柿渋の使い方
柿渋の使い方①木造建築の塗料として
柿渋が建材の塗料として広く使われるようになったのは江戸時代といわれています。柿渋に含まれるタンニンには抗菌・防虫作用があり木材の腐食や虫食いを防ぐ効果があります。塗り重ねた柿渋が乾燥すると塗装面がかたくなるため虫が侵入できず、さらに防虫効果が高まります。耐水性もあるため水回りや屋外でも使用されます。シックハウス症候群の原因となる化学物質を使用していないことから、近年注目が高まっています。
建材に使用したら臭うのでは?
先に柿渋には独特な臭気があることをご紹介しました。建材に使ってしまうと臭うのでは、と心配される方もいるでしょう。しかし、柿渋を塗装後1~2週間でにおいは消えるそうです。また、近年はにおいのない無臭柿渋も開発されており、無臭柿渋を使用すれば心配はまったくありません。
柿渋の使い方②紙の補強
和紙を貼り合わせ、柿渋を塗って作った厚紙を渋紙といいます。強度があり、耐水性もあるので包装紙や敷物、雨よけの衣類などに使われてきました。写真は型染用の型です。透かし彫りの図柄を布地に重ね染料を塗ることで柄を転写します。渋紙はカッターなどで加工がしやすく、繊細な模様を入れることができます。薄く、丈夫で耐水性のある渋紙は染型によく適しているのです。型染以外にも、ランプシェードなどインテリアとしての利用も人気が出ているようです。
一閑張にも
一閑張(いっかんばり)とは、竹で編んだカゴなどを骨組みに和紙を貼り重ねて成形し、渋柿や漆を塗り重ねて補強・防水をする伝統工芸です。かつては食器や笠などで使用されてきました。近年ではその風合いを生かしたバッグが人気です。
柿渋の使い方③布地の染料として
柿渋は古くは布地を丈夫にしたり、虫食いを防いだりする目的で染料に使用されてきました。はじめに一度染めるだけでなく、使って繊維がゆるんだ衣類を再度染めることで丈夫さを保ち、長持ちさせるのだそうです。柿渋染めの布地は独特のシワ感が生まれます。その風合いと優しい色が好まれ洋服やバッグ、ストールなど多岐にわたり使用されています。
柿渋の使い方④柿渋せっけん
せっけんに柿渋を配合したものが販売されています。柿タンニンの消臭効果で加齢臭などの体臭や汗のにおいに効果があるとされています。普段使っているせっけんを柿渋せっけんに替えるだけでにおいケアができるのでお手軽です。直接肌に触れるものなので、天然成分の柿渋は安心して使用できるデオドラント用品です。せっけんの他にもシャンプーやサプリメントもあります。
柿渋の使い方⑤清酒の清澄剤として
日本酒は麹に含まれる酵素タンパクが変化して白くぼんやり濁ってしまうことがあります。清酒は透明でなくてはなりません。そこで柿タンニンのタンパク質と結合する性質を利用します。清酒を瓶詰めする前に柿渋を入れ、濁りのもととなる酵素タンパクと結合させます。結合したものは澱となって沈殿するので、その澱を除いたものが清酒として販売されます。
次のページでは、柿渋染めの方法や柿渋の塗り方を解説します。