木酢液の概要
木酢液は、木や竹の炭を作るときにできる副産物です。木炭を作るときに出た煙を冷やすとできる液体で、燻製のような香りがします。作り方や材料によっては有害な物質が含まれることがあるため、原液のままでは使用できません。醸造やろ過など専門の蒸留が必要です。市販の木酢液は約90%が200種類以上の有機物で、アルコールが約5%、そのほかにエステルやフェノールなどが入っています。
ボタニ子
良質な木酢液を使う
木酢液は園芸店やホームセンター、インターネットサイトなどで気軽に購入できる商品です。濃度を変えることで土壌改善や害虫対策に効果があります。値段も幅が広く、容量にもよりますが100円台から購入できます。しかし、品質や成分にばらつきがあるのも事実で、よい木酢液を安く販売している場合もありますが、木酢液認証協議会認証のものが安心でおすすめです。
よい木酢液とは
- しっかり醸造、ろ過、蒸留してあるもの
- 透明度が高く色も淡い(麦茶くらい)
- 入れ物の底に沈殿物がない
- 安すぎない
木酢液アブラムシ予防に効果がある?
木酢液がアブラムシ予防に効果がある仕組み
木酢液は殺虫剤ではないため、木酢液はアブラムシに直接1回だけスプレーしても効かないものです。木酢液は木を炭にする過程で生成されることからいぶされた香りが特徴で、アブラムシはこの香りが苦手なため、家庭菜園に散布すると忌避剤の役割をします。木酢液は原液に強力な殺菌力がありますが、そのまま使用すると植物にもダメージを与えてしまいます。
ボタニ子
アブラムシを発見してスプレーしても、速効性はないってことね。まいてすぐアブラムシが駆除できるわけじゃないわ。
木酢液を使ったアブラムシ予防対策
木酢液は殺虫剤としては効かないですが、アブラムシを予防するだけでなく、植物全体が元気に育つような環境をつくる効果があります。木酢液の原液は強酸性のため、そのままでの使用はやめましょう。規定の希釈をすればオクラやきゅうりなどの野菜の苗から、バラやほかの草花にも使えます。
ボタニ子
商品によって違うけれど、容器の裏や使用方法を記載したメモがついているわ。
ボタ爺
その注意書きにそって濃度を変えて、使用するのがおすすめだよ。きちんと使用方法を守ろう。
予防対策①土壌改善でアブラムシに強い植物に
土壌の消毒をする
木酢液の原液に水を足して20倍~30倍の濃度に薄め、ナスやトマト、オクラやきゅうりなど野菜を育てたい家庭菜園の土壌にまきます。アブラムシがつきやすいバラにも効果的です。木酢液をまき1週間~10日で土壌消毒できますが、マルチをかぶせると3日~4日ですみます。あとは、マルチをはずして自然の力で強酸性が緩むのを待ち、2週間~1カ月たってから植え付けるのがよいでしょう。
ボタニ子
濃度の高い木酢液を直接土にかけると、土壌菌や害虫、雑草の種だけでなく微生物などがみんな一度死んでしまうの。
ボタ爺
木酢液にはたくさんの有機物が入っているんだ。リセットされても残っている有機酸によい微生物が発生するから大丈夫だよ。
土壌の有効微生物を増やす
植物の根の周辺には、有効微生物(植物にとってよい微生物)がいて根から糖分を吸収して生きています。植物の糖分とともに有効微生物のエサになるのが、木酢液です。植物の根から糖分をもらう代わりに、植物が直接土壌から吸収できない栄養素を微生物が吸収できる状態に分解します。有効微生物のおかげで植物は栄養やミネラルを十分に吸収し元気に育ち、病害虫に強くなります。
ボタニ子
この場合は、木酢液の原液の濃度を1000倍に薄めて使ってね。きちんと量るのがコツよ。
植物の免疫力を強くする
植物の免疫力をアップして病害虫に負けないようにするために、木酢液は効果的です。木酢液のおもな成分は酢酸です。酢酸は植物の酸化を防ぐ働きをします。植物が病害虫にかかりやすくなる原因はいろいろありますが、植物が弱って酸化することも要因の一つです。木酢液を与えると植物の酸化を防ぎ、免疫力をアップするのも特徴です。
ボタニ子
木酢液に含まれる有機酸は植物の葉の表面の糖分と結合して、クチクラ層を強くする働きをするのよ。
ボタ爺
クチクラ層が強くなれば、ちょっとやそっとのアブラムシに負けない気がしてきたの。木酢液で免疫力アップできるとよいな。
クチクラ層とは?
植物の葉の表面をコーティングしている層で、水分の過度な蒸発を防いだりよけいな水から葉自体を守ったりする働きをする。
肥料過多も植物を弱らせる
- 植物が病害虫に襲われる原因の一つに肥料過多がある
- 木酢液は過多になっている肥料をタンパク質とアミノ酸に分解する
予防対策②アブラムシにかける濃度を変える
木酢液は強酸性のため、濃い濃度のまま植物に与えると植物が枯れる場合があります。アブラムシを発見して木酢液スプレー対策する場合は、濃度に気をつけて原液を希釈しましょう。原液のままだととても強い殺菌作用がありますが、植物にもダメージが大きいです。200倍~400倍の濃度に原液を薄めて、最初は薄いものから試してみてください。ようすを見て少しずつ濃度を変えます。
ボタニ子
原液を薄めて濃度を変えるのはよいけれど、取扱説明書に書かれている範囲内にしましょうね。
予防対策③木酢液をアブラムシにかける頻度を増やす
木酢液は水で濃度を薄めることにより、水そのままよりも分子を小さくする特徴があります。分子が小さくなった木酢液は、より植物に吸収されやすくなります。木酢液を植物にかけると植物自体に木酢液の香りが浸透し、その香りを嫌うアブラムシにの忌避に効果的です。定期的にスプレーすれば、アブラムシが近づきにくい植物になります。
何回かければよいか?
育てている植物のようすを見ながら、木酢液をかける頻度を変えます。ナスやトマト、オクラやきゅうりなどの野菜は食べる際に燻製のような香りが気になるようであれば、葉の裏や茎のみに1週間に1回ほどのスプレーからスタートしてみましょう。バラや草花の場合も、葉が枯れていないかようすを見て頻度を増やしてください。
予防対策④雨後に散布
液体の木酢液は、雨が降ると流されます。雨で木酢液が流されて障害がなくなれば、アブラムシはすぐに戻ってきてしまいます。1回使用すればすぐにアブラムシに効果があるわけではないため、雨で流されてしまったら雨上がりかその翌日にすぐに散布しましょう。
予防対策⑤アレンジ木酢液でパワーアップ
木酢液だけを利用するのも効果的ですが、さらに食用の材料を追加して強力な防虫剤を作れます。使用するものが食材なことから、ナスやトマトなど野菜を育てている場合も安心です。似たものであれば代用もできるため、挑戦してみましょう。木酢液のみを使用する場合と同じで、洗濯物や風向きなどに注意してください。
用意するもの
- 焼酎10mL(25度以上のもの、泡盛でも可)
- 食用酢10mL(甘い味付けがされていないもの)
- 木酢液原液10mL
- 水
作り方
- 材料を全てペットボトルに入れてよく振る
- 薄めたものをスプレーできるものに入れて植物に吹きかける
さらにパワーアップ
上記のものにタバスコやコーレーグースー(シマトウガラシの泡盛漬け)、ニンニクのしぼり汁を少し加えるとさらに効果がパワーアップします。にんにくや鷹の爪から作る場合は適度な大きさに切り、密閉容器に入れて、1カ月~2カ月漬け込みます。スプレーする際は詰まらないように、茶こしでこすのがコツです。インドセンダンの木からとれるニームオイルを入れるのもよいでしょう。
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参考価格: 1,500円
ニームオイルとはインドセンダンの木からとれるオイルです。インドセンダンは東南アジア~中近東が原産の木で、全樹に強力な苦味がありそれが害虫予防に役立ちます。ニームオイルがかかった植物を食べた害虫は食欲がなくなり、餓死する効果があります。苗から使用でき人間には無害のため、おすすめです。
木酢液は具体的に何にどの成分が作用しているか、まだわかっていないことが多いの。でも、家庭菜園の味方なのは確かよ。