珍しい「白いタンポポ」とは?
白いタンポポは日本の在来種
タンポポと聞くと春の野原や土手に咲く黄色い小さな花を思い浮かべますが、珍しい白いタンポポが日本の在来種として存在しています。日本にはタンポポの在来種が10種類以上あり、そのなかでも白いタンポポは珍しく特定の場所にしか生息しません。
白いタンポポの和名は「シロバナタンポポ(白花蒲公英)」
日本固有種の白いタンポポにつけられた和名は「シロバナタンポポ(白花蒲公英)」と言います。日本に昔から自生している植物の中でも、シロバナタンポポは限られた場所にしか生息していないのでいままで知らなかったという人も多い植物です。白タンポポはシロバナ以外にも「ケイリンシロタンポポ」と呼ばれる品種があります。
英語の読み方は「White dandelion(ホワイトダンデライオン)」
一般的にタンポポのことを「Dandelion(ダンディライオン)」と言いますが、白いタンポポは「White dandelion(ホワイトダンディライオン)」と言います。ダンディライオンとはフランス語で「ライオンの歯」を意味し、タンポポの葉がライオンの牙のギザギザに似ていることからこの呼び名がつけられました。
白いタンポポの特徴
生息地が限られている珍しい白タンポポを多くの人が目にすることは大変で、詳しく観察する機会もあまりありません。一般的な黄色いタンポポとの違いはどのようなものがあるのか、花・葉・種の特徴を見ていきましょう。
①花の特徴
茎の高さは10~30cm、花の直径は約4cm
地表から伸びた白いタンポポの茎は10~30cmほどの高さになり、花の直径は約4cmとよく目にするタンポポと同じくらいの大きさです。花は天気のよい日中に咲き始め夕方には閉じてしまい、天候が悪いときは閉じたままの状態になります。花の寿命は3~7日ほどで、花がしおれたあと花びらの下にあるガクが膨らみ綿毛がでてきます。
じつは白いタンポポも黄色い色素が作れる
美しい純白の花びらが大きな特徴ですが、じつは白いタンポポも成長過程で黄色い色素が作られそれを分解する酵素があるために花びらが白くなります。花びらは表裏共にまっ白く形は細長い楕円形で、花びらには数本の筋と先端に細かな切れ込みがあります。とても小さい花ですが野原や土手の緑のなかでもくっきりと目立ち存在感があります。
花の中央部に黄色い花柱がある
白タンポポの中央部分から伸びているのは花柱で、花柱とは茎と花の付け根にある子房(果実になる部分)と、柱頭(花粉を受け取る部分)をつなげる役目をした管のことです。
②葉の特徴
黄色いタンポポと同じ葉の形をしている
白いタンポポの葉はよく見るタンポポと同じように平らで長く、途中はギザギザの形をしていて先端が尖っています。葉の幅は3~7cmで長さは15~20cmになり、太い主脈から羽状の葉が広がります。葉色は表が濃い緑色で裏は淡い緑色、冬が近づき枯れはじめると赤黒く変色していきます。
葉がロゼット(放射状)に広がるのは光合成のため
タンポポの葉が地表近くからロゼット(放射状)に広がり、新しく伸びてくる葉が古い葉と重ならないように成長するのはより多く日光を受けとって光合成をするためです。黄色いタンポポの葉は地表面を這うように成長しますが、白タンポポの葉は地表から立つように伸びていきます。
③種の特徴
黒褐色の小さな粒はタンポポの種ではなく実
ガクの中で育った白いタンポポの実は先端から極細の柄が伸びて綿毛のような冠毛をつけ、ガクが開くと茎を中心に冠毛が丸く広がっていきます。よく褐色の小さな粒全体を種と思いがちですがそれはまちがいでタンポポの種は実の中にあります。開ききった冠毛は風を受けてよく飛び、距離にして10kmも遠い場所へ種を運んで根付かせることがあります。
白いタンポポの実は完熟しても裂開(れっかい)しない
裂開(れっかい)とは熟した実の殻が裂けることで、白タンポポの実はとても細く小さいですが殻は固く完熟しても裂けません。白いタンポポの発芽率は数パーセントととても低く、そこからも白いタンポポが珍しいと言われる理由があります。
出典:写真AC