全国の田植え時期
田植えの時期は、全国で統一しているわけではありません。栽培地域によって、大きく違ってきます。
標準的な田植え時期は、地域ごとに違いがあるのが面白いですよ。紹介する田植時期は、都道府県の水稲栽培面積の過半において田植えが完了した日です。
①北日本の田植え時期
北日本の田植時期は5月20日前後です。北日本は気温が低く、登熟時期が秋と重なると冷害の原因になります。品質が低下するため、早めに田植えをします。田植え時期はほとんど同じですが、主要品種は各県が気候にあわせて改良したものを使用しているためばらばらです。
水稲の田植期日
H29 | H30 | R1 | |
北海道 | 5月24日 | 5月23日 | 5月23日 |
青森 | 5月20日 | 5月21日 | 5月20日 |
岩手 | 5月17日 | 5月17日 | 5月17日 |
宮城 | 5月11日 | 5月11日 | 5月11日 |
秋田 | 5月22日 | 5月23日 | 5月22日 |
山形 | 5月18日 | 5月19日 | 5月18日 |
福島 | 5月17日 | 5月17日 | 5月16日 |
②関東地方の田植え時期
関東地方の水稲の作付は最も早い千葉県にはじまり、その後一週間ごとに各県で田植えがおこなわれ、群馬県で終わります。千葉県は江戸時代からおいしい米どころとされ、気温が低い時期に登熟するように早い時期に田植えをします。一方で、群馬県は田んぼで麦を育てる人が多く、その収穫が終わった後に田植えをするため、北関東のなかでも遅いのです。
水稲の田植期日
H29 | H30 | R1 | |
茨城 | 5月5日 | 5月5日 | 5月6日 |
栃木 | 5月6日 | 5月6日 | 5月8日 |
群馬 | 6月14日 | 6月13日 | 6月14日 |
埼玉 | 5月22日 | 5月21日 | 5月23日 |
千葉 | 4月29日 | 4月27日 | 4月29日 |
東京 | 6月11日 | 6月10日 | 6月9日 |
神奈川 | 6月2日 | 6月2日 | 6月1日 |
③中部地方の田植え時期
北陸地方は新潟県産コシヒカリなどおいしいお米で知られている地域のため、涼しい時期に登熟がすすむよう早い時期から田植えにとりかかります。東海地方は、台風によるリスク回避目的で早晩性の異なる品種をバランスよく栽培しており、田植え時期は北陸地方に比べて遅いです。
水稲の田植期日
H29 | H30 | R1 | |
新潟 | 5月10日 | 5月10日 | 5月10日 |
富山 | 5月12日 | 5月12日 | 5月11日 |
石川 | 5月5日 | 5月4日 | 5月5日 |
福井 | 5月14日 | 5月15日 | 5月16日 |
山梨 | 5月28日 | 5月28日 | 5月29日 |
長野 | 5月22日 | 5月22日 | 5月22日 |
岐阜 | 5月28日 | 5月28日 | 5月28日 |
静岡 | 5月19日 | 5月19日 | 5月21日 |
愛知 | 5月23日 | 5月23日 | 5月24日 |
④近畿地方の田植え時期
近畿地方の田植え時期は、5月初旬と6月初旬に二分されます。ほとんどの県で、コシヒカリの作付面積は一位を占めていますが、その比率は東日本に比べ低いです。特に、兵庫や大阪、和歌山の一部地域にて中生品種であるヒノヒカリの比率が高く、田植え時期が下がる要因となっています。
水稲の田植期日
H29 | H30 | R1 | |
三重 | 5月1日 | 4月30日 | 5月1日 |
滋賀 | 5月9日 | 5月8日 | 5月10日 |
京都 | 5月21日 | 5月22日 | 5月24日 |
大阪 | 6月8日 | 6月8日 | 6月8日 |
兵庫 | 6月3日 | 6月3日 | 6月3日 |
奈良 | 6月8日 | 6月8日 | 6月8日 |
和歌山 | 6月4日 | 6月3日 | 6月3日 |
⑤中国四国地方の田植え時期
中国四国地方の田植え時期は、5月中旬~6月上旬と幅広いです。これは暖かい低標高地ではヒノヒカリなどの中生品種、冷涼な中高標高地ではコシヒカリなどの早生品種を作付けする傾向があるからです。広島、島根は標高の高い地域に水田が多いため、県としての田植え時期は早くなっています。
水稲の田植期日
H29 | H30 | R1 | |
鳥取 | 5月24日 | 5月26日 | 5月24日 |
島根 | 5月15日 | 5月16日 | 5月16日 |
岡山 | 6月7日 | 6月7日 | 6月8日 |
広島 | 5月18日 | 5月18日 | 5月18日 |
山口 | 6月2日 | 6月1日 | 6月1日 |
徳島(早期) | 4月16日 | 4月16日 | 4月15日 |
徳島(普通) | 5月23日 | 5月23日 | 5月22日 |
香川 | 6月15日 | 6月15日 | 6月14日 |
愛媛 | 6月1日 | 6月1日 | 6月3日 |
高知(早期) | 4月13日 | 4月11日 | 4月11日 |
高知(普通) | 5月27日 | 5月27日 | 5月26日 |
⑥九州沖縄地方の田植え時期
九州地方の田植え時期は、主要品種がヒノヒカリのため6月以降です。平坦部では気温が高い時期に分げつさせ収量をかせぐ栽培方法が主流となっており、山間部ではコシヒカリなどの早生品種を使った早期栽培がおこなわれています。沖縄の栽培方法は、温暖な気候を活かして1年で2回田植えをする二期栽培です。日本一早い田植えをする県です。
水稲の田植期日
H29 | H30 | R1 | |
福岡 | 6月17日 | 6月16日 | 6月17日 |
佐賀 | 6月19日 | 6月19日 | 6月20日 |
長崎 | 6月16日 | 6月13日 | 6月15日 |
熊本 | 6月14日 | 6月14日 | 6月15日 |
大分 | 6月13日 | 6月13日 | 6月13日 |
宮崎(早期) | 3月26日 | 3月25日 | 3月25日 |
宮崎(普通) | 6月15日 | 6月15日 | 6月15日 |
鹿児島(早期) | 4月4日 | 4月3日 | 4月4日 |
鹿児島(普通) | 6月22日 | 6月20日 | 6月20日 |
沖縄(第一期) | 3月12日 | 3月8日 | 3月3日 |
沖縄(第二期) | 8月18日 | 8月13日 | 8月17日 |
栽培方法ごとの田植時期
田植えは苗の活着時期が重要
田植えは栽培方法によって時期が異なりますが、適切な時期は苗の活着期になります。活着とは、苗を環境コントロールができている育苗箱から自然条件の水田に移し替えても、適応して生育をおこなうことです。活着には水温が重要であり、低い気温では新たな根が出ず、苗が水に浮いてしまいます。そのため根が伸長できる水温になる時期が、田植えの始点です。
栽培方法①普通期栽培
稲は栽培方法によって作業時期が異なっており、「普通期」「早期」「早植」「晩植」「晩期」の5つに分けられます。「普通期」は地域の主流となっている時期に田植えをする栽培方法です。この普通期栽培は、田植えや出穂後の登熟においても、稲の生育に問題のない時期に設定されています。
栽培方法②早期栽培
早期栽培は関東以西の地域でおこなわれている早生栽培です。早期栽培では台風の被害が高まる9月より前のお盆時期に収穫できます。夜温が低くならない暖地の海岸部では早生品種を使うことで田植え時期を早め、4月に田植えができます。
栽培方法③早植栽培
早植栽培は普通期栽培よりも田植え時期を早めることで、登熟期を高温期に重ね収量を増やします。早植栽培は普通期栽培と同じ地域の主流品種を用い、田植え時期は20日程度早いです。肥培管理や水管理をしっかりおこなう必要がありますが、収穫時期の分散が図れます。
栽培方法④晩植栽培
晩植栽培は、登熟期の高温障害を避けるために普通期栽培よりも14日程度遅くする栽培方法です。晩植栽培は、普通期栽培と同じ品種では平年より気温が高いと品質が下がるリスクがあります。しかし、収量は同じくらい期待できます。
栽培方法⑤晩期栽培
晩期栽培は7月~8月上旬に晩生品種を田植えする栽培方法です。分げつ期間が短くなるため、移植する苗の本数を多くする必要があります。
まとめ
田植えの仕方は非常に地域性が出ており、品種や田植え時期ひとつとっても画一的なやり方になっていません。しかし地域一体でみると、その土地の土壌条件や気候にあわせた栽培の仕方のため、みんな同じ時期に揃って田植えをします。地域の栽培方法を詳しく知りたいときは先輩農業者や農協を頼るのもよい方法です。
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出典:photoAC