オヒシバとは?
基本情報
学名 | Eleusine indica GEARTN |
英名 | Goose grass、Wire grass,Yard grass |
別名 | チカラグサ(力草)、ホトクイ、コッテグサ |
分類 | イネ科オヒシバ属 |
形態 | 一年生 |
オヒシバは本州より南に生息し、8月~10月にかけて開花する夏の雑草です。少ない栄養で成長でき、農地だけでなく道路わきや公園などいたるところで見られるため、夏の一年生イネ科雑草の代表種に数えられています。草丈が30~80cmと中程度の高さであり、穂の形が特徴的なため草むらで目立ちます。
名前の由来
オヒシバ(雄日芝)は夏日によく育ち、踏まれても絶えないことが名前の由来です。また、メヒシバ属(雌日芝)の植物に比べて穂が太くてたくましいため、との説もあります。別名のチカラグサ(力草)は根、茎とも手で引き抜こうとしても、容易に切れないことから名づけられています。
オヒシバの特徴
特徴①茎
オヒシバ茎は平べったい扁平上の形をしており、葉が折り重なるように茎を包み込んでいる構造です。細く堅い茎がある雑草は高く背を伸ばすのに優れていますが、衝撃が加わると折れてしまいます。一方でオヒシバの茎は衝撃が加わっても折れたりちぎれたりはしません。これは、薄い新聞紙をたくさん重ねると簡単に破れない原理と同じです。
特徴②根
オヒシバの根はひげ根であり、無数の根で地面をしっかりと掴みます。ひげ根の植物は横に広がったり、地中深くに伸ばしたりなどさまざまですが、オヒシバは根を地中方向に伸ばします。地中に伸ばす根の量が茎葉部分に比べて大きいため、非常に抜き取りづらいです。根を地中深くに伸ばす目的は、乾いた土地でも水分を確保するためです。
ボタニ子
オヒシバ属は抜いたら穴ができるくらい深く根を伸ばすのに対して、メヒシバ属の根は横に伸びていくよ。どちらも、手で抜き取る除草方法だと完全駆除はなかなか大変だね。
特徴③穂
オヒシバは、1本の茎の先端に2~7本の小穂をつける軸を放射状に生やします。種子は成育が進むと一個体あたり数千個つくられ、風によってあらゆるところに飛び散ります。また、オヒシバの種子には、春の適正気温になるまで出芽を抑える休眠性があるため、着実に生息域を拡げることが可能です。
オヒシバの生態
生息場所
オヒシバは日当たりがよければどこでも生息できる高い生命力がある雑草です。畑や河川敷など比較的雑草が生えているエリアでだけではなく、アスファルトのあいだや子どもたちが遊びまわる公園、グラウンドなどでも見られます。ほかの植物が生息しにくい厳しい環境下でもオヒシバは生息可能です。
耐久性
オヒシバは環境に対する耐久性の高い植物です。オヒシバの茎や根の構造上、耐湿性・耐乾性・耐暑性・耐寒性が高いため、さまざまな場所で生息できます。これに加えて、オヒシバは人や車の踏圧にも強いため、人の往来の多い場所に生息できるたくましい雑草です。
オヒシバの防除方法
オヒシバによる被害
オヒシバは農作物に与える影響は小さいですが、どこにでも生えるため景観を損ねてしまいます。さらに次の特徴があるため、一度茂った状態にしてしまうと完全に駆除することが難しいです。
- 成長点が低く刈り取ってもすぐに再生する
- 種子の量が多いため、毎年どこからか生えてくる
- ひげ根がしっかりと土中をつかんでいるため、抜き取り作業が大変
防除対策①頻繁な草刈り
オヒシバは横には広がらず株化する雑草のため、種子さえ落とさせなければそれ以上広がることはありません。広い庭でなければ労力はかかりますが、定期的な刈り取り作業がおすすめです。オヒシバの穂が花をつける8~9月の時期に、重点的に刈り取り作業をすることで穂で種がつくられず、種子を地面に落とさせないことで翌年の発生を抑えます。
防除対策②農薬の使用
草刈り作業が大変な広い面積の場合は、農薬である非選択性除草剤を使用すると少ない負担で除草できます。除草剤はグリホサート系の成分が含まれた「ラウンドアップマックスロード」や「サンフーロン」がおすすめです。一度草刈りをしたあと、オヒシバが再生し始めた頃合いに100倍に希釈した除草剤を散布すると高い効果がでます。
ボタ爺
一部の除草剤は雨に当てると効果が弱まるので、使用前には天気を確認するんだぞ。
防除対策③日光を遮る
オヒシバにも弱点はあり、成長のために必要な日光を遮ることで成育を抑えられます。一度オヒシバを除草したあとに隙間なく花や作物を栽培すれば、植物の影によって日の光が十分得られず生えてこなくなります。植物を植える予定がなければ、防草シートを敷いても効果的です。
オヒシバは食べられる?
オヒシバは食べる用途には不向きな植物です。オヒシバは、その頑丈さから繊維も硬く、種子も小さいため食べられません。しかし、オヒシバには食べるために栽培されてきた仲間がいます。
オヒシバの栽培種
オヒシバの栽培種にシコクビエという仲間があります。シコクビエは、大型のオヒシバのような一年生草本で、丸い小さな実をたくさんつけます。その実は消化がよく銅や亜鉛などの豊富なミネラル分を含んでいて高い栄養価が特徴です。古来より穀物として栽培されており、粥や団子の原料や醸造してビールのように飲まれていました。
日本におけるシコクビエ
シコクビエは紀元前1300年頃にはインドで栽培が開始しており、日本には縄文時代に伝わったと考えられています。その後は四国~東海地方までの幅広い地域で栽培されていましたが、米麦大豆などの普及により、近年では山間部の地域でわずかに生産されており、幻の雑穀といわれています。
シコクビエの入手方法
シコクビエは近年の雑穀ブームにより注目が高まっているため、インターネットで入手が容易にできます。粉末状にしたシコクビエは、料理に使いやすくおすすめです。シコクビエを栽培するためには、地方の生産農家から在来品種の種をわけてもらう必要があります。日本の環境に適したシコクビエの改良品種が存在しないためです。大規模に育てる場合は、種を採取し少しずつ増殖させるか牧草用の種子を利用しましょう。
ボタ爺
世界的には、シコクビエはインド地方において、ロティというパンの材料として使われているぞ。
オヒシバの利用法
オヒシバは食用ではありませんが、ウシのような家畜のために利用されています。妊娠中のウシは栄養価が低くて繊維質たっぷりの牧草を好むため、繊維ばかりのオヒシバは大変優れた飼料です。畜産農家では、牧草を収穫し終えた草地に生えるオヒシバを利用しており、草刈りをしたあとに日光に当てて乾かし干草とします。
オヒシバの見分け方
オヒシバによく似た仲間
メヒシバはオヒシバによく似た穂をつける植物です。メヒシバはオヒシバ同様、夏によくみかける一年生雑草ですが、芝生でみかけると駆除が難しく厄介です。雑草として駆除する場合は、両種の違いを理解してそれぞれに適した駆除方法で除草しましょう。
オヒシバ属とメヒシバ属の違い
オヒシバ属 | メヒシバ属 | |
穂の数 | 2~7本 | 5~8本 |
穂の形 | 太い | 細い |
茎の形 | 平べったい | 丸みを帯びている |
株の形 | 放射状に大きくなる | 横に広がっていく |
オヒシバを探してみよう!
雑草は特徴や生態がわからないとどれも同じように見えるかもしれません。しかし、雑草がどんな名前なのかわかると、そこに生えてきた理由や退治する効果的な方法が判断できますよ。ぜひ、この記事を参考に近くに生えているオヒシバを探してみてはいかがでしょうか。
出典:筆者撮影