石灰肥料とは?
石灰岩を原料とした肥料
石灰肥料は石灰岩を原料としています。石灰岩とは炭酸カルシウムを50%以上含んだ堆積岩の総称とされれおり、 貝殻やサンゴなど生き物の遺骸からなる「生物堆積岩」と、水から化学的に炭酸カルシウムが沈殿してできた「化学堆積岩」の両方が存在しています。
苦土石灰の原料はドロマイト
苦土石灰という名前の肥料を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。苦土石灰はこのドロマイト系の石灰石を原料に作られていますが、ドロマイトは炭酸カルシウムの他に炭酸マグネシウムを含んだ天然鉱石です。苦灰石や白雲石と呼ばれることもあります。
石灰肥料の種類と特徴
ひとくくりに石灰肥料といっても種類があり、性質も変わってきます。主に農業で使用される石灰肥料として、①炭カル・②生石灰・③消石灰・④苦土石灰・⑤有機石灰があります。それぞれの主成分と特徴をまとめてみました。
①炭カルの成分・特徴と使い方
炭カルの主成分
原料となる石灰岩を粉砕し製造したものを「炭カル」と呼んでいます。主成分は石灰岩と同じ炭酸カルシウムで、化学式で表すとCaCO3です。アルカリ成分は公定規格では53%とされています。
炭カルの特徴
値段が手ごろで他の石灰肥料に比べアルカリ性も弱く、ゆっくりとした効果があるので安全な使い方ができます。一般的には粉状が多いですが、より効果が長続きする粒状のものもあります。かつてグラウンドのライン引きといえば消石灰でしたが、現在はより安全な炭カルが利用されています。
炭カルの使い方
炭カルは散布後すぐに作付けは可能ですが、肥効がやや遅効性のため2週間前に散布して土になじませておいた方が効果的です。
②生石灰の成分・特徴と使い方
生石灰の主成分
石灰岩を900℃以上の高温で焼成したものが生石灰になり、白色の塊状または粉状をしています。主成分は酸化カルシウムで、化学式で表すとCaOです。アルカリ成分は80~95%と高いです。
生石灰の特徴
石灰肥料の中でもっとも強いアルカリ性の性質を示します。酸性を中和する力が最も高くすぐに効果があるのが特徴です。しかし吸湿性が高く水を加えると激しく発熱しますので取り扱いには十分注意が必要です。
生石灰の使い方
水が加わると激しく発熱するため、すぐに植物の植え付けはできません。目安として植え付けの2週間前に散布します。
③消石灰の成分・特徴と使い方
消石灰の主成分
生石灰に水を加えたものが消石灰になり白色の粉末状をしています。成分は水酸化カルシウムで、化学式で表すとCa(OH)2です。アルカリ成分は60~70%と生石灰に次いで高いです。
消石灰の特徴
取り扱いは生石灰と同じです。種子や苗に触れると障害を起こしやすいので注意が必要です。殺菌作用もあり、消毒としての利用もされています。
消石灰の使い方
生石灰のように発熱はしませんが、種子や根に触れると障害を起こすばかりか最悪枯れてしまう場合もあります。生石灰と同じく目安として植え付けの2週間前に散布します。
④苦土石灰の成分・特徴と使い方
苦土石灰の主成分
ドロマイト系の石灰岩を粉砕したもので白色の粉末状もしくは粒状をしています。主成分は炭酸カルシムと炭酸マグネシウムで、化学式で表すとCaCO2とMgCO3です。アルカリ成分は55%以上です。
苦土石灰の特徴
生石灰や消石灰ほどアルカリ性は強くなく、緩効性なのでゆっくりとpH調整をしてくれるのが特徴です。カルシウムの他に苦土(マグネシウム)も含むため、植物に必要な微量要素の補給にも役立ちます。そのため野菜づくりで使用される石灰肥料ではこの苦土石灰が主流となります。
苦土石灰の使い方
苦土石灰は散布後すぐに作付けは可能ですが、肥効がやや遅効性のため2週間前に散布して土になじませておいた方が効果的です。
⑤有機石灰の成分・特徴と使い方
有機石灰の主成分
カキやホタテの貝殻や卵の殻などを粉砕したもので粉末状をしており、主成分は炭酸カルシウムでアルカリ成分は50%くらいです。
有機石灰の特徴
有機石灰は水に溶けにくい性質があります。他の石灰肥料に比べて緩効性ですぐに酸性矯正の効果はでませんが、土が硬くなりづらいというメリットがあります。
有機石灰の使い方
有機石灰は土壌中でゆっくり効果が現れる緩効性のため、苦土石灰と同じように散布後すぐに作付けすることができます。