クロユリ(黒百合)とは?
突然ですが、黒い花のユリを見たことはありますか?ユリと言えば、白い花と芳醇な香りで冠婚葬祭の場で使われるイメージをよく持たれています。しかし、神秘の花とも呼ばれるクロユリは、黒い花と悪臭が特徴です。今回は、そんなユリのイメージを覆すクロユリ(黒百合)について、特徴や花言葉、育て方や肥料・剪定などの管理のコツから上手な増やし方まで詳しくご紹介します。
クロユリの基本情報
分類 | ユリ科 バイモ属 |
学名 | Fritillaria camtschatcensis |
生態 | 多年草 球根植物 |
別名 | エゾクロユリ(蝦夷黒百合) |
変種 | ミヤマクロユリ(深山黒百合) |
英語名 | kamchatka lily |
原産地 | 礼文島 |
草丈 | 10~50cm |
花色 | 黒色、暗褐紫色 |
開花時期 | 6~8月 |
クロユリは、日本、ロシア、北アメリカなどの高山帯に分布しており、日本では北海道を中心に、中部地方より北側の寒い地域の一部にのみ生息します。本州に分布するクロユリの多くは、変種のミヤマクロユリです。クロユリは石川県の郷土の花に認定されており、白山のシンボルマークはクロユリがモチーフになっています。白山では、7月下旬~8月上旬頃がクロユリの開花時期です。
別名の由来
北海道によく分布することから、エゾクロユリと呼ばれるようになりました。英語名では別名「Chocolate Lily(チョコレートリリー)」とも呼ばれ、特徴的な花の色が名前の由来です。また、花から悪臭が出ることから、「skunk lily(スカンクユリ)」「outhouse lily(便所ユリ)」「irty diaper(汚いオムツ)」という英語の別名もあります。
白いユリと黒いユリの違い
ユリと聞いて思い浮かべる一般的な白いユリと今回ご紹介する黒いユリの違いは、花の色だけではありません。白いユリは、ユリ科リリウム属なのに対し、黒いユリはユリ科バイモ属という全く別の種類の植物です。また、白いユリは日本全国に分布していますが、黒いユリは中部地方よりも北側の寒い地域の、亜高山帯~高山帯にのみ分布しています。
クロユリの特徴
黒い花を咲かせるクロユリは、地面からまっすぐ伸びた茎とラッパのような花の形がユリによく似ています。しかしユリとはまったく別の種類の植物で、よく観察すると、花の形もユリとは異なっていることが分かります。クロユリの葉や花の特徴、さらにクロユリの変種ミヤマクロユリの特徴についてご説明します。
球根の特徴
クロユリの球根には変わった特徴があり、球根の表面に皮がなく、たくさんの鱗片が重なり合って集まった層のような形をしています。これは鱗茎と呼ばれ、クロユリの鱗片はもろく剥がれやすいのも特徴です。鱗茎の大きさはクロユリの栄養分の多さに直結し、ある程度鱗茎が大きく成長しないと花を咲かすことができません。
茎・葉の特徴
クロユリの茎は地面から垂直にまっすぐ伸び、50cmほどにまで成長します。葉には葉柄がなく、茎から直接3~5枚の輪を作るように、葉が数段生えるのが特徴です。肉厚の葉には表面に光沢があり、葉の形は細長い楕円形で縁は丸く、葉に平行するように葉脈が通っています。
花の特徴
クロユリは、2~3cmほどの比較的小さな花を咲かせます。花色は黒い色に見えますが、正確には濃い紫色です。6枚の花びらには淡い網目模様があり、中心の黄色い花粉がよく目立ちます。クロユリの花には、雄しべだけを持つ雄花と、雄しべと雌しべの両方を持つ両性花が存在するのが特徴です。クロユリは独特の悪臭によって、ハエを呼び寄せ、花粉を運ばせることで受粉を成功させます。
果実・種子の特徴
クロユリの果実は2cmほどの小さな蒴果(さくか)です。蒴果の果実には、成熟すると果実が乾燥して自然と割れる性質があり、クロユリの果実が成熟すると、中から羽をもった種子がたくさん出てきます。しかしクロユリの種子は発芽率があまり高くないため、種子での増やし方は難しいです。
ミヤマクロユリの特徴
ミヤマクロユリはクロユリに比べ、小さく控えめな印象の特徴があります。ミヤマクロユリは成長しても10~20cmほどです。花の大きさはクロユリよりもやや小さく、花の色は比較的薄い褐紫色で、クロユリ独特の網目模様がよく目立っています。また、クロユリが1つの株に花を3~7輪ほど咲かせるのに対し、ミヤマクロユリは1つの株に1~2輪の花しか咲かせません。
出典:BOTANICA