アレチノギクとは
アレチノギクは南アメリカ原産のキク科イズハハコ属の外来種で、明治中期に渡来し、昭和にかけて日本全土に野生化した帰化植物です。除草剤が効いているのか農耕地ではあまり見たことがなく、工事現場の隅っこや、アスファルト舗装された川沿い土手などでよく見られます。
アレチノギクの特徴
アレチノギクは晩夏から秋にかけて芽を出し、愛くるしい「ロゼット葉」で越冬する、とてもかわいい花です。夏になると直立した30〜40cmの茎に成長し、茎の側面から数本の枝が長く伸びます。全体に白灰色の毛が密生しているので、「白灰緑色」のような色になるのが特徴です。
アレチノギクの漢字「荒地野菊」の由来
これはその名もズバリ荒れ地に生息する野生化した菊のことを意味しています。植物が生息しづらい都会のど真ん中やコンクリートで埋め立てた場所でも、しっかり根付いて花を咲かせる、まさに雑草根性を持った植物なのです。
アレチノギクの分布
アレチノギクは四国・九州を含む本州や、北海道・沖縄を含む日本全土に分布している植物です。寒冷な北海道でも多数見ることができ、開花時期などは本州と変わりません。一方、温暖な沖縄に分布するアレチノギクは、ほぼ年中開花しているという情報もあります。
アレチノギクが少なくなった理由
アレチノギクは日本全土に分布しているものの、近年、同属のオオアレチノギクやヒメムカシヨモギに押され、とても少なくなりました。オオアレチノギクはヒメムカシヨモギとともに植物群落を作り多数生育するため、アレチノギクの勢力が衰えていったのでしょう。しかし現在、アレチノギクも少しずつ復活の兆しを見せ、一時よりもだいぶ見られるようになってきました。
アレチノギクの花
花は長さ5〜6mmほどのどっしりとした太い樽型で、キク科植物に多い頭状花序(とうじょうかじょ)です。舌状花(ぜつじょうか)は見えませんが、中心には黄色の筒状の花をたくさん見ることができます。主軸となる花が一番初めに開花し、その後に側面の枝の花が咲き出しますが、残念ながら咲かずして枯れることが多くなっています。
アレチノギクの開花時期
5月からちらほらと咲き始め、6月〜8月に数多く開花します。昨今の温暖化の影響か、3月末〜4月に花を咲かせている姿もよく見られるようになってきており、初夏の花から春の花のイメージがとても強くなってきています。
次のページでは、アレチノギクとの違いが難しい「オオアレチノギク」と「ヒメムカシヨモギ」について、ご紹介します。
アレチノギクとの違いが難しい、オオアレチノギクとヒメムカシヨモギ
オオアレチノギクとは
南アメリカ原産のキク科イズハハコ属の帰化植物で道端や荒地に生息します。アレチノギクよりも草丈が高く、大きいものは人の背丈を超える大型であることから「大荒地野菊」と名付けられました。開花時期はアレチノギクより遅く8月頃からちらほら咲き始め、9月〜10月に数多く開花します。
アレチノギクとオオアレチノギクの見分け方
■見分け方
アレチノギク | オオアレチノギク | |
花の色や形 | ・黄色い筒状花 ・オオアレチノギクに比べ見た目が大きい |
・白い筒状花 ・アレチノギクに比べ見た目が小さい |
葉の形 | ・下の葉は倒披針形でギザギザの鋸歯もある ・上の葉は線形で細くねじれている |
・線状倒披針形でギザギザの鋸歯がある ・両面、特に裏面に短毛が生える |
草丈 | 30〜50cm | 100〜200cm |
分布 | 北海道に生息する | 北海道に生息しない |
ヒメムカシヨモギとは
北アメリカ原産のキク科イズハハコ属の帰化植物で、ムカシヨモギに比べて頭花が小さいことから、「姫(=小さい)昔蓬」と名付けられました。明治時代の鉄道敷設とともに広がり「鉄道草」と呼ばれ親しまれたようです。アレチノギクよりも草丈が高く、大きいものは人の背丈を超えるほどに成長します。開花時期はオオアレチノギクと同じく8月頃から咲き始め、9月〜10月に多数開花します。
アレチノギクとヒメムカシヨモギの見分け方
■見分け方
アレチノギク | ヒメムカシヨモギ | |
花の色 | ・黄色い筒状花 | ・白い舌状花 |
葉の形 | ・下の葉は倒披針形でギザギザの鋸歯もある ・上の葉は線形で細くねじれている |
・葉は薄い ・縁にまばらな長毛とギザギザの鋸歯がある |
草丈 | 30〜50cm | 100〜200cm |
全体的な色 | 白灰緑色 | 緑灰色 |
まとめ
いかがでしたか。草丈の低いアレチノギクは、特徴でもある側枝を「長く」伸ばすことで、背の高い植物に負けないよう生き残りをかけています。繁殖力の強い群落植物に押されながらも負けじと頑張る「アレチノギクの生命の進化」を感じます。これからもオオアレチノギクやヒメムカシヨモギに押されることのないよう、その復活を見守りたいものです。
出典:写真AC