クサネム(草合歓)とは?
クサネムという名前の植物をご存じですか?クサネムは、水田周辺を好んで発生する植物で、雑草として分類されています。雑草とは、人間が種をまいて育てる植物ではなく、勝手にはえてくる植物を指します。最初に、水田雑草としてのクサネムの特徴をご紹介します。
クサネムの名前と由来
クサネムは、漢字では「草合歓」となります。和名のクサネムは、葉がネムノキの葉に似ていることに由来します。英名は、”indian jointvetch(インディアン ジョイントベッチ)”、学名は、 ”Aeschynomene indica(アスクノミネ インディカ)”です。インドのクサネム属という意味になります。
クサネムの分布
クサネムは、アジア、アフリカ、オーストラリアなどに広く分布しています。日本では北海道から九州にかけて、全国に広く分布しています。特に、河川敷や水田、湿潤な畑地などに多く生えているのが特徴です。近年では、水田周辺に増加傾向であることが大きな問題となっています。
クサネムの植物としての特徴
クサネム(草合歓):マメ科クサネム属
— jintan (@jintan1988) September 8, 2018
葉がネムノキに似ているのが名前の由来
早くも種子が出来はじめていました
キタキチョウの幼虫の食草の一つ
2018.08.28#クサネム#渡良瀬遊水地#栃木市 pic.twitter.com/GJeaAQapAR
クサネムの葉は、鳥の羽のような羽状複葉で、小葉は葉柄から続く葉軸の左右に羽のように並びます。葉の裏は粉白色で、夜には葉を閉じる睡眠運動をします。茎は中空(内部が空洞になっている)で、草丈は50~120cmほどになります。春になると発生し、7月から10月にかけて花を咲かせます。秋には黒褐色のさや状の果実をつけます。
クサネムの花の特徴
クサネムは、7月から10月にかけて蝶のような形の薄黄色の可愛らしい花を咲かせます。クサネムの葉はネムノキに似ていますが、花は、ネムノキに比べると派手さはありません。クサネムの花の特徴は、マメ科の植物にみられる蝶形花冠といい、左右相称の蝶に似た花弁をもちます。
1年草としてのクサネム
クサネムは、マメ科クサネム属、種子によって繁殖する1年生雑草です。1年草とは、春に種から発芽して、花が咲き、種をつけてその年に枯れてしまいます。次の年にはえてくることはありませんので、除去してしまえばいいと思いがちですが、クサネムは毎年農家さんを悩ませる雑草なのです。
クサネムとキタキチョウ
クサネムは、キタキチョウの幼虫のエサとなる食草のひとつです。キタキチョウはクサネムに好んで産卵します。孵化の時期となる早春から3月頃には、成虫がクサネムの周辺を飛ぶ姿を見かけることもあります。キタキチョウは、モンシロチョウより小ぶりな黄色の翅に黒色帯がある蝶です。
水田雑草としてのクサネム
クサネム(和名:草合歓)はなぜ雑草として扱われるのでしょうか?クサネムは、「勝手にはえている」植物であり、土を掘り返したり、耕したりという人為的な操作が加えられた場所に生育することが多いことから、水田雑草として分類されているのです。
クサネムが田んぼの周辺に多い理由
クサネムが田んぼの周辺に多くみられる理由は、その成長過程にあります。クサネムの幼植物体(発芽・発根したばかりの植物の幼い状態)は、水面を浮遊し、田のほとりにたどり着くと着床して成長します。さやからこぼれ落ちた種が水面に浮上して発芽し、根が伸びて定着することもあります。
クサネムの発芽条件
クサネムの発芽には、適度に湿った土が適しています。種がすっぽり水中に沈み込んでいる潜水状態では、発芽しませんが、湿潤な土壌を好むので、田面に露出した湿った土地に発生することが多くなります。湿潤な条件下では、土中8cmにあっても発芽するとの報告もあります。
クサネムの芽の拡散方法
完全に水中に潜っている状態では発芽しないけれど、湿り気がたっぷりな土中ではしっかり発芽するのです。田んぼでは、水の中で発芽し、開いた子葉の浮力で水面を浮遊します。これが土が露出している部分や畔の際に漂着すると根を下ろして定着するのです。
クサネムの種の特徴
クサネムの種子は硬実種子(こうじつしゅし)を含むため、発芽の時期が一斉ではなく、時間差があります。これが駆除が困難であることの大きな原因となっています。土中での寿命が長いこともクサネムの一斉除去が難しい理由のひとつなのです。
硬実種子とは
硬実種子とは、種子の皮に透水性が無く、水分を吸収することができずに休眠状態にあるタネのことです。種に水が浸透しないと発芽しないのですが、まったく吸水しないわけではなく、ゆっくりと種に水が浸透していくので、発芽までに時間がかかり、発芽時期にばらつきがでます。
こんな時期にも発生するクサネム
クサネムは湿った土地を好むのですが、中干し後にも発生することもあるので注意が必要です。中干とは、夏の暑い盛りに田んぼの水を抜きヒビが入るまで乾かすことです。土をカラカラに乾燥させる中干し期間中やその後にも発生しやすいので、駆除が難しい雑草です。
出典:写真AC