゲとの交配で誕生した園芸品種です。名前の由来は、つぼみの時は薄いピンク色なのが、咲き進むと白に変化するという不思議な花色からきています。樹高は80cmから100cmと、あまり大きくなりませんが横に広がる樹形なので、満開時にはボリュームたっぷりの美しい花姿を楽しめます。樹高が低いので、鉢植えにもおすすめです。
出典:写真AC