クレマチスの概要
つる性植物の女王
クレマチスは、古くからガーデニングに欠かせない植物として親しまれてきたつる性植物です。特にイギリスでは国花でもあるバラのパートナープランツとして愛され、品種改良が盛んに行われてきました。そうして生まれた園芸品種は2000種類をこえると言われています。ちなみに、その品種改良の元となったのは、日本の風車(カザグルマ)や中国の鉄線(テッセン)などの原種です。
ガーデニングの修景用植物として長く愛されてきたことから「つる性植物の女王」とも呼ばれているよ。
原種の種類も豊富
上記で少し触れたように、クレマチスはガーデニングプランツとしての歴史が長いため、園芸品種の種類がとても多い植物です。原種の数も多く、300種類はあると言われています。そのうち日本に自生している原種は、風車を含め約25種類です。ちなみに中国の原種・鉄線が日本に渡来したのは16世紀以前と推測されています。そして江戸時代に入ると、風車や鉄線を元にした園芸品種がいくつか作られました。
桃山時代の書物に鉄線についての記録があります。そのことから、少なくとも16世紀には日本に渡来していたものと推測されています。
19世紀、ドイツの医師・植物学者のシーボルトがヨーロッパに日本で収集した多くの植物標本を持ち帰ったけど、その中には風車と鉄線もあったんだよ。
名前の由来・意味
クレマチスという名前の由来は、「つる(蔓)」を意味するギリシャ語「klema」です。中国の原種名で、日本では大輪種全般の別名としても使用されている鉄線は、つるの丈夫さが鉄でできた線を思わせることに由来しています。日本の原種名である風車は、クレマチスの大きな花が風車のように見えることが由来です。
英名の由来・意味
英語の別名として「Traveller's joy」があります。意味は「旅人の楽しみ」です。これはヨーロッパの風習で、旅人を泊める宿屋の玄関にクレマチスを植えていたことに由来しています。
クレマチスの特徴
地域で楽しみ方が違う
大輪の原種がある日本や中国では、大きな花が映えるように鉢植え仕立てて栽培・観賞するのが一般的な楽しみ方でした。反対に小輪の原種や交配種が多かったヨーロッパでは、主役の花を引き立てる修景用植物として楽しむ方向に進みました。特にイギリスではバラと組み合わせて、オベリスクやアーチに仕立てたり、壁面に誘引したりする手法がよく用いられています。
バラとクレマチスを組み合わせたイングリッシュガーデンは、日本でも人気ですよ。
青や紫といった寒色系の花色が多いクレマチスは、寒色系の花色が少ないバラと相性がいいんだよ。
品種によって咲き方や開花時期が異なる
クレマチスは種類や品種が非常に豊富な植物です。そのため性質や開花時期などが、種類や品種によって大きく異なります。性質別に3つの品種群に分けられているので、クレマチスを購入する際はどの品種群に属するのか、きちんと確認しましょう。
- 旧枝咲き:旧枝、つまり前年に伸びた古い枝に花芽がつき、花を咲かせる。基本的に一季咲きの品種群。代表的な系統はモンタナ系、アーマンディー系など。
- 新枝咲き:旧枝咲きとは逆のタイプで、今年から伸びた新しい枝にしか花芽をつけない。適切な剪定作業を行えば、年3回開花する品種群。代表的な系統として、ビチセラ系、ヴィオルナ系、インテグリフォリア系があげられる。
- 新旧両枝咲き:旧枝咲き・新枝咲きの両方の性質を併せ持つ。どんな枝にも花芽をつける。年に数度花をつける品種や、四季咲き性の品種が多い。代表的な系統は遅咲き大輪系、フロリダ系、アトラゲネ系など。
クレマチスの基本データ
学名 | Clematis |
科名 | キンポウゲ科 |
属名 | クレマチス属(センニンソウ属) |
原産地 | 日本、中国、ヨーロッパ、北アメリカなど北半球の各地 |
草丈・樹高 | 20cm~3m以上(つるの長さ) |
花色 | 赤、白、ピンク、黄、紫、青、茶、黒、複色 |
開花時期 | 5月~10月(種類・品種によって異なる) |
冬に咲く種類・品種もある
クレマチスは種類・品種によって、特徴や性質がかなり異なります。この表では開花時期を「5月~10月」としていますが、実際は下記で紹介するシルホサ系やアンスンエンシスのように、冬に咲く種類・品種もあります。購入する際には、欲しい種類・品種の特徴を事前にしっかり確認しておきましょう。
出典:BOTANICA