ヒルザキツキミソウってどんな花?
もともとは観賞用として輸入されましたが、今では野生化し、日本全国の土手沿いや道端に生息して咲いています。栽培用として、種や苗が園芸店などで購入できます。
基本情報
目・科・属 | フトモモ目・アカバナ科・マツヨイグサ属 |
学名 | Oenothera speciose(オエノテラ スぺキオサ) |
和名 | ヒルザキツキミソウ |
洋名 | Pinkladies Showy evening primrose |
開花時期 | 5月~7月 |
ボタニ子
ヒルザキツキミソウの特徴
特徴①花
花径4~5センチの花を咲かせます。花びらの数は4枚で、つけ根のところは筒状になります。雄しべは8本で、雌しべの柱頭は十字状に裂けています。
特徴②葉
葉の特徴は先がとがり、平たく細長い形をしていて、互い違いに生え、縁には波状のぎざぎざがあります。
ヒルザキツキミソウの育て方
育て方①栽培カレンダー
育て方②栽培環境
ヒルザキツキミソウは、日光を好みます。日当たりと水はけのよい環境であれば、元気に育ちます。初心者でも簡単に育てられる植物ですが、日光が不足すると花付きが悪くなるため、日陰になっていないかの確認は怠らないように気をつけましょう。
育て方③種まき
ヒルザキツキミソウの種まきは、春まきと秋まきの2回あります。ただし、春にまいたものは翌年に花を咲かせます。野生化するほど丈夫なため、種まきに神経質になる必要はありません。しかし、種が少ない場合や発芽に自信がないときは、育苗ポットを使用するのもよい方法です。ポットに2~3粒まいたら、2~3mm程度、土をかぶせましょう。本葉が出たら、庭や鉢に植え付けます。
ヒルザキツキミソウは雑草扱いされますが、種や苗は売っているの?
野生化するため雑草のイメージが強いヒルザキツキミソウですが、本来は観賞用の花です。種も販売されています。種だけでなく、植え付け適期になると苗も販売されますよ。園芸店にないときは、通販サイトで探してみましょう。
育て方③用土
丈夫に育てたいときは、植え付け前に肥料を混ぜ込んでおきましょう。庭植えの場合は、腐葉土をすき込んでおきます。鉢植えの場合は、赤玉土7:腐葉土3の割合で土づくりをしましょう。
育て方④肥料
肥料は春に緩効性肥料を控えめに施すだけで充分です。過湿を嫌うため、鉢土の表面が乾いたらたっぷり水をやり、花が終わってからも水やりを続けましょう。
育て方⑤剪定時期
プランターからはみ出た葉を切り添えるくらいの剪定で充分です。
ヒルザキツキミソウに似ている植物
ヒルザキツキミソウに似た植物は、同属種のツキミソウ、マツヨイグサです。
ツキミソウ
一年草(二年草)で、花は純白です。(時間が経つとピンクに変化)名前の通り、ツキミソウは夕方から開き始め、朝にはしぼみます。
生息地域と特徴
ツキミソウ(O. tetraptera)は北米テキサスからメキシコ原産で、低地のやや乾燥した草原に生育します。生育環境によって一・二年草、または寿命の短い多年草となります。根元から柔らかい茎を1~数本出し、茎の上部の葉の脇に直径4~5cmの白い花を咲かせます。
競争力に劣るため、あまり野生化はしない
夜咲きの一日花で、夕方から白い花弁を開き始め、朝にはしぼんで花弁がピンク色になります。葉は柔らかく不規則に切れ込みます。熟した果実は水にぬれると開き、周囲に細かなタネを飛び散らします。小型で成長が緩やかなため競争力に劣り、あまり野生化することはありません。
マツヨイグサとツキミソウの違い
マツヨイグサとオオマツヨイグサは多年草で花は黄色です。(後に赤く変化)富士山麓に群生しています。一方、ツキミソウは純白です。
太宰治とツキミソウ、本当はオオマツヨイグサ?
最後に太宰治の『富岳百景』に出てくるエピソードをお伝えしましょう。『富嶽百景』は、太宰治が29歳のときの私小説ですが、行き詰っていた彼は師である井伏鱒二を頼って、甲州の御坂峠にある天下茶屋を訪ねます。そして、こう語りました。
「三七七八米の富士の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがず、なんと言うのか、金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすくっと立っていたあの月見草はよかった。富士には、月見草がよく似合う」
太宰治が引き合いに出したツキミソウはオオマツヨイグサではないかと言われています。黄色い花を付け、富士五湖の周辺で今でもよく見かけます。
まとめ
少し混乱してきましたね。まとめてみましょう。ツキミソウは江戸末期に日本に入って来ましたが、風土に合わず今では見かけません。名前の通り、夜だけ開く真っ白の幻の花です。
同じく夜だけ咲く同属のマツヨイグサやオオマツヨイグサは黄色です。オオマツヨイグサの方が、葉が広く、背も高い植物で、太宰治の表現を借りるなら「すくっと立って」います。
では、今回のテーマ「ヒルザキツキミソウ」は?ヒルザキツキミソウは名前のごとく、昼間咲きます。モモイロヒルザキツキミソウ(長い名前ですね)もそうですが、両方とも園芸品種として最近登場しました。画像を載せておきましょう。
9月2日の誕生花で、花言葉は「物言わぬ恋」「自由な心」「奥深い愛情」だよ。