イヌビエ(犬稗)とは?
イヌビエ(犬稗)は一年草の植物で、成長速度が速く、草丈が高いイネ科の雑草として知られています。盛んに繁殖するため農作物の成長を阻害する恐れがあり、水田や農地では駆除が必要です。夏から秋の初めにかけて開花時期をむかえますが、花は小さくあまり目立ちません。
基本情報
名前 | イヌビエ |
和名 | 犬稗 |
学名 | Echinochloa crus-galli |
分類 | イネ科:ヒエ属 一年草 |
草丈 | 60cm~120cm |
開花時期 | 7月~9月 |
分布と自生場所
日本やアメリカ、オーストラリアなど世界中に分布します。日本では北海道や東北地方などの寒い地域から暖かい沖縄まで生息し、耐寒性・耐暑性ともに備える丈夫な植物です。畑や田んぼ、空き地などがおもな自生場所で、痩せた土地でも育ちます。
イヌビエの特徴
特徴①葉
イヌビエの葉は笹の葉を細長くしたような形で、長さは約20cm~50cm、幅は約10mm~20mmほどです。葉の付け根部分は「葉鞘(ようしょう)」と呼ばれるさや状で、葉の表面にたくさんの白い筋と、縁に細かいギザギザがあります。葉の色は基本緑色ですが縁が白や紫色になる株もあり、肥よくな環境下において縁の厚みが増します。
ボタニ子
子どものころあぜ道に生えているイヌビエの葉を採ろうとしたら、指を切ったことがあるのよね…。
ボタ爺
イヌビエの葉の縁にあるギザギザは鋭いんじゃ。くわえて、イヌビエの細胞を守る細胞壁(さいぼうへき)には、金属の一種「ケイ素」が含まれているんじゃよ。
ボタニ子
ギザギザに金属…まるでノコギリだわ。観察の際は気をつけてくださいね。
特徴②花序のつき方や花の形
花序のつき方
花をつける茎「花序(かじょ)」が、茎の先端から円錐を描くように数十本つきます。花序の長さは約10cm~20cmほどで、米や麦の穂に似ています。
花の形
一見すると実のように見える小さい粒が、イヌビエの花です。花は「小穂(しょうすい)」と呼ばれ、形は卵型、長さは約3mm~4mmほどです。色は紫褐色で毛が無数に生え、先端は尖ります。開花時期にタイミングが合えば、小穂の先からでている雌しべや雄しべが観察できます。
イヌビエの由来
和名の由来
ヒエに似ていても食用にならず、利用価値がないことが「犬稗(イヌビエ)」の由来です。「犬」には「劣るもの」や「似て非なるもの」などの意味があり、しばしば役にたたないとされる草や樹木などに「犬」の文字がつきます。
縄文人が食べるために栽培していた?
イヌビエは「ヒエに似て劣るもの」と認識されていますが、縄文中期には食べるために栽培されていたといわれています。
青森県三内丸山遺跡では前期の円筒土器から多量のイヌビエのプラントオパールが検出されたことで、クリなどの木の実と共にイヌビエの栽培が三内丸山遺跡の縄文人の人口を支えていた可能性があることが指摘されている。
ボタニ子
縄文人がイヌビエを栽培して食べていたかもしれないなんて、ロマンのある話ね。
ボタ爺
とは言え、現代では農地に被害を及ぼす厄介な雑草でもあるんじゃよ。つぎのページでは駆除方法を解説していくぞい。
出典:写真AC