ノエンドウとはどんな植物?
ノエンドウ(野豌豆)はエンドウという名前がついていますが、ソラマメ属の植物です。ノエンドウにはカラスノエンドウ、スズメノエンドウ、カスマグサの三種類があります。空き地などに生え、雑草として扱われていますが、食べることもできます。三種の中で一番大きなカラスノエンドウは、古代オリエントでは農作物として育てられた歴史もあります。どれも毒性はなく、食用としても親しまれていました。
スズメノエンドウとは?
スズメノエンドウ(雀野豌豆:学名Vicia hirsua)はマメ科ソラマメ属のつる性の越年草です。スズメという名前は、カラスノエンドウより小型であるという意味でつけられました。原産国は日本です。本州から沖縄までの田畑や空地、乾燥した荒れ地などでよく見かけられます。4月~6月にかけて、小さくてかわいい薄い紫の花を咲かせます。
スズメノエンドウの特徴
スズメノエンドウは葉腋から伸びた柄の先に白っぽい紫色の花を4個つけます。また葉の先端はまっすぐに切り取られたようになっているのが特徴です。葉柄の上部の方には細い葉が、下部の方には太い葉が付いて、魚の骨を連想するような並び方をしています。先端は巻きひげのようになっており、周りの草に絡みつきながら成長します。さやには軟い毛があり、中に種子が2個ずつ入っているのが特徴です。
カラスノエンドウとは?
カラスノエンドウ(烏野豌豆:学名Vicia sativa subsp.nigra)はマメ科ソラマメ属のつる性の越年草です。オリエント地域の原産で、何千年も前には農作物として作られていました。日本にも渡って帰化した植物です。本州以西の野原や田畑などに生えて、現在は雑草として扱われています。花期は3月~6月です。カラスノエンドウという名前の由来は、熟したさやがカラスのように真っ黒な色になるからと言われています。
カラスノエンドウの特徴
葉腋に短い柄を出して紅紫の花を1~3個つけます。別名をヤハズエンドウといいます。葉の先がへこんでいて、矢筈(矢羽)のように見えるのが特徴です。葉は巻きひげに変化し、3つに分かれます。さやの中には種子が5~10個入っています。またノエンドウの中で、さやが上向きにつくのはカラスノエンドウだけです。
別名はピーピー豆?
豆果が熟すとさやも豆も真っ黒になります。パチンと聞こえるほどの音をたてて種をはじき出します。さやを口にあてて吹くと音が鳴り、ピーピー豆と呼ばれて親しまれています。子どもの頃、野原でそんな遊びをしませんでしたか?
なぜかアリが集まる!托葉に注目
カラスノエンドウにはなぜかアリがたくさん集まります。よく見ると、枝の根元部分に三角形の「托葉」と呼ばれる葉があり、そのあたりにたくさん集まっています。托葉には花外密線(花以外で蜜を出す場所)があり、甘い蜜に誘われてアリが集まってきているのです。ではなぜ托葉を行うのでしょうか。
何のために蜜を出すの?
花以外に蜜を出す場所があるなんて不思議ですが、その理由は、害虫対策なんです。植物の中には、虫に食べられないように毒性を持つものがあります。しかし、カラスノエンドウは毒性を持つ代わりにアリを呼び寄せます。なんとアリに害虫を追い払ってもらっているのだと考えられているのです。密線はカラスノエンドウのすごい繁殖力の秘密の一つで、ノエンドウの中で花外密線をもつのはカラスノエンドウだけです。
カスマグサとは?
カスマグサ(かす間草:学名Vicia terasperma)はマメ科ソラマメ属のつる性の越年草です。和名のカスマグサはカラスノエンドウとスズメノエンドウの間、つまり「カ」と「ス」の間の大きさの草であるという意味からつけられた名前です。本州以西の田畑や空き地に生えています。スズメノエンドウと同じような環境に生えますが、数はそれほど多くはありません。花期は4月~5月です。
カスマグサの特徴
カスマグサはスズメノエンドウに似ていますが、葉は少なく、丸みのある葉の先の方が尖っています。淡紅紫色の花が枝の先に1〜3個が少し離れて咲きます。先端は巻きひげになっており、巻きひげは1〜2つに分かれます。さやは無毛で、3〜6個の種子が入っています。
ノエンドウ三兄弟の見分け方
左からカラスノエンドウ、カスマグサ、スズメノエンドウのさや
花期 |
花の色 |
葉の形 |
さや |
種の数 |
|
スズメノエンドウ | 4月~6月 | 薄紫 | 先端がまっすぐ切れたように見える | 軟毛 下向きにつく |
2個 |
カスマグサ | 4月~5月 | 淡青紫 | 丸みがあるが、先は尖っている | 無毛 下向きにつく |
3~6個 |
カラスノエンドウ | 3月~6月 | 紅紫 | 矢羽根のようにへこんでいる | 熟すと黒くなる 上向きにつく |
5~10個 |
花言葉
スズメノエンドウの花言葉
- 「手を繋いで歩こう」小さな花が4つかわいらしく繋がって、野原に咲いている様子からきた花言葉です。
- 「望みは大きい」花は小さくてもぐんぐん野原に広がっていく元気な姿からきた花言葉です。
カラスノエンドウの花言葉
- 「小さな恋人たち」二輪並んで咲いている花がかわいらしい恋人たちのようです。
- 「喜びの訪れ」日当たりのよいところに増えていく様子が、春の訪れを喜んでいるように見えます。
カスマグサの花言葉
- 「手を繋いで歩こう」野原の中に2~3個ずつ咲く花が、仲良く手を繋いでいるように見えます。
- 「負けず嫌い」ほかの花が咲かない荒れ地にだって、元気に増えて咲いている様子からきたものです。
- 「輝く心」荒れ地や山の中に小さな淡紫色の花が咲いているのに、はっとさせられます。
ノエンドウを食べてみよう!
ノエンドウの仲間は、外に生えているものを採ってきて料理することができます。ここでは、いくつかの料理を紹介します。料理にはよくカラスノエンドウが使われますが、スズメノエンドウ、カスマグサも同じ調理法で食べられます。
カラスノエンドウ入りジャガイモのパンケーキ
ざく切りにしたジャガイモにチーズとノエンドウを入れて多めの油でじっくり焼きましょう。カリカリになるまで焼くと美味しいです。
カラスノエンドウ茶
日干しで乾燥させ、細かくしてフライパンで軽く煎ったら出来上がりです。胃もたれ、咳止め、解熱、利尿効果、整腸作用などの効能があるとされています。
カラスノエンドウの豆ごはん
さやから一つずつ豆を取り出して、普通の豆ごはんと同じように炊きます。お酒と昆布と塩で味を調えましょう。ぷちぷちした食感が楽しいです。スズメノエンドウでは、小さすぎて豆ごはんはちょっと難しいですね。
カラスノエンドウの天ぷら
ノエンドウは、柔らかい先の方5cm~10cmを使います。洗ったら水けをふき取って裏面だけに衣をつけます。熱した油に入れ、ふわっと浮いてきたら取り出します。
まとめ
スズメノエンドウ、カラスノエンドウ、カスマグサの違いがわかっていただけたでしょうか?学名や花言葉の意味は違っても、どれも毒性がなくおいしい植物です。三種のノエンドウを見かけたら近寄ってよく見てください。小さな花は地味ですが、よく見ると魅力的な形や繊細な色をしています。ノエンドウを摘んできたら調理して食卓に載せるのも季節感があっていいですよね。
出典:写真AC