ヨウシュヤマゴボウとは?
ヨウシュヤマゴボウ(別名アメリカヤマゴボウ・セイヨウヤマゴボウ)は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属に属する植物です。梅雨頃から白い可憐な花を咲かせ、秋になるとぶどうのような実をつけるのが最大の特徴です。また、房をつけるところもぶどうに似ています。小さな実をたくさんつけたヨウシュヤマゴボウの房は、まるで収穫直前のぶどうの樹のように見えます。
学名 | Phytolacca americana |
和名 | ヨウシュヤマゴボウ |
原産地 | 北アメリカ |
分布 | 日本・ユーラシア・アフリカ・南北アメリカ |
草丈 | 1~2m |
名前の由来は丈夫な根っこ
ヨウシュヤマゴボウの名前の由来は、根が非常に丈夫で、地中深くまで伸びている様子がゴボウに似ていることです。とはいえゴボウはキク科ですから、あくまで見た目が似ているだけです。また、ゴボウより太く硬いため、人によっては大根に例えられることもあります。根は、一部が折れても残りの部分から再生することができるのも、丈夫さの秘密です。
アメリカからやって来た帰化植物
ヨウシュと付くことからもわかるように、元は北アメリカ大陸原産です。日本には明治時代に、セイヨウタンポポなどとともにやってきたとされています。非常に繁殖力が高く、里山などでは木々の生育を阻害する厄介者でもあります。また、成長すると2mに届くことがあるため木と勘違いされることもありますが、あくまで草・雑草の分類です。
別名はインクベリー
ヨウシュヤマゴボウの特徴として、実が柔らかく中に詰まった汁を出す、ということが挙げられます。この汁は洗っても非常に落ちにくく、かつてはアメリカで染料に使われていたほどです。現在でも、その洗い落としにくさから「インクベリー」と呼ばれています。また、染料に使える雑草ということで、アカネグサの英名にちなんで「ポークウィード」という別名も持ちます。
花言葉は「野生」「内縁の妻」
ヨウシュヤマゴボウの花言葉は「野生」です。種を鳥に食べてもらい、遠くに運ばれ、そしてその先がどんな荒れ地でもたくましく繁殖できる。かわいらしい花の印象とは裏腹にたくましいその生態が、花言葉の由来のようです。また、房の端から花が咲かず、まばらに咲きまばらに実をつける。そんな様子から、「内縁の妻」という花言葉もつけられています。
ヨウシュヤマゴボウは有毒
ヨウシュヤマゴボウは、ブルーベリーやぶどうに似たかわいらしい実をつけます。また、どこででも見かけることができる身近な植物です。しかしなんとヨウシュヤマゴボウは有毒で、決して食べることはできません。しかも、実も、葉も、種も、根に至るまで、全草が強い毒性を帯びています。最悪の場合死亡することもあるため、注意が必要です。
子供の誤飲が後を絶たない
身近なところに生えている小さな実となれば、子供が興味を示すのも無理はありません。しかし、嘔吐・下痢を起こすフィトラッカトキシンや、血液凝固作用があるポークウィードマイトジェンが含まれています。子供にとっては少量でも危険性が高いため、小さい子供がいるご家庭は食べることがないように十分注意してください。
やまごぼうの漬物は別の植物
ヨウシュヤマゴボウで発生する死亡事故の大きな原因の一つが、根を食べてしまうことです。市販されている「やまごぼうの漬物」の存在から、根が食べられるのだろうと思いこむ人がいます。ヨウシュヤマゴボウの根は確かにごぼうや大根に似ていますが、ポークウィードマイトジェンが非常に多く含まれているため、絶対に食べてはいけません。
やまごぼうの正体はアザミ
では「やまごぼうの漬物」とは何なのかというと、実はオニアザミやモリアザミの根なのです。アザミはごぼうと同じキク科に属しますし、葉も食べられて整腸作用まである植物ですから、こちらは美味しく食べることができます。醤油漬けや味噌漬けなど何種類かありますから、好みの味付けを探して、おにぎりなどと一緒に食べてみてください。
ヨウシュヤマゴボウの駆除方法
ヨウシュヤマゴボウは毒性が強い上に繁殖力もあり、庭作りや林業にとっても厄介者です。しかも宿根草なので、抜いても抜いても毎年生えてきてしまいます。しかしヨウシュヤマゴボウは、正しい方法で対策を行えば根絶することが可能な雑草です。コツは、かわいらしい花や実に惑わされず、早いうちに駆除を行うことです。
切るだけでは不十分なので根ごと抜くこと
ヨウシュヤマゴボウの丈夫さは、主に根の強さに起因しています。ですので、枝のような茎を根本から切るだけでは不十分です。それよりも、春先のまだ小さいうちに根っこごと抜いてしまうのが一番確実です。とはいえ、一度だけでは地中に残った根の欠片からまた成長してしまうかもしれませんから、数年越しの作業になるでしょう。
浸透性除草剤が有効
範囲が広すぎて手作業では間に合わなかったり、大きくなりすぎてしまったりする場合には、浸透性除草剤が有効です。おすすめの除草剤はラウンドアップです。30倍ほどに薄めて撒くと、根っこごと一網打尽にしてくれます。ただしラウンドアップは強力な除草剤ですので、ガーデニングなど他の植物に影響が出る場合には気をつけましょう。その場合は溶液を濃い目に溶かし、霧吹きを使って、ヨウシュヤマゴボウだけに噴射するといいでしょう。
ヨウシュヤマゴボウの仲間たち
ヨウシュヤマゴボウは身近なところにも生えている植物ですが、人目につかない山の中などに咲く近縁種がいくつかあります。また、愛らしい見た目から、園芸品種として改良された種もあります。ただし、どれも全草毒性を帯びていますので絶対に食べてはいけません。
中国出身の近縁種ヤマゴボウ
ヨウシュヤマゴボウにはヨウシュとつくだけあってか、ヤマゴボウという別の植物も存在します。こちらは中国原産で、古くには利尿薬として使われていました。一番簡単な見分け方は、実を見ることです。まんまるなヨウシュヤマゴボウとは対称的に、ヤマゴボウはいくつもの房にわかれています。また房をつける向きも異なり、ヤマゴボウの房は上向きです。
園芸用品種として人気なジュズサンゴ
ジュズサンゴは、赤くかわいらしい実が人気の園芸品種です。実は南天に似ていますが、南天の実が冬につくのに対し、ジュズサンゴは夏から秋に花と同時に実をつけます。小さな実以外はヨウシュヤマゴボウとは似ていないような気がしますが、実はこれもヤマゴボウ科の植物です。ただしこちらは、ヤマゴボウ属でなくリヴィナ属という別の属です。
まとめ
ヨウシュヤマゴボウは、秋口にかわいい実をたくさんつける雑草です。しかし全草に毒があり、決して口にしてはいけません。ガーデニングや林業に撮っては頭の痛い厄介者ですが、宿根草の中では比較的対処しやすい植物であることが救いです。まだ草丈が小さい頃なら、根ごと抜くこともできますし、除草剤が有効です。早め早めを心がければ、決して駆除方法のない植物ではありません。
出典:写真AC