クログワイとは
クログワイは、多年生の雑草です。冬は地上部が枯れますが、地中で塊茎(かいけい)と呼ばれる芋のようなものが休眠しています。田んぼや湿地などの地中20cm~30cmの深さに地下茎をのばし、10cmごとくらいに花茎を真上にのばすので、1本のクログワイでも一面に生えているように見えるでしょう。駆除が難しい塊茎で増殖するタイプの難防除雑草です。
クログワイの基本情報
学名 | eleocharis kuroguwai |
科属 | カヤツリグサ科ハリイ属 |
生息地 | 北海道以南、朝鮮半島南部 |
草丈 | 80cm~100cm |
成長期 | 6月~11月 |
形態 | 多年草 |
別名 | エグ |
クログワイの生育環境
クログワイは北海道以西の本州~九州の湿地で育生可能です。水田や池、湿地や休耕田などとろとろとした地中で増殖します。クログワイは塊茎から発芽するのに酸素を必要としないので、湿度のある土の中であれば表面から深さ30cmまでが育生環境です。とくに、水分の枯れない湿田やため池、流れがほぼない用水路などでは大きく育ちます。
歴史と由来
クログワイは別名をエグといい万葉集にものっていることから、奈良~平安時代にはすでに存在していたようです。江戸時代にはわざわざ栽培もされています。使い方は食用で生食もでき、茹でたり煎ったりしていたそうです。クログワイは現在、水田の厄介者ですが、昔は重要な食糧として育てられていました。水田に生えてくるクログワイはその頃の名残ともいえます。
ボタニ子
クログワイの特徴
クログワイの特徴は非常に強い繁殖力です。1度水田や田んぼなどで増やしてしまうと駆除が難しく、放置すると5年~6年で田んぼ全体がクログワイにおおわれてしまいます。クログワイの塊茎の特徴は寿命が5年~7年と長いことです。発芽するのに酸素を必要とせず、地中深くで増えるのも特徴でしょう。万葉集にもでてくるほど昔から日本に生息している植物です。
花
クログワイの花は雑草のなかでも1、2を争うほど地味です。地中から出てくる花茎の先に咲きます。花茎と同じ太さでとくにくびれもなく、茶褐色の目立たない小さい穂が続いているので、つぼみのうちは一見花があるのかどうかもわかりません。咲き始めると白いひも状の付属物がでてくるので、小さい花の集合体だとわかりますが、観賞用にはあまり向きません。
根
クログワイの根はやわらかい地下茎で、深さ20cm~30cmのところを横へと細く長く伸びます。横に伸びては花茎を垂直に伸ばし花を咲かせますが、地下茎の先端につく塊茎で増殖します。クログワイを1株抜いてもやわらかい根が切れて、残った部分の塊茎からさらに増えるでしょう。成長期は6月~11月で地表部は冬には枯れますが、塊茎は地中で休眠しています。
茎(葉)
クログワイの茎は濃い緑色で光沢があります。地下茎から生えたての茎は細いですが直径約3cmまで育ちます。中は空洞でタケノコのような膜があり、乾燥すると節があるように見えるのが特徴です。クログワイの茎を外から押すと膜と膜の間の空気で茎がはじけて、ぱちんという音がします。茎の下方にイグサよのうな赤褐色のサヤ状のものがありますが、葉のなごりです。
塊茎
クログワイの名前の由来になった塊茎は地下茎の一部で、養分を吸って大きくなったでんぷん質の塊です。クログワイの塊茎の色は黒~黒褐色で、小さなクワイのような形をしています。塊茎の大きさは6mm~10mmまで育ち、外は黒いですが中は白いです。寿命は5年~7年です。塊茎から発芽した茎は成長しながらわかれ、地上へは数本まとまってでてきます。
クログワイの駆除方法
クログワイの駆除方法は薬品を使用するかしないかの2種類です。無農薬で不耕起栽培をしている田んぼでは除草剤が使えません。また、普通の田んぼでも除草剤の使い方にコツがあり、どちらの駆除方法も短期では結果が出ず、長期戦となります。無農薬で不耕起栽培の水田と、普通の水田でのクログワイの駆除方法をご紹介しましょう。
- 不耕起栽培とは、田んぼや畑などを耕さずに作物を植え付けて育てる栽培方法です。
除草剤なし
不耕起栽培
無農薬で不耕起栽培をしている水田でのクログワイの駆除は非常に厳しいです。不耕起栽培をやめないとクログワイの完全駆除は無理かもしれません。クログワイの増殖は地中でなされるためその元を断たない限りは増えていきます。不耕起栽培や半不耕起栽培は全く土を掘り返さない、あるいは地表のみを耕すので、クログワイの塊茎までたどりつけません。
無農薬
無農薬栽培でのクログワイの駆除は秋にします。稲刈りのあとに重機を入れて30cm以上掘り返しましょう。水分が多いためタイヤがはまるので注意が必要です。クログワイの地下茎を地中から掘り返して空気にさらします。常に湿っていたい植物ですので塊茎を乾かしましょう。そのまま冬も地表で寒風にさらし、凍死させます。
ボタニ子
1回やったから大丈夫ってわけにはいかないの。とりこぼしがあったらまた増えちゃうから、生えなくなるまで続けるのよ。がんばって!
除草剤あり
クログワイの駆除は除草剤の使い方にコツがあります。稲刈りをしたあと9月中旬~10月にかけてクログワイが再生したところをねらいます。稲刈り後、再生したクログワイの茎が緑色のうちに直接たらします。地表に撒くタイプの除草剤では地中にあるクログワイの塊茎に届きません。葉で除草剤を吸収し、根まで届いて枯らすタイプの除草剤を使いましょう。
ボタニ子
せっかく除草剤をまいても使い方を間違えると効かないわ。そして、これも1回じゃ終わらないの。生えなくなるまで何年かがんばってね。
まとめ
クログワイの特徴や駆除方法をご紹介しました。とても丈夫でよく育ち、飢饉のときに助けてくれたクログワイですが、飽食の時代では難防除な雑草として厄介者になってしまいました。放置するとあっという間に水田を占拠し、稲を巻き込んで倒したりするのでやはり駆除するのが1番よいでしょう。クログワイに似た植物もあるので、茎の形状で見分けるとよいですね。
甘く煮てお菓子として食べていたそうよ。炒めたり煮物にしたりしてもよし。生は三杯酢にあわせてもおいしくて、今でももちろん食べられるわ。