メヒシバとは
メヒシバはイネ科メヒシバ属の一年草で、日本全土に分布する、ごく身近にみられる雑草です。庭や畑、校庭、空き地、道端など、日当たりの良い場所ならどこにでも見ることができます。先端に数本の細い穂が放射状に伸びる、小型のイネ科植物ですが、大きいものは80センチほどになります。漢字では「雌日芝」と表記し、オヒシバよりも優しい姿から名づけられています。
メヒシバの特徴
メヒシバ成長点が非常に低い場所にあり、そのため上部だけを刈りとっても容易に再生します。また、メヒシバは他感作用(アレロパシー)を持ち、ほかの植物の成長を阻害して、その場所を占有します。メヒシバの種はいっせいには発芽せず、時期を変えて発芽するため、一度種が落ちると長期間にわたって発芽時期が続くことになります。非常に繁殖力の強い植物だといえます。
畑や芝生の強害草
その特徴から、非常に勢力の強い雑草として知られ、畑や芝生を管理するうえで、厄介な強害草と評価されています。日当たりさえよければあらゆる土壌に適応し、乾燥にも強く、上部を刈っても再生するため、一度生えると駆除が難しくなります。夏場に急激に成長し、あっというまに他の植物を押しのけ、占有してしまいます。
メヒシバの仲間と見分け方
オヒシバ
イネ科オヒシバ属の一年草で、名前の「雄日芝」はメヒシバより雄々しいことから名づけられ、メヒシバと対になっています。日当たりを好み、メヒシバと同じような場所に生育します。見分け方としては、その名の通りオヒシバのほうが強靭で、メヒシバが容易に葉が切れるのに対して、オヒシバは茎葉を引きちぎるのにかなりの力を必要とします。穂も、オヒシバのほうが平たく大きい穂をつけます。
コメヒシバ
メヒシバと同じくイネ科メヒシバ属で、メヒシバの近縁種です。見分け方としては、姿形がメヒシバによく似ていますが、高さが10~50センチと小型です。また、メヒシバが日当たりのいい場所で生育するのに対し、コメヒシバは弱い日光を好みます。
アキメヒシバ
アキメヒシバはイネ科メヒシバ属で、メヒシバの近縁種です。見分け方としては、メヒシバに姿形がよく似ていますが、アキメヒシバはその名の通り、秋に穂が出るので見分けができます。また、アキメヒシバの穂は赤紫色を帯びています。
メヒシバの駆除方法は?
芝生や農地、庭を管理するうえで厄介な強雑草であるメヒシバですが、有効な駆除の仕方はあるのでしょうか。ここではメヒシバの除草方法をいくつかご紹介します。
根ごと抜き取る
メヒシバは成長点が非常に低い場所にあるため、上部だけ刈りとっても容易に再生し除草できません。見つけしだい、手に負えなくなる前に根から抜き取りましょう。また、抜き取ったメヒシバからは種が落ちます。落ちた種からまた生えてきますので、除草後はきれいに掃除することが必要です。
液状の除草剤を使う
すでに多く生えてしまっている場合や、抜き取ることで芝生や植栽の根を傷つけるような場合、あるいは広範囲な場合には、やはり除草剤を使うのが効果的です。それも、できるだけ成長初期段階で使用するのが賢明です。大きくなりすぎると効果がうすい場合も多いからです。
メヒシバに効果的な除草剤
すでに生えてしまっているメヒシバには、葉や茎に散布するタイプの液状除草剤が有効です。グリホサート系の除草剤は、葉から吸収されて根まで枯らします。また、散布した部分しか枯らすことがありません。
芝生の場合は
芝もメヒシバも、どちらも同じイネ科の植物です。芝生の中にメヒシバが入り込んでしまっている場合は、イネ科雑草用の除草剤は使えません。芝生専用の除草剤を使いましょう。除草剤の種類は様々で細分化されていますから、説明書をよく読んで、どの植物に有効なのかを確認しましょう。
土壌処理剤を使う
除草剤の中でも、顆粒状の土壌処理剤は、雑草が発生する前の段階で土にまくことで、種子の発芽を抑制します。つまり、雑草をそもそも発生させないタイプの除草剤です。毎年、雑草が大発生して悩まされている場合にはとても効果的です。メヒシバが発芽する前の早春や秋口に施せば高い効果を期待できます。
土壌処理剤の注意点は?
- 土壌処理剤の場合は周囲に植えている植物まで枯れてしまうことになります。樹木や田畑、花壇のまわりでは、使わないようにしましょう。
- 近隣の敷地に影響が及ぶこともあります。周囲の環境にも気を配りましょう。
- 芝生には使用できるものとできないものがあります。説明書をよく読んで選ぶようにしましょう。
防草シートを使う
メヒシバは、除草してもまたいつのまにか発生してしまう厄介な雑草です。メヒシバを発生させたくない部分には、防草シートを敷くのも効果的です。日光を遮り、発芽をさせません。除草剤と併用することで、より効果を高めることができます。除草した後に防草シートで覆いましょう。
メヒシバの意外な一面は
メヒシバの害草としての面ばかりお伝えしましたが、植物はいろんな顔を持っています。意外なメヒシバの一面もお伝えしましょう。
メヒシバの種が売られている!?
生えては困る、雑草のイメージが強いメヒシバですが、意外にもメヒシバの種が販売されています。これはなぜかというと、主にペット用として販売されているのです。
猫は胃の中の毛玉を吐き出すために、イネ科の葉っぱを食べることが知られています。この時好むのが、身近に生えているメヒシバであることが多いのです。最近では室内飼育の猫も多いため、室内でイネ科の植物を鉢植えして猫に与えている飼い主もいます。そのためにメヒシバの種子が販売されているのです。
小鳥やハムスターも
猫だけでなく、小鳥やハムスターもメヒシバが好物です。野生のスズメもメヒシバを食べる姿が見られます。人間には害草でも、動物たちには美味しい食物のようです。
メヒシバの意外な美しさ
とても地味な雑草のメヒシバですが、拡大してみると、花はとても繊細な、美しい形をしています。メヒシバの花言葉は「情緒不安定」。風に揺れるさまを表した言葉でしょうか。陽光の中で揺れている様はたしかに、どこか不安げな繊細さがありますね。
楽しい草遊びにも
メヒシバは身近な雑草なだけに、昔から子供たちの草遊びに多く利用されてきました。ままごとの材料はもちろん、メヒシバで傘やほうきを作ったり、草相撲をして遊んだ思い出のある方も多いのではないでしょうか。メヒシバの穂をわっかにして、シャボン玉遊びをすることもできます。
メヒシバでシャボン玉遊びをします。
— inori (@kusabanaasobi) July 9, 2018
ネコジャラシに負けないくらいあちこちで繁茂しているメヒシバです。
シャボン液は食器用洗剤を水で薄めて作りました。気持ち濃い目がいいのかな?というのが今日の感想です… pic.twitter.com/ZSPCBZqaW3
バッタたちにも大人気
メヒシバは、その強い生命力でどこにでもはびこり、生長も早く、繁茂し続けます。強害草といわれる所以ですが、その特徴が、多くの草食性昆虫の命を支えているのです。毒性もなく、夏の暑さの中でも、緑の葉を提供し続けるメヒシバは、大事な生態系の一部です。
メヒシバは食べられる?
日本の道端に生えているメヒシバは、実も小さく、ぱさぱさとしていて、いくらイネ科とはいえ食用にはできそうにありませんね。実際日本では食用にはしません。しかし、メヒシバの近縁種を栽培し、穀物として食べる国もあります。
西アフリカでは
西アフリカで栽培されているフォニオは、イネ科メヒシバ属の一年草で、日本のメヒシバの近縁種です。西アフリカでは古くから栽培されており、お粥やクスクスのようにして食べます。貧弱な土壌でもよく育ち、生育も早いため、世界の食糧危機を救える作物として注目されています。さらにグルテンフリーの穀物であり、必須アミノ酸も含む栄養豊富な食品であるため、ダイエット効果がある健康食材としても期待されています。
ポーランドでは
ヨーロッパ原産のオニメヒシバも、日本のメヒシバの近縁種で、ポーランドやドイツで栽培されています。以前は穀物としての利用もあったようですが、現在は動物用飼料として栽培されています。
まとめ
メヒシバは細身の姿形ながら、その強靭な生命力には驚くばかりです。まさに生きていく知恵が詰まった植物です。メヒシバの役に立つ面も紹介しましたが、しかしながら庭に生えると厄介な雑草には違いないですね。除草をするときは、記事を参考に特徴にあった除草をしてくださいね。
メヒシバとは?
- イネ科の一年草でごく身近にみられる雑草
- 繁殖力が非常に強く、強害草として扱われる
- 駆除方法としては、根から抜き取る、除草剤、土壌処理剤、防草シートなど
- 猫や鳥、ハムスターには人気の雑草
- 近縁種は穀物として栽培する地域も