シコクビエとは
シコクビエは縄文時代の地層からも栽培あとが発見されるほど、昔から日本全国で食べられていた穀物です。一反(約300坪)あたり約4石(560kg~600kg)とれることから「四石稗(しこくびえ)」と呼ばれたという説と、主に四国で栽培されていたためという説があります。米食に変わった現在では生産者も販売も少ないので、幻の穀物と呼ばれています。
ボタニ子
基本情報
学名 | eleusine coracana |
科属 | イネ科オヒシバ属 |
形態 | 一年生草本作物 |
原産国 | インド、アフリカ |
開花時期 | 8月~9月 |
草丈 | 30cm~80cm |
英名 | finger millet |
別名 | カモアシヒエ、コウボウビエ、コウボウキビ |
ボタニ子
種子がなった姿が人間の手の指の形に似ているから、英名が「finger(指) miller(雑穀)」なのよ。
シコクビエの特徴
特徴①栄養が豊富
シコクビエには亜鉛やパントテン酸、カルシウム、ビタミンB群、銅などの栄養素が豊富に含まれています。とくに、骨の生成にかかせないカルシウムはヒエ、アワ、キビの約10倍もあります。亜鉛は皮膚や筋肉、内臓を作るアミノ酸の一種で体内では作れません。パントテン酸は皮膚の健康を維持するのに役立ち、銅は赤血球を作るのを助けます。
ボタニ子
ベトナムの高地やネパールなど紫外線が厳しい地域でよく食べられているのは、皮膚を守る栄養が含まれているからなのね。
特徴②消化がよい
シコクビエはアミラーゼ(別名ジアスターゼ)の活性が高い穀物です。アミラーゼはでんぷんを吸収しやすい形に分解する酵素です。シコクビエの場合はこの活性が高いため、でんぷんをすばやく分解して消化吸収をしやすくします。とくにシコクビエの種子をひいてシコクビエ粉にして食べると、消化がとてもよくなります。
特徴③穀物で唯一のアルカリ性
シコクビエは穀物ではめずらしくアルカリ性です。アルカリ性の食べ物は免疫力を強くするといわれています。人間の体内は弱アルカリ性に保たれていますが、酸性の食物ばかり食べると酸性に傾きます。酸性の食べ物が悪いのではなく、アルカリ性食品とのバランスが大切です。米やパン(麦)は酸性の穀物なのでシコクビエが手に入ったら雑穀米にするとバランスがよくなるでしょう。
特徴④アレルギーがおこりにくい
シコクビエは三大アレルゲンといわれる小麦を含まないので、アレルギーがおこらない穀物として注目されています。シコクビエ粉を米粉や米粉パンとあわせて焼き物や揚げ物を作れば、小麦粉アレルギーの方の強い味方になるでしょう。シコクビエは消化がよいのでケニアでは朝食におかゆとしてだしたり、子供の離乳食として扱われたりしています。
特徴⑤食べ方によって食感が異なる
シコクビエはそのまま茹でる、カラがついたまま粗くひく、カラを全部とって細かくひくという食べ方があります。そのまま茹でたものはぷちぷちとした食感です。粗くひいたシコクビエ粉でクッキーを焼くと、ガリガリとした食べ応えのあるものになります。細かくひいたシコクビエ粉は水で溶いて片栗粉の代わりにとろみづけに使ったり、パンを焼いたりするとふんわりした食感になります。
シコクビエの栽培方法
種子の購入方法
シコクビエの種子はアマゾンや楽天といったECサイトでは販売していません。長野県や岐阜県、徳島県の道の駅で、販売している場所があります。また、農業体験という形で刈り取りや脱穀をさせてくれる場所が埼玉県比企郡小川町にあるので、その際に種子を分けてもらうことができるでしょう。運よく種子が手に入ったら増やすことは意外に簡単です。
ボタニ子
いきなり行ってわけてくださいっていうのは失礼だから、1回電話で連絡をして確認するといいわね。食用のシコクビエ粉は販売されているわ。
ボタ爺
牧草用として種子を販売しているサイトがあるが、その種子自体は食用ではないので食べてはだめだよ。
シコクビエの育て方
育て方①種まき・肥料・水やり
シコクビエの種まきは土地を耕して1cmほどの穴をあけ、5粒~6粒ずつ入れます。間隔は20cmあけましょう。土をかぶせ手で強く押すか足でふんでかためます。シコクビエは厳しい環境ややせた土地でも十分に育つ強健な植物です。そのため肥料は必要ありません。耐乾性が強い植物なので水田の作りづらい山間部で栽培されていました。水やりは種まき以降は降雨でしのげます。
ボタニ子
採取した種子は2年以上たつと発芽率が下がるので、育て続ける場合は少しでもよいので毎年まいてね。
育て方②間引き・土寄せ・収穫
シコクビエが10cmほどに育ったら3本くらいに間引きします。株や枝がよくわかれ不安定なので草丈が30cmくらいになったら土寄せしてください。夏に緑の花穂をつけて、熟すと赤味がかった黄色になります。わかれた枝先にそれぞれ実をつけるため、米のようにいっせいに刈りとるのは難しく、できた順に収穫します。
ボタニ子
厳しい環境をものとせずに育つし、病害虫の心配もほとんどないわ。成長はゆっくりだけど昔は大切な農作物だったのね。
シコクビエの食べ方
レシピ①シコクビエのパン
材料(2人分)
- シコクビエ粉:250g
- きび糖(さとうきびの茶色い砂糖):35g
- 塩:5g
- オリーブオイル:15g
- 水:200㏄
- ドライイースト:小さじ1/2
作り方
粉を手でこねたり、1次発酵や2次発酵させたりなど手作りするのは非常に手間がかかるので、ホームベーカリーを使うことをおすすめします。材料は目安なので、機種によって調整してください。乳製品にアレルギーのある方でもオリーブオイルや水で作れば安心です。乳製品が大丈夫な方はオリーブオイルをバターに、水を50㏄ほど生クリームにするとまろやかになります。
レシピ②シコクビエのチャパティ
材料(2人分)
- シコクビエ粉:200g
- ヨーグルト:大さじ1
- オリーブオイル:小さじ1
- 塩:適量
- 水:50㏄
- 打ち粉:適量
- サラダオイル:適量(フッ素樹脂加工のフライパンなら不要)
作り方
- 材料をボールに入れてよくかきまぜる
- かためでもよくこねてまるめてラップをする
- 常温で30分寝かせる(寒い時期は1時間)
- 4等分に切る
- 厚さが2mm~3mmになるまで綿棒で伸ばす
- フライパンで軽く焦げ目がついてぷくっとふくれるまで焼く
レシピ③シコクビエのガレット
材料(2人分)
- シコクビエ粉:50g
- 卵:3個
- 塩:適量
- 牛乳:100㏄
- とろけるチーズ:適量
- ハムまたは薄切りベーコン:50g
- オリーブオイル:適量(フッ素樹脂加工のフライパンなら不要)
作り方
- シコクビエ粉、卵1個、塩をボウルに入れる
- ダマにならないようにかきまぜながら牛乳を入れる
- フライパンにお玉1杯分くらい流しこむ
- 表面の泡が割れてくるまで焼く
- ハム、チーズ、卵を入れてふたをする
- 卵の白身に火が通ったら端を内側に折る
ボタニ子
このほかにも、すいとんや団子、とろみづけにしたりクッキーを焼いたりと万能に使える穀物粉よ。アイデアしだいでレシピが広がるわ。
シコクビエを上手に活用しよう
日本では幻の穀物といわれるシコクビエは海外では日常的に食べられています。栄養価が高く消化もよく、アレルギーにもならないシコクビエは、シコクビエ粉としては購入可能です。海外から輸入しているサイトもあります。作る料理によって食感も違う楽しい穀物なので、手に入ったらぜひいろいろな料理に挑戦しましょう。
シコクビエを主食としているスリランカでは「クラッカン」、インドでは「ラギ」と呼ばれているわ。ほかにも国によって呼び方が変わるのよ。