苦土の意味は?
ボタニ子
さっそくですが「苦土(くど)」とはどんな意味でしょうか?
「苦土」は、すなわち「マグネシウム」という意味です。マグネシウムは、肥料の中では三大要素に次いで重要な栄養分で、植物の光合成を助けます。理科の授業で「クロロフィル」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、クロロフィルは葉緑体を構成している主要な要素で、マグネシウムがその主要成分です。
三大要素 | 中量要素 | 微量要素 |
窒素(葉肥え) | カルシウム | 鉄、亜鉛、塩素 |
リン酸(実肥え) | マグネシウム | マンガン、モリブデン |
カリ(根肥え) | 硫黄 | ホウ素、銅 |
ボタ爺
苦土というのは肥料用語なんじゃよ。名前の意味は、酸化マグネシウムを口にいれると苦いからだと言われておるぞ。
苦土の効果
苦土(マグネシウム)は重要な役割を果たすミネラル成分で、酵素のはたらきを助け、人間の体内でもホルモンや骨、筋肉などの形成にも関っています。植物でも同様に酵素のはたらきを助けているほか、光合成に必要な葉緑素を作るのに役立っています。
ボタ爺
苦土が植物の生育に重要な役割を果たしていると分かったのは2002年とかなり最近。論文が掲載された農業専門誌は大きな話題になったそうじゃよ。
苦土が不足するとどうなるのか?
苦土が欠乏すると緑色が薄くなったり、葉脈間が白化してしまったりという症状が出ます。これを「クロロシス」と呼び、虎の模様のようになる場合も見えることから「トラ葉」などと呼ばれることもあります。イチゴやバラでは葉に黒い斑点ができたりします。
苦土が過剰だとどうなるのか?
苦土の量が多すぎると、マンガンやホウ素、亜鉛などの吸収が阻害されて生育不良があらわれます。なお、マンガン不足や亜鉛不足では葉脈の間が黄化する症状が出てきます。ホウ素は細胞分裂にかかわる栄養素なので、不足すると新芽の生育不良などの症状が出てきます。
ボタ爺
肥料の使用量は一般的に、足りなくても使い過ぎても植物にダメージを与えてしまうんじゃ。適切な使用量とまき方を確認し、効果的な使い方をすることが大事じゃよ。
苦土の使い方
苦土単体では植物に吸収されにくいため、「苦土石灰」として販売されているのが一般的です。マグネシウム不足かな?と思ったら、用途に合わせて苦土入りの肥料を購入し、使用しましょう。
次に「苦土石灰」の使い方や注意点について説明します。
苦土石灰とは?
苦土石灰はドロマイトと呼ばれる鉱物と石灰を原料として作られており、カルシウムとマグネシウムが含まれています。2つの中量要素は拮抗作用(互いに吸収を阻害し合う特徴)がありますが、拮抗作用が起きにくいようバランスよくブレンドされています。
苦土石灰の使い方
苦土石灰は、酸性に傾いた土壌の改良剤(ph調整剤)やカルシウム・マグネシウム補給用の肥料として使用します。苦土石灰には粉状タイプと粒状タイプがあり、粉状タイプは価格が安いことがメリット。使いやすさでは粒状タイプのほうが勝っています。
①土壌改良剤(ph調整剤)としての使い方
苦土石灰を土壌改良のために混ぜるときは、植え付けの1~2週間前に1㎡当たり100~200g(コップ1~2杯分)の土壌に漉き込む(混ぜる)かたちで使用します。ただし苦土石灰は水に溶けにくく、効果がゆっくりなので、ph改良剤としては、より水に溶けやすく酸性度の強い消石灰(石灰石に水を加えて熟成させたもの)が適しています。
ボタ爺
日本は雨が多くてミネラル分が流されやすく、雨自体も弱酸性なので土壌のphが酸性に傾きやすい気候なんじゃよ。アルカリを好む植物の場合は定期的に追肥することが重要じゃ。
②肥料・追肥としてのまき方
苦土石灰をカルシウムとマグネシウムの追肥として使用するときは、株元にパラパラとまきましょう。まき方は、株1株あたり又は植木鉢で1回当たり3~4gが上手なまき方です(ティースプーン1杯程度)。
苦土石灰の効果
苦土石灰を肥料として使用する場合はカルシウムとマグネシウムがゆっくりと溶け出します。酸性土壌のph調整剤として混ぜる場合は、有機石灰(アルカリ分40~45%)と比べてアルカリ分が53%以上と高いため比較的早く効き、消石灰(60%以上)や生石灰(80%)と比べると緩やかに中和される使いやすいアルカリ度です。
苦土石灰の注意点
苦土石灰の使い方には注意が必要です。使い過ぎるとカルシウムやマグネシウム過剰になってしまい、ほかの栄養分の吸収を阻害し生育不良となってしまいます。また、石灰成分は使い過ぎるとアルカリ成分により土質を硬くしてしまい、根の生育不良が起こりやすくなります。
まとめ
植物も人間と同様、様々な栄養素をバランス良く欲しているのですね。肥料を購入する場合には三大要素こそ気にするものの、中量要素は軽視しがちですが、ぜひ苦土の補給にも気を付けて、栄養分を効率よく吸収できる環境作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC