ホタルイってどんな植物?
ホタルイは、カヤツリグサ科ホソガタホタルイ属の植物です。日本各地の沼地や湿地帯に多く生えている雑草です。近縁種が多く、カヤツリグサ科に属するイヌホタルイ・コウキヤガラ・クログワイ・タイワンヤマイなど多くの湿地植物の総称として、ホタルイと呼ばれることもあります。
田んぼに特に多いのはイヌホタルイ
イヌホタルイ(左)とホタルイ(右)。両種の推定雑種であるホタルイモドキを探したが見つからなかった。染色体数により雑種をつくりにくいとか。 pic.twitter.com/ColJZnqn5u
— matsumo_musi@自然荒廃阻止 (@gemmifer06) September 8, 2013
ホタルイの中でも水田に適応したホタルイとも言われるイヌホタルイは、多くの米農家の悩みのタネとなっています。植物名にイヌとついているのは一般的に『役に立たない』という意味ですが、イヌホタルイはまさに厄介者の筆頭というわけです。
学名 | Schoenoplectiella hotarui |
和名 | ホタルイ |
分布 | 北海道~沖縄・朝鮮半島・中国・台湾・太平洋諸国など |
草丈 | 20~60cm |
学名 | Schoenoplectiella juncoides Roxb |
和名 | イヌホタルイ |
分布 | 北海道~沖縄・朝鮮半島・中国・台湾・太平洋諸国など |
草丈 | 15~50cm |
イヌホタルイは水田の大敵
除去が非常に難しい水田雑草
イヌホタルイは米作りの嫌われ者。その大きな理由は、とにかく撃退しにくいことです。一度生えると多くの種が地中に残り、毎年生えてきてしまいます。たとえ一度除去しても種の状態で10年以上休眠することもあるため、次の年にはまたすぐ発生してしまいます。さらに密生しやすいため、稲に必要な栄養をどんどん奪ってしまいます。
よく似た雑草が多く同定しづらいのも困りもの
クログワイなどよく似た植物が多く、それでいて植物ごとに効き目がいい除草剤が違う点も厄介です。成長段階によって見分け方も違います。間違った除草剤を使ってしまえば効果がありませんし、稲の生育にも悪影響を与えます。
ホタルイの発生時期は?
イヌホタルイは多くの場合、一度発生すると何年も生え続けます。そのため多年草だと思われがちですが、実は一年草。秋に落ちた種は、冬の寒い間は土の中でじっとしていて、春になると芽を出し始めます。土の中から顔をだすのは、田植えとほぼ同じ時期です。
駆除の基準になるタイヌビエより生育が早い
水田をバックに『タイヌビエ』。
— Ritha (@imogara_zuiki) September 7, 2017
タイヌビエは水田に固有の「随伴雑草」であり、イネに対して大きな害を与える(イネが競争に負け、収穫量が少なくなる)ため、昔から徹底した駆除が行われてきました。そして“それ”は、我々にとっては思いもよらぬ展開を迎えるのでした…(続く) pic.twitter.com/aInxhbH3qy
イヌホタルイの厄介な点の一つとして、ほぼ同時期に伸び始めるタイヌビエより成長が早いことがあげられます。しかし、万能タイプの除草剤の多くはこのタイヌビエを基準に撒く時期が表記されています。つまり、タイヌビエを見て万能除草剤を撒いてもイヌホタルイのほうが成長が早いため撃退しきれない、ということがしばしば起こります。
ホタルイ対策は見分け方が勝負!
カヤツリグサ科の多くは、どれがどれなのか区別がつきにくいものです。特にイヌホタルイは、田んぼの厄介者たちの中でもそっくりさんが多い植物です。しかしどれがイヌホタルイなのかわからないと、具体的な対策ができません。よく似た水田雑草たちの中でも、特にイヌホタルイと見分けづらい植物を紹介します。
クログワイとの見分け方
水から顔を出している部分では見分けがつかない
イヌホタルイのそっくりさん代表はクログワイ。特に出たばかりの頃はどちらなのかか区別がつかない場合が多いですが、クログワイはカヤツリグサ科の中でもハリイ属という別の区分。そのため、有効な除草剤が違ってきます。
イヌホタルイは種・クログワイは球根
見分け方のコツは、ずばり掘り起こしてみること。手か除草機で根ごと掘り起こしたあと、根本をよく見てみましょう。黒い種があるのがイヌホタルイ(上画像)・球根から生えているのがクログワイ(下画像)です。クログワイは中華料理などで使うシログワイの仲間なので同じ球根で増える、と考えれば覚えやすいですね。
コウキヤガラとの見分け方
コウキヤガラも撃退が難しい
カヤツリグサ科の中でももう一つ駆除しにくい水田雑草が、コウキヤガラ。一度水田内に侵入されると、完全に撃退するまでは10年以上かかることもあります。主に海が近い地域に多く塩分に強いため、シオクサとも呼ばれています。
コウキヤガラは地下でつながっている
市内の水路のコウキヤガラ自生地で開花が始まっていました。1kmほど離れた水路内ではオオトリゲモが10cmほど成長していました。 pic.twitter.com/59h0M4fjyk
— matsumo_musi@自然荒廃阻止 (@gemmifer06) May 17, 2013
イヌホタルイとの見分け方は比較的簡単で、コウキヤガラはスギナなどと同じように地下でつながっています。根の部分でどんどん増えるのもスギナと同じ。なので、種がついていればイヌホタルイ・お互いがつながっていたらコウキヤガラ、というわけです。
ホタルイ属を見分ける際の注意点
イヌホタルイは、茎の途中で花がつくのが最大の特徴。ですので花がつくまで待てば、他の水田雑草との同定は容易です。ただしそこまで待つと、一発処理剤が効かなくなってしまいます。ですので、できるだけ発生後早い段階で同定を行い、適切な除草剤を選ぶことが大切です。
ホタルイにおすすめの除草剤4選!
これ、見てください。
— なやカフェのひと (@naya_cafe) June 25, 2019
田車という田んぼの除草機です。
これを稲の間にいれてごろごろすると草がとれ、土中の嫌気発酵したガスは抜けてくれ、酸素が補給されるという道具です。
ずっとほしかった木製のもの。
ご近所さんがくださったんです。
ごろごろするの、かなり楽しい。
すみません。自慢です。 pic.twitter.com/a3Q8E148Ph
ホタルイの除草は、基本的には手で抜くか除草機をかけるしかありません。除草機では稲のすぐそばまではかけられないため、結局人間の手で一つ一つ除去していくことになります。しかし厄介だからこそ、各社から専用性の高い除草剤が販売されています。
田んぼに合わせて撒き方を選ぶことが大切
除草剤は、メーカーや成分のほかに撒き方の種類も様々です。注水時に水に加えるものから、ポンプを使って手作業で散布するもの、中にはヘリやドローンで広範囲に散布するものまで。広さや土壌など、それぞれの性質に合わせて選ぶことが大切です。
最初が肝心! テマカット
イヌホタルイをはじめとしたカヤツリグサ科の水田雑草は、発生時期が長いため、早い段階から複数の対策を施すのが大切です。テマカットは、水田雑草の発生初期段階で生育を抑制するおすすめの初期剤です。ただしあくまで初期抑制を主体としているため、伸び始めてからは効果が薄くなります。あくまで早い段階、可能なら代かきの時期に使用するのが効果的です。
根っこまで対処!一発処理除草剤 銀河
イヌホタルイをはじめとしたカヤツリグサ科はとにかく除去が難しい水田雑草なので、地上の茎を枯らす除草剤だけではなく、地下部への対策も大切です。銀河は、生えはじめの地上部だけでなく地下部にも強いのが特徴。クログワイをはじめとした球根もまとめて除去してくれる一発処理剤です。
伸びてしまったらこちら 中長期剤 ツインスター
どれだけ気をつけて対策しても、ときには一発除去剤では間に合わないほど伸びてしまうこともあります。そんな取りこぼし雑草に対策するのが、中長期剤と呼ばれるタイプの除草剤です。ツインスターはホタルイ対策の中長期剤では定番中の定番。水面から顔を出してしまったホタルイを根こそぎ撃退してくれます。
水持ちが悪い田んぼにはこれ ゼータタイガー
除草剤選びは対象になる雑草以外にも、土地との相性も大切です。例えば水田の水持ちの良し悪しなどによっても、適切な除草剤は変わってきます。水持ちが悪い田んぼにおすすめなのがゼータタイガー。土壌吸着性の高いブロモブチドを主成分として配合しており、水抜けが早い田んぼにはおすすめです。
除草剤選びの注意点
SU抵抗性雑草に要注意
スルホニウルレア(SU)抵抗性雑草、という言葉を聞いたことはないでしょうか?同じ一発除草剤を使い続けると、ときには耐性がついたものだけが生き残り繁殖してしまうことがあります。何度も同じものを使い続けた結果、耐性がないものだけが消え耐性がついている種だけが大繁殖してしまうのです。
ときには除草剤を変えてみるのも大事
ホタルイがどうしても除去しきれないときは、現在の除草剤に耐性がついてしまっているのかもしれません。そんなときは、いつもと違う除草剤を選んでみるのもよいでしょう。そんなときは成分表示をよく見て、今までのものと主成分が違うものを選ぶようにしましょう。もしくは、例えば一発剤を使用せず初期型と中後期型だけにしてみる、などというように、除草剤を撒く時期を変えてみるのもいいかもしれません。
まとめ
ホタルイは稲の生育に必要な栄養を奪いがちで、非常に除去が難しい水田雑草です。種類ごとの性質を理解して見分けること、有効な除草剤を選ぶこと、そして対策を行い続けることが何より必要です。