摘果とは?
摘果の読み方と意味
摘果の読み方は「てきか」です。果実を摘み取ることを意味します。摘果は園芸用語で、果物や野菜の実が幼いうちにいくつか摘み取って数を減らす人為的な作業をいいます。
摘果をする理由
植物の養分を効率よく回す
人為的に実の数を整理して、品質のよい実を収穫するのが摘果の目的です。果実の総数を減らせば、個々の実に効果的に養分が届き、よい果実が育ちます。果樹も翌年の花芽作りに養分が回せて、不作の年になりにくく、毎年収穫が望めるでしょう。
摘果しないとどうなる?
植物は、蓄えている養分を使いながら育ちます。例えば、植えて間もない果樹が実を結んでも、株がまだ幼くて体力がないうちは、熟さずに実が小さいまま自然に落ちます。これは「生理落果」という現象です。株が育てば、摘果しなくても実は熟しますが、次のような状態になりがちです。
実が小さい
果物や野菜の株が体力をつけて熟すようになったとき、実の数が多いと個々の実は小さかったり、大・小のばらつきが生じたりします。株全体の養分は限られているため、多くの実が養分を分けあった結果、個々の実を太らせるほど十分いき渡らないからです。
おいしくない
実がたくさんなりすぎると、小さい実が混ざるのと同じ理由で、個々の実の味がぼやける場合があります。おいしくなるブドウ糖などの養分が、すべての実に十分いき渡らないからです。
隔年結実
果物によってはほとんどの実が大きく熟するかわりに、翌年は実が少ないか、まったく実らない状態になることがあります。「隔年結実(かくねんけつじつ)」と呼ばれる現象で、多く実がなった翌年は不作になり、株の生育に養分を回します。豊作と不作を交互に繰り返して、養分を調整しているのです。
ボタ爺
実がなり過ぎると、実に養分を注ぎつくして、翌年の花芽ができにくくなるんじゃ。それで、花も実も少ない「裏年」になることがある。
摘果に似た作業
植物の育て方には、成長過程で芽や花を減らす作業があります。それぞれの意味と目的を、簡単におさらいしておきましょう。
間引き
種まきのときは、すべての種が発芽して順調に育つとは限らないため多めにまきます。発芽したあと、生育のよい苗を残して数を減らすのが、「間引き(まびき)」と呼ばれる作業です。間引きしないでいると、苗は大きく育ちません。植物にもよりますが、数回に分けて徐々に間引いていきます。
ボタ爺
ほかにも、間引きは数を減らす意味でよく使われる。花を間引く、実を間引くという表現をすることもあるぞ。
摘花・摘蕾
摘花の読み方も「てきか」で、こちらは花を摘み取って数を減らす作業です。摘蕾の読み方は「てきらい」で、蕾を摘んで減らします。果物や実もの野菜は、まず摘花し、最終的に摘果で調整します。草花は、大輪の花を咲かせるときに、花の数を減らすために摘花が必要です。養分を特定の花に集中させて大きく咲かせるためです。
草花や野菜の生育に欠かせない作業
間引きも、土中の養分を効率的にいき渡らせてよりよく育てる目的で数を減らす作業です。草花や根菜・葉もの野菜は間引きで調整し、日あたりや風通しをよくして育てます。果物や実もの野菜は、間引き、摘花、摘果などを段階的に行って収穫量を減らします。どれも生育に欠かせない作業です。
このほか、わき芽を摘んだり、剪定したりして花や実のなる枝を減らす作業もありますね!
摘果のやり方と時期の例
例①果樹
果物は、摘蕾・摘花をしたあと、「予備摘果」をして最後に「仕上げ摘果(本摘果)」をします。摘蕾・摘花で数を減らせば養分を実の成熟に回せるため効果的ですが、受粉や実の形、天候などで順調に育たない場合もあります。そのため、段階を踏んで生育状態を見ながら徐々に調整するのが一般的です。減らし過ぎの失敗が防げます。
時期
時期は果物にもよりますが、満開になったあと約2~4週間に予備摘果をし、満開後40~50日くらいに仕上げ摘果をします。
数の目安
摘果は、葉の数を目安に行います。ほとんどの果物は、花が咲くまでは土からの養分で育ち、そのあとは葉の光合成で作る養分も使います。果実1個あたり10枚~数10枚の葉が必要です。予備摘果で形や生育のよくない実、枝奥にある実を摘み取ります。枝の中心の実を残すようにし、葉の繁り具合と1枝ごとのバランスを見ながら仕上げ摘果をします。
果物の種類 | 1果あたりの葉数(目安) |
温州ミカン | 20~25枚 |
リンゴ | 大玉60枚、中玉40枚 |
ナシ・桃 | 20~40枚 |
ブドウ | 大房12~16枚、小房7~10枚 |
ミカンは手で摘み取れるよ。ほかの果樹は清潔なハサミを使おう!
例②ウリ科野菜
メロンやスイカ、カボチャは、まず1つの株から伸びる子づる(枝)の数の整理(整枝作業)が必要です。株もと近くの雌花は受粉しても大きな実になりにくいため、摘み取ります。
摘果のタイミングと数
受粉して育った実がソフトボール程度の大きさのときに、1つるに1個~3個になるように摘果します。
種類 | つるの本数 | 残す実(目安) |
メロン | 2本 | 子づる1本につき2個 子づるの10節~15節の実を残す |
スイカ | 2~3本 | 子づる1本につき2~3個 15節あたりの実を残す |
カボチャ | 2~3本 | 子づる1本につき2~3個 先に葉が10枚以上ある実を残す |
- つるの中ほどに付いた実がよく育ちます
- いずれも小玉品種はつる、実ともに約2倍ほど残します
せっかくなったのに、途中で実を摘み取るのはもったいない気がしますよね。でも、メロンの幼果は漬物に利用できます。おいしいですよ!
キュウリ
キュウリは、株元の7節あたりまでのわき芽や雌花を摘み、親づる(主枝)を伸ばします。8節以降のわき芽は伸ばして子づるとし、1つの子づるに2本ならせるのが目安です。成長のスピードが速く、次々に咲いた花が結実していく果菜のため、それほど厳密に考えず、生育の悪そうな実を摘み取る程度で大丈夫です。
ボタ爺
キュウリが2本なった子づるの先には余分な花や実を付けないように、葉っぱ2~3枚先でつるを剪定するんじゃよ。
例③そのほかの野菜
トマト
トマトはわき芽摘みが大切です。わき芽を摘んで、余計な枝を作らないように注意します。大玉のトマトは、樹勢とのバランスを考え、1房に4個程度に整えます。中玉やミニトマトは、基本的に摘果しなくても大丈夫です。ただし、いびつな形の実はあまりおいしくならないため摘み取ります。
タイミングは、500円~100円玉くらいの大きさのときです。
ナス
ナスは、最初に咲いた花を結実させますが、その実をあまり大きくならないうちに収穫(摘果)します。これは、株に負担をかけないためです。そのあとは、剪定して余分な花や実がつかないように育てていきます。
ピーマン
ピーマンは、一番花を摘み取ります。株がまだ大きく育ってないうちは二番花も摘花します。株が小さいときに実ができると、株や実が大きく育たなくなるからです。つぎつぎに花が咲いて結実していくため、そのつどバランスを見て、数を減らしながら育てましょう。
摘果タイミングは小さい実のときです。花と実をあわせて全体の1/4程度摘み取ります。
イチゴ
イチゴは、小さい花や葉の奥のほうに咲いた花は大きな実になりにくいため、摘花します。また、受粉がうまくいかなかった実は、小さいままかいびつな形になり、おいしく育ちません。これらも摘み取ります。
実が青いうちに摘み取ります。
摘果して上手に収穫しよう
摘果のやり方やタイミングは、植物によって少し異なりますね。それぞれの個数などは経験から受け継がれてきた知恵です。それほど神経質にならず、摘果はよりよく育てるための知識の一つと考えて、楽しみながら慣れるのがよいでしょう。最初は小さい実がなったり、果物が不作の年になったりしがちですが、次第に摘果のやり方が身につきますよ。
出典:写真AC