ミヤマリンドウとは
夏の間、高い山の上にはさまざまな高山植物の花が開きます。そのなかに紛れて、小さな花をつけるのがミヤマリンドウです。青紫や白の可憐な花を咲かせる姿が登山家に人気の植物ですが、花屋さんなどで見かけることはまずありません。山登りをしない人には、あまりなじみのない植物といえるでしょう。ここでは、ミヤマリンドウの基本情報を見ていきましょう。
ミヤマリンドウの基本情報
分類 | リンドウ科 リンドウ属 |
学名 | Gentiana nipponica |
生活型 | 多年草 |
草丈 | 3~15cm |
花の色 | 青紫、白 |
開花時期 | 7~9月 |
ミヤマリンドウはリンドウ科の多年草で、日本の固有種です。湿地帯などの湿った環境を好み、茎の基部が地面を這うように広がり、立ち上がった茎の先端に花を咲かせます。花が開くのは日当たりのよいときだけで、曇りの日や朝晩は閉じた姿しか見られません。花の色は鮮やかな青紫色が基本ですが、白い花を咲かせるものもあります。
ミヤマリンドウの特徴
ミヤマリンドウの花はとても小さく、直径が1.5cmほどしかありません。花冠は5枚に分かれていて、その間を埋めるように副片(ふくへん)と呼ばれる小さな花びらのようなものがあります。独立した花びらに見えますが、正確には花冠が全部で10枚に分かれた状態です。この副片の先端には細かな切れ込みが入っています。また花の中央部分には、ぼんやりとした斑点模様が見られます。葉はやや厚みと光沢のある楕円形で、2枚が互いに向かい合って出る、いわゆる対生です。
ミヤマリンドウに似た花
タテヤマリンドウ
ミヤマリンドウにとてもよく似ているのがタテヤマリンドウという花です。同じリンドウ科の高山植物で、5~7月頃に淡い青紫色の花を咲かせますが、ミヤマリンドウと同じく白い花を咲かせるものもあります。見た目がそっくりなうえに生育地や開花時期が重なっているため、一見しただけではなかなか見分けがつきません。見分けるポイントはいくつかありますが、ここでは特に見分けやすい二つのポイントに絞ってご紹介します。
見分け方①
まず一つめのポイントは、花の中央部分の斑点模様です。ミヤマリンドウの斑点は、ぼんやりとしているかほとんど見えない程度ですが、タテヤマリンドウの斑点はとてもくっきりしているのがわかります。
見分け方②
ふたつ目のポイントは、茎部分の葉の付き方です。ミヤマリンドウの葉は茎から横向きに広がっています。一方タテヤマリンドウの葉は茎に沿って包みこむように閉じているため、比較的簡単に見分けられます。
ミヤマリンドウの分布
ミヤマリンドウは本州の中部地方から北海道にかけての亜高山帯~高山帯に分布しています。本州では立山や尾瀬、北海道では暑寒別岳、夕張山地、大雪山系、日高山地などが生育地として知られています。いずれも自然環境が厳しい地域です。観察に訪れる際は入念な下調べをして万全の装備で向かいましょう。
ミヤマリンドウの開花時期
ミヤマリンドウが花を咲かせるのは、だいたい7月~9月の夏の時期ですが、生育地やその年の気候によってズレが生じます。また日当たりが悪くなるとすぐに花が閉じてしまうため、きれいに開いた花に出会うためにはタイミングが重要です。各地の観光施設などが発信する開花情報や、現地の天気予報をこまめにチェックしましょう。
まとめ
ミヤマリンドウは高山植物なので、私たちがふだん目にする機会はなかなかありません。決して派手な花ではありませんが、よく観察してみると小さいながらもとても魅力的な植物だと気付くでしょう。もし登山に出かける機会があるなら、雄大な景色だけでなく、足もとの小さな花にも目を凝らしてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC