ネギについて
中国西部や中央アジアを原産地とするネギは、奈良時代にはすでに日本に伝わっていたといわれており、日本人には大変なじみ深い野菜です。東日本では白ネギ、西日本では葉ネギがよく栽培されています。世界における単位面積当たりの生産量は中国についで2位になるなど、日本はネギ作りがさかんな国といえます。
ネギの基本情報
学名 | Allium fistulosum |
科名 | ヒガンバナ科(またはユリ科) |
属名 | ネギ属 |
原産地 | 中国西部、中央アジア |
日本における主な産地 | 千葉県、埼玉県、茨城県 |
ネギの栄養価
ネギはアリシン(硫化アリル)という成分を含みます。これが特有の香りのもとです。アリシンはビタミンB1の吸収を助ける、血行をよくする、抗菌といった作用に優れているといわれています。人体にとっては栄養価の高いネギですが、犬や猫が摂取すると玉ネギ中毒を起こして貧血になることがあるため、ペットを飼っているご家庭では注意が必要です。
ネギの種類
白ネギ
成長に合わせて土寄せをし、白い部分を長く育てて食べるネギで、長ネギや根深ネギ、一本ネギとも呼ばれます。関東近郊でさかんに栽培されており、埼玉県のブランドネギである深谷ネギや群馬県下仁田町の固有種である下仁田ネギなどがこれにあたります。
葉ネギ
主に緑色の葉の部分を食べるネギで、京都の九条ネギや福岡県の博多万能ねぎなどがあげられます。畑で育てることはもちろん、小ねぎであればプランターや水耕栽培でも簡単に作れます。万能ねぎは根を残して地上部を収穫するため、新たな葉が伸びて何度か収穫を楽しめるでしょう。
海外のネギ
ヨーロッパでは、リーキと呼ばれる下仁田ネギによく似たネギが栽培されています。また日本でいうところの葉ネギとしてはチャイブがよく使われています。
ネギの栽培スケジュール
ネギの種はたくさんの種類があり、その時期に適したものを選べば一年中栽培が可能です。長ネギを作るなら、秋冬時期にとれる品種がおすすめです。秋冬どりは「種をまく時期の気温が発芽に適している」「収穫時期を迎えても抽苔しにくい」といったメリットがあります。また、寒い時期に苗を育てる場合に必要な、ビニールなどの被覆資材もいりません。
秋冬どりネギの栽培スケジュール
作業内容 | 適した時期 |
種まき | 4月~5月中旬 |
植え付け | 5月下旬~6月下旬 |
土寄せ | 収穫まで月に1度 |
収穫 | 11月~3月 |
株分け | 3月以降(分けつしたら植え替える) |
ネギの育て方①種まき
長ネギを家庭菜園で育てる場合、プランター栽培はあまり適していません。苗の管理にはセルトレイと呼ばれる苗を育てるためのトレイが適していますが、無ければプランターに種まきして、苗を育ててから畑に植え替えます。葉ネギを育てる場合、万能ねぎのように若いものを食べるならプランターで構いませんが、九条ネギのようにある程度の大きさにしたい場合は畑に植え替えるとよいでしょう。
用意するもの
- 200穴セルトレイ(ホームセンターで購入可能)
- 水稲用育苗箱(セルトレイを入れる薄いトレイのようなもの。小さな穴がたくさん開いており、排水性や通気性の確保に役立つ)
- ネギ用種まき培土(ネギの育苗期間は長いため、ネギ用の種まき培土は、通常の野菜用種まき培土より長く肥料の効果が続く)
- 種
- 手袋
- ビニールシート
- 定規や板の端材(セルトレイに土を詰める際、表面をすり切るのにあると便利。なくても問題はない)
種まきの仕方
土を詰める
作業はビニールシートの上で行うのがおすすめです。水稲用育苗箱にセルトレイをセットしたら、表面が山になるくらい種まき培土を盛り、上から全体を軽く押さえていきます。その後、手もしくは定規や板の端材を使って表面の土を落とします。土をあまりぎゅうぎゅうに詰めすぎると、ネギの根が酸欠を起こし生育不良になる場合があるため注意してください。
種をまく
土を詰めたら、1つの穴に2、3粒ずつ種をまいていきます。まいたときに上から指で軽く押し付けて、土がへこむようにしてください。その後上から土をかぶせていきます。かぶせる土の量は種1、2個分の高さにしてください。深すぎると発芽が遅れたり、発芽しなかったりする場合があります。プランターの場合は種を筋状にまき、発芽後2、3週間したら株間3mmになるよう間引いて苗を育ててください。
畑に苗床を作って育苗もできる
畑の一角を耕して苗床を作り、そこに種まきして苗を育てることも可能です。耕した地面に板などで溝を付けて種を筋まきし、成長したら株間3cmほどになるよう間引いて苗を育てます。この場合、苗床に草が繁茂しやすいため、こまめに草むしりをする必要があります。2~3カ月経ったらスコップで掘り起こして別の場所に植え替えましょう。
ネギの育て方②苗の管理
「苗半作」という言葉があるように、苗の管理が作物のできの半分を左右します。特にネギは他の野菜に比べて苗を育てる期間が長い野菜です。ネギは乾燥に強いため苗が成長してくれば枯れる心配はあまりありませんが、生育初期はこまめに様子を確認しましょう。
水やりのポイント
種まき~発芽まで
種をまいたら上から新聞紙をかけ、水やりをします。新聞紙は無くてもかまいませんが、ある方が乾きにくく水の管理が簡単です。発芽までは種を乾かさないようにすることが重要ですが、水をやりすぎると種が腐る場合があるため注意が必要です。
発芽~2、3週間後頃まで
発芽したら新聞紙をはがします。このとき、はがすタイミングは曇っている日か夕方が理想的です。新聞紙をかけて発芽させた場合、発芽したての芽はもやしのようになっており、急に強い日差しにさらされると枯れることがあるためです。曇りや夕方に新聞紙をはがすことで、徐々に日光に慣らしていく狙いがあります。その後も苗がある程度成長する2、3週間後頃までは、乾きすぎて枯れることのないよう水の管理が必要です。
発芽から2、3週間後頃~植え付けまで
ネギ苗が成長してくると、あまり神経質に水やりをする必要はありません。ネギは非常に乾燥に強く枯れることが少ない一方で、多湿を嫌う植物なので水をやりすぎるとかえって苗を腐らせてしまう場合があります。朝に水やりをし、夜間は土の表面が乾いているくらいが理想的です。
苗が黄色くなってしまったら
ネギ用の種まき培土ではなく通常の野菜用種まき培土を使用した場合などに、苗が肥料切れをおこして地上部が黄色くなってしまうことがあります。そのときは液体肥料を与えて様子を見ましょう。液体肥料は水やりをした後にラベルの表示に従って散布してください。
苗を太くする「葉切り」
ネギや玉ネギの苗は、地上部が15cmほどになったら葉の先端を2、3cmほど切る「葉切り」を行います。これは苗にストレスを与えて太く育てるために行うものです。このとき間違えて切りすぎたとしても、中心部から新しい葉が伸びてくるため問題はありません。植え付けまで「伸びたら切る」を繰り返しましょう。
出典:写真AC