ナギナタガヤとは?草生栽培に使われる草の特徴や利用法をご紹介!

ナギナタガヤとは?草生栽培に使われる草の特徴や利用法をご紹介!

ナギナタガヤというイネ科雑草をご存じですか?カヤと聞くとあまり役にたたない印象がありますが、このナギナタガヤはミカンなどの果樹園で非常に役に立っています。この記事では、そんなナギナタガヤの特徴や利用方法について解説します。

記事の目次

  1. 1.ナギナタガヤとは?
  2. 2.ナギナタガヤの特徴
  3. 3.草生栽培の概要
  4. 4.草生栽培のメリット・デメリット
  5. 5.ナギナタガヤの育て方
  6. 6.まとめ

草生栽培のメリット・デメリット

メリット①:土壌流亡の防止

あめ
Photo byPublicDomainPictures

草生栽培には、草が地表を覆うことで、雨で土が流れるのを防ぐというメリットがあります。傾斜のある場所に作物を栽培していると、降雨によって土が流されてしまうことがあり、せっかく肥やした土が無駄になってしまいます。表土は最も肥沃な部分であり、失ってしまうと回復させるのに長い時間がかかってしまうため、根で土をしっかりつかむ草生栽培によって表土を保持しましょう。

土壌流亡防止のための草生栽培であれば、畝の根元にだけ播種することで取り組めるよ。

メリット②:除草作業の負担軽減

草刈り
Photo byRitaE

草生栽培には草刈りする時間を大幅に減らすことができるのもメリットです。作物を栽培する畑に雑草が生えていると、土の栄養が雑草に取られてしまったり、病気や害虫の発生要因となったりと問題が発生します。そのため、樹園地などの管理では草刈り作業や除草剤散布による雑草駆除が必要です。草生栽培に取組むことで、有害化しやすい雑草の生育を抑えることができるため、除草剤の散布による除草作業を少なくできます。

ナギナタガヤにおける除草作業の省力化

ナギナタガヤを利用した草生栽培は手間がかかりません。ナギナタガヤ自体の刈り取りに気を回さなくてもよいことと、倒伏・枯死によるわらカーペットが雑草の発芽を抑制させることによって、除草剤散布と草刈り作業の両方を省くことができます。

メリット③:有機物の供給

たい肥
Photo byAntranias

草生栽培には、圃場内に有機物を供給するというメリットもあります。野菜や果物栽培では地力維持のために植物の枯れたものや、家畜由来の糞尿などのたい肥の投入が欠かせません。これらを購入して散布しようとすると、重たい肥料を運んで園内をまわるためとても大変です。しかし、草生栽培では有機物を園内で生産できるので、簡単に土に供給することができ、良質な土づくりが図れます。

ナギナタガヤは10aあたりで800kgもの有機物になり、倒れて枯れたあとも分解しやすいからとても便利だよ。

デメリット①:栄養分が取られる

蜜柑
Photo byHeungSoon

草生栽培は清耕栽培と比較して、樹木の周りに草が生えるため、本来ならば樹にいくはずの栄養が草にとられてしまうことがデメリットになります。雑草による草生栽培では、草の種類が優先する時期がまとまらず断続的に生長するため、肥料が長期間吸われてしまい小さい果実や甘くない果実ができることがあります。

肥料の効きすぎもよくありません

有機物の供給も、限度を超えるとデメリットになります。ライムギやナギナタガヤのような単一草種を高密度に播種した草生栽培では、多量の有機物が投入されます。この場合、遅効性の栄養分が思わぬ時期に供給されてしまうことがあり、必要以上に樹が伸びてしまいます。肥料でしっかりコントロールしたい場合は、播種量に気をつけて草生栽培に取り組んでください。

デメリット②:作業性の悪化

ナギナタガヤの厚いわらのマットのような状態も、デメリットにつながることがあります。わらのマットは濡れると非常に滑りやすくなり、急傾斜地にてこの上を歩行するのは大変危険です。また、5月ごろはナギナタガヤも倒れておらず叢生した状態だと歩きづらく作業性が悪くなります。こうしたデメリットを理解して播種量を調整することが重要です。

ナギナタガヤの育て方

これまで樹園地における草生栽培の効果について解説してきましたが、ここからは、特に除草作業の省力化が図られ導入コストも安いナギナタガヤの草生栽培方法について紹介します。

種の選び方

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ナギナタガヤの種は種苗会社から市販されているため、簡単に手に入れることができます。ただし、出穂や倒伏が早い「早生系」と遅い「晩生系」の2系統があることに注意してください。「早生系」は茎が硬めで芒が長く、倒伏時期が4月末なのに対し、「晩生系」は茎がやや柔めで芒が短く倒伏時期は5月末になります。「早生系」は倒伏が揃わず段階的に倒れていくのに対して、「晩生系」は6月初旬には揃うため、夏に生えてくる雑草を抑えたい場合は「晩生系」がおすすめです。

導入方法

  • 播種量
種子の量は10aあたり2~3kgの量をまきます。
  • 播種前の準備
種をまく前に雑草を抜き取ったり、除草剤で枯らしておく必要があります。は種時期は雨降り前か、降った後にすると種子が土に充分接触し発芽率があがります。
  • 注意点
全面には種する場合でも、樹の根本にはナギナタガヤが生えないよう注意が必要です。また、傾斜があるところは滑りやすくなるため、は種量を調整してください。

2年目の管理方法

ナギナタガヤは、夏のあいだに種を落として次の年に生えるため、2年目は種をまく必要がほとんどありません。種子代がかからないため導入コストが安く抑えられ、2年目の種まきは発芽のムラがある部分にだけ実施すれば大丈夫です。ナギナタガヤからの自然播種がうまくいけば、経済的にも大きな効果を得ることができます。

まとめ

もともと牧草として日本へ導入されたナギナタガヤですが、果樹園の草刈り作業の軽減のために初めて利用をした方は素晴らしい着眼点だと思われます。ナギナタガヤの草生栽培を初めておこなったのは愛媛県のみかん生産者であり、除草剤を少しでも使わなくてすむ方法を考えた末に見つけたそうです。現状をよりよくするために、身近な雑草で解決してみるという発想は素晴らしく、私たちの周りの雑草も考え方を変えれば思わぬ使い方が見つかるかもしれませんね。

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ライター

dodon

農業普及指導員経験者。得意分野は農畜連携と牧草生産。草と農業者とのたたかいは有史以来おこなわれております。

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