オオスカシバとは?
オオスカシバは、北海道を除く日本各地に分布する昆虫の一種です。成虫は緑・黄・赤のカラフルな色をしており、ハチのような羽音をたてながら花の蜜を吸って過ごしています。蛾のような見た目のオオスカシバですが、蛾の仲間ではありません。しかも近年は成虫だけでなく幼虫も「動きがかわいい」と人気です。
基本情報
分類 | スズメガ科ホウジャク亜科 |
主な分布域 | 日本全国(北海道を除く)、台湾、中国、インド |
成虫出現時期 | 6~10月 |
幼虫の特徴
体の大きさ | 平均50mm |
体の色 | 黄緑色の下地/黒・オレンジの斑点/縦に線 |
身体的特徴 | おしりに角がある |
好きなエサ | クチナシの葉 |
オオスカシバの幼虫は、成長期間によって体に黒い斑点模様が現れます。色だけに注目すると毛虫にも見えますが、オオスカシバの幼虫には毛がありません。また体の先端に角があるのも幼虫の特徴で、角はおしり側についています。クチナシの葉をエサにするため、卵はクチナシの葉に産み付けられます。
成虫の特徴
体の大きさ | 平均60mm |
体の色 | 頭・胸が黄緑/腹は赤・黒・黄/羽はふち以外は半透明 |
身体的特徴 | 毛でおおわれている/約2cmの口吻/大きな目 |
好きなエサ | 花の蜜 |
オオスカシバの成虫は、体全体を毛が覆っているのが特徴です。体の色もカラフルになり、中でも腹部の赤や黄・黒い模様が目立ちます。羽もオオスカシバの特徴で、全体は半透明ですが縁だけは黒いです。コンパクトな大きさの羽を小刻みに動かして飛ぶため、羽音が少しうるさいです。
蛾のような鱗粉がない
見る角度によっては蛾にも似ているオオスカシバですが、羽には蛾の特徴の鱗粉がありません。蛾が苦手な人の中には「羽に触ったときに手につく鱗粉も嫌い」という人が多いですが、オオスカシバは蛾の仲間ではないため、羽を触っても鱗粉はつきません。
天敵
オオスカシバの主な天敵は、鳥と昆虫です。黒い斑点やカラフルな模様が目立つため食べられることもありますが、オオスカシバのカラフルな体色は自然界における危険色です。そのため危険回避のための攻撃が、オオスカシバの致命傷になることがあります。
オオスカシバが人気の理由
一見すると蛾にも見えるオオスカシバですが、不思議なことに蛾が嫌いな人でも「オオスカシバは触れる」ということがあります。幼虫・蛹・成虫によって見た目や特徴に違いはありますが、どの成長段階のオオスカシバにもファンがいます。そこで近年飼育がブームになっているオオスカシバの人気の理由を探ってみましょう。
動きがキュート
オオスカシバの幼虫は、蛾とは違い動き方がかわいいです。飼育者の口コミでも「エサを食べてる顔がキュート」「もこもこした感じがかわいい」などのコメントが目立ちます。幼虫は飛べないため小さい子どもに人気ですが、大人には丸い目をした成虫のほうが人気が高いです。
半透明の羽が美しい
オオスカシバの羽は半透明で美しいということも人気の理由です。成虫には4枚の羽がついていますが、羽に蛾のような鱗粉がなく、光の加減で羽が透けることもあります。さらにオオスカシバは日中に行動するため、太陽光の影響でさまざまな色に見えることも魅力の1つです。
観察しやすい
オオスカシバは昼間に行動するため、観察しやすい点も人気の理由です。オオスカシバは天敵が多いのに目立つ色をしているため、夜行性のほうが安全ですが、昼行性で日中に行動します。この特性のおかげで子どもでも観察しやすいところも人気の理由です。
毒がないから子どもがいても安心
オオスカシバは幼虫・成虫ともに害がないため、子どもがいても一緒に飼育できます。駆除されることもある昆虫のため「毒があるのでは?」と心配する声もありますが、体に触れても毒はありません。毒がないことを知って子どもと飼育を始める家庭もあります。
オオスカシバの育て方①孵化~幼虫~羽化まで
オオスカシバは「卵→幼虫→蛹→成虫」の順に成長します。飼育はどのタイミングからでも可能ですが、未成熟なほど育てやすいです。そこでオオスカシバを育てるために知っておきたい成長過程を説明します。
①卵
オオスカシバはほかの昆虫と同じく、卵から孵化します。産卵時期は6~10月で、夏に孵化すると年内に羽化、秋に孵化すると翌年に羽化します。卵は1mm前後で緑色です。幼虫のエサとなる葉の裏側に産み付けられます。大卵の色は葉と同じ色をしているため、天敵に狙われにくいです。
発見は難しいが育て方は難しくない
オオスカシバは成長していくほど育てにくくなるため、卵の段階なら育て方も難しくありません。ただしオオスカシバの卵は、葉に同化した状態で産み付けられています。さらに大きさもわずか1mmで、育て方よりも卵を見つけることのほうが難しいかもしれません。
②幼虫
孵化したばかりのオオスカシバの幼虫は、体全体が黄緑色です。成長していくと少しずつ体に模様が現れ始め、体長50mm前後まで成長する頃には、体に黒とオレンジの斑点が等間隔に現れます。ただし大きくなっても幼虫の体には毛が生えないため、毛虫と見分けるときには毛が生えているかに注目するのがポイントです。
エサの確保が大変
オオスカシバの育て方では、クチナシの葉の確保が大変です。孵化してから蛹になるまでの期間、オオスカシバの幼虫は大量のクチナシの葉を食べます。卵から飼育する場合も、飼育箱にはクチナシの葉を入れておくことが必要です。また大きさにあわせて食べる量も増えるため、エサ切れを起こさないようにすることが重要です。
③蛹
食欲旺盛なオオスカシバの幼虫が急にエサを食べなくると、蛹(さなぎ)に成長する合図です。オオスカシバは土の中にもぐって蛹になるため、大好きなクチナシの葉も食べなくなります。ちなみに土にもぐる直前のオオスカシバの体の色は黄緑ですが、蛹になると赤黒い色になります。
蛹の間もこまめな水分補給が重要
オオスカシバは土の中にもぐって蛹になりますが、蛹の期間も乾燥を防ぐために定期的に水分を与えるのが育て方のポイントです。蛹の状態のオオスカシバは直接水を飲めませんが、飼育箱や土が乾燥すると干からびてしまうため注意しましょう。
④成虫
オオスカシバの蛹が羽化するタイミングは、孵化した時期によって変わります。産卵時期が早ければその年の秋には羽化しますが、産卵時期のピークを過ぎた場合、その年には羽化しません。この場合は土の中で冬越しし、暖かくなった翌年の春頃に羽化します。
蛹のまま冬越しする場合も水分補給は重要
蛹の状態で冬越しする場合も飼育箱が乾燥しすぎないように、霧吹きなどで水分補給をしましょう。特に冬の期間はエアコンなどの暖房器具を使用するため、部屋の中が乾燥しやすくなります。「冬は乾燥する季節だから」といって過剰に水やりする必要はありませんが、土の表面が乾燥する前には水分補給をしましょう。