ガマの穂とは
学名 | Typha latifolia(和名:ガマ/蒲・香蒲、別名:御簾草/ミズクサ・ミスクサ ) |
属性 | ガマ科ガマ属 |
分類 | 抽水性の多年草,大型 |
時期 | 開花:6月~8月 蒲の穂(がまのほ)は花の呼び名 |
分布 | 日本(北海道・本州・四国・九州)/北半球の温暖な地域/オーストラリア |
梅の雨時期から夏の終わり頃にかけて、川沿いや公園の池の周りなどの水辺で、茶色いフランクフルトのような植物が生えているのを見かけたことがありませんか?この茶色い植物の正体は、蒲(ガマ)という水草の一種で、古くから日本に自生しており、葉の高さは1.5m~2mにもなる、大型の多年草です。目を引く茶色い部分はガマの花で蒲の穂(がまのほ)と呼ばれています。
ガマの穂の特徴
特徴①ガマの穂は花びらのない花
ガマの穂の大部分は雌花穂の群れで、茶褐色の部分はすべて雌の花です。雌花穂は、触ると弾力があり大きく膨らんでいます。上部にある細長い棒のようなものが雄花穂です。どちらも花びらはなく、開花時に雄花穂は花粉を飛ばして受粉し、花の時期が終わるとともに雄花穂は枯れ落ち、軸だけの状態になります。ガマの穂の大きさは10cm~20cmほどになり、太さは2cm~3cm程度あります。
特徴②ガマの穂は爆発する
膨らんだガマの穂を手でつぶすと、勢いよく爆発するかのよう破れはじめ、全体をこするとみるみるうちにはじけていきます。爆発したガマの穂からは、白色のふわふわとした綿毛が飛び出してきます。秋の終わりが近づく頃になると、風に吹かれたガマの穂が自然とはじけ、ふわふわの綿毛が飛散していく姿を見ることができます。
特徴③ふわふわの綿毛は種
ガマの穂の茶色の部分にはぎっしりと綿毛がつまっており、そのひとつひとつがガマの種で、ひとつの穂の中に、30万個以上の種が入っているといわれています。ガマは風を利用し、種を飛ばして繁殖します。そのため多くの種をつけ、繁殖に適した場所にたどり着ける確率をあげる必要があります。はじけて飛散した種は、水面に落下すると種が割れ、実を水中に放出します。
特徴④ガマの穂はかまぼこの由来
昔かまぼこは、竹に刺してちくわのような形で焼かれており、その姿がガマの穂に似ていることから、蒲鉾(かまぼこ)と名付けられました。その他にも、蒲団(ふとん)はガマの穂綿を詰めていたことから名付けられ、うなぎなどの蒲焼き(かばやき)は、うなぎを切って焼いた姿がガマの穂に似ていたことから、蒲の名が付いたといわれています。
ガマの穂の利用方法
ガマの穂は、見た目やこすると爆発する特徴がクローズアップされがちですが、実用性の高い植物でもあります。現代では馴染みのないものもありますが、身近なアイテムの代用品として使用することもでき、ガマの根と若葉は食材として利用されることがあります。
花粉は生薬に
ガマの穂(雄花穂)の花粉は、古来より生薬として利用されています。花粉を陰干ししたものは、蒲黄(ほおう)と呼ばれており、漢方薬に処方されたり外用薬として利用されたりしています。ちなみに、古事記に書かれている出雲神話のひとつ、因幡の白兎の中で、兎が傷を癒す際に体に塗ったのが、ガマの穂の花粉(蒲黄)です。また、兎が包まれたのがガマの穂綿という一説もあります。
綿毛はほくちに
火打石を使って火をおこしていたいた時代には、ガマの綿毛(穂綿)と硝石を混ぜ合わせて火口(ほくち・着火剤のこと)として利用されていました。近年はライターや固形燃料などを用いて、手軽に着火することができますが、その当時の生活においては、欠かせない材料のひとつだったのではないでしょうか。現代では、縄文時代の生活を体験できる施設などで、ガマの穂綿を使った火おこしが体験できます。
乾燥させて蚊取り線香に
乾燥させたガマの穂は、天然の蚊取り線香になります。蚊取りといっても、ガマの穂には殺虫効果はないので「蚊よけ線香」の方がより正しい表現でしょう。茎を長く残してガマの穂を摘み取り、乾燥させるだけなので、誰でも簡単に作ることが可能です。自生している植物を利用した方法なので、エコで環境にも優しい自然の蚊よけができます。20cm程度のガマの穂であれば、だいたい1時間半~2時間ほど持ちます。
まとめ
都心では近年見かけることが少なく、触る機会もないかもしれません。ですが、公園の池や近所の河川敷の片隅、田んぼや沼地などに生えている、なにげない草のひとつがガマです。夏を迎えれば、あの特徴的な茶色い穂をつけ目立つようになり、晩秋にはふわふわと綿毛を飛ばし始めます。ご存じなかった方も、これをきっかけにガマの穂を探してみてはいかがでしょうか。実際に、触ったりつぶした時の爆発するようにほぐれていく様子を体験すると、クセになる楽しさがあるかもしれません。