ツチグリ(土栗)とは
ツチグリ(土栗)とは、ツチガキ(土柿)ともいわれ、腹菌類というキノコの仲間です。ニセショウロウ目ツチグリ科ツチグリ属になります。分布は北半球の熱帯から寒帯と広く、ほぼ全世界に分布しているといえます。特に日本、韓国、中国など四季のある地域に多いです。高千穂では「けーころ」福島では「まめだんご」山形では「まんまいだんご」などと呼ばれ、ほぼ全国に分布しています。主に林や崖、庭園などの斜面でみることができます。
ツチグリの特徴
成長したツチグリは、雨が降ると外皮を星形にひろげてそり、立ち上がるように袋状の内皮を天にむけます。晴れて乾燥してくると1日かけて外皮を閉じます。手をじゃんけんのグーにした形です。そのため「星形の湿度計」「キノコの晴雨計」などと呼ばれることもあります。晴れて乾燥したときに、まるまって風にのってころころと転がる特徴から「晴天の旅行者」という名前も持っています。
発生時期
ツチグリの発生時期は多くのキノコと同じように夏から秋にかけてです。晴れて丸まっていると土と同じような色ですが、雨が降ると外皮を星形に広げるので見つけやすいでしょう。群生して発生する特徴があるので、一つ見つけたら周囲を探してみてください。いくつも見つかる可能性があります。前の年の外皮のカラをみつけることができれば、その周辺に発生する確率が高いです。
形状
ツチグリは幼菌のときには丸い形で地中にうまっていて、成長とともに地上に顔を出します。幼菌のときはベージュから白色です。成長とともに褐色になり、外皮が6~10の星型にさけ、中央に袋状の内皮があらわれます。ミカンをむいたような形です。ツチグリは幼菌の時期と成長して成熟してからでは形が変わりますが、成長してからも形を変えるのが特徴です。固い外皮の内側は淡褐色でアンデスメロンのような網目模様があります。
増え方
ツチグリは、成長すると袋状の内皮の中央に穴があき、そこから大量の胞子を拡散させます。湿度を感じると外皮をそって立ち上がるような形になり内皮を天にむけるのは、雨や小動物、虫などの刺激によって胞子を飛ばすためです。安定してこの態勢を保つため外皮が星形に裂けます。このように雨の日に胞子を飛ばしては晴れると場所をかえ、また雨が降るのを待ち、胞子を飛ばすということを繰り返して子孫を残します。
ツチグリの食べ方
ツチグリは食用として利用することができます。利用できるのは幼菌だけで、成長したツチグリは食用に向きません。幼菌を掘り起こして利用する方法と、外国産の缶詰を利用する方法があります。缶詰のものは下処理がしてあるので楽ですが、生ではないので食感が違います。煮物などには缶詰がおすすめですが、他の料理法の場合は、生を使った方が食感が楽しめるでしょう。ただし、キノコは類似していて食用に向かないものもありますので、詳しい方に聞くか専門家の意見をあおぐことをおすすめします。
収穫
ツチグリは幼菌しか食用に利用できません。幼菌は地中に埋まっているので、成長して地上に出てくる前の時期に収穫します。群生して分布する特徴があるので先に出てきた成体のツチグリの周りを掘ってみましょう。前の年の外皮のカラの周辺でも収穫できる可能性が高いです。2cm前後のまるいツチグリの幼菌がころころ出てきます。色は白か淡い褐色がほとんどです。色が濃いものは地上へ出る直前のものです。
下処理
収穫したツチグリを綺麗に水で洗うと、根のような短い菌糸束がついています。皮が黒くなっているところと一緒に包丁でそぎ落とします。半分に切って中が白いことを確認してください。中が黒くなっているものは地上に出る時期が近く胞子になる準備ができているもので、苦くて食べられません。新鮮なものは、黒い中身をくりぬいて綺麗に洗えば外側も食用として利用できます。その時に中身が白くきれいなものを生食してみてください。生栗のようなほくほくした食感が楽しめます。
調理法
ツチグリにはキノコ特有の香りはありますが、特に個性的な味はありません。ただし、食感がとても珍しいです。外はこりこりとしてミミガーや奈良漬の皮のようで、中ははんぺんや粘りのないマシュマロのような感じです。こりこりとふわふわが一度に味わえる食材も多くはないでしょう。一番最初はそのまま焼いて味噌や醤油、塩などをつける食べ方がシンプルに食感を楽しめます。
煮る
缶詰を使用する食べ方は煮る料理がおすすめです。生を煮るのももちろんおいしいですが、お味噌汁、ポタージュやスープなどには手軽に使える缶詰がいいでしょう。缶詰はタイ産が多いようですが、ミャンマーではカレーに入れて食べるそうです。そのほかにも筑前煮や肉じゃがに入れたり、ミートソースなどに入れたりしても楽しめます。
焼く
中が黒かったツチグリは中身を取り出すので、入れ物の形になります。チーズやひき肉、魚のミンチなどをいれてオーブンで焼くと食感が楽しめます。バター醤油で炒めたり、炒飯の具にしたりしてもアクセントになるでしょう。その他にもかき揚げとしてエビやたまねぎと一緒に揚げたり、マリネにしたり炊き込みご飯にしたりと、くせがないぶん料理方法はたくさんあります。
ツチグリの類似キノコ
ツチグリは腹菌類のキノコであることはご紹介しましたが、この種類のキノコはキヌガサタケやサンコタケなど、個性的な形をしたものが多いです。ツチグリとよく似た形のキノコも複数ありますので、ご紹介します。
エリマキツチグリ
エリマキツチグリは「ヒメツチグリ目、ヒメツチグリ科、ヒメツチグリ属」のキノコで、腐葉土などが堆積した土地を好みます。内皮と外皮に別れ、外皮が裂けて反りかえることは同じですが、網目模様がありません。ツチグリと違う点は内皮の中央がとがっていて、クワイのような形をしていることと、外皮の形です。外皮の内側がはがれてエリマキのように内皮をつつむことから、この名前がつきました。この種類では大型で4~5cmくらいになります。食用として利用できません。
フクロツチガキ
フクロツチガキは「ホコリタケ目、ヒメツチグリ科、ヒメツチグリ属」のキノコです。こちらも食用として利用できません。シロツチグリと似ていますが、内皮の穴の周辺が黒っぽい円座でふちどられていることで判別します。シロツチグリはこの円座がありません。ツチグリの中では最小で、0.8~1.5cmです。外皮が裂けて反りかえるのは同じですが、淡褐色でつるっとしているのが特徴です。
まとめ
キノコの世界はとても奥が深く、種類も膨大で、キノコと一言で表してよいのかどうかと思うほどユニークです。食用のキノコと毒キノコが存在し、形が酷似しているものがあるのも不思議なことです。ツチグリは幼菌が食べられますが、小さく見つけにくく少しでも時期をはずせば苦くなってしまいます。個性的な食感ではありますが、特別おいしいキノコとはいえません。しかし、めったに口にすることができない貴重な食文化として、出会う機会があったらぜひ、挑戦してみてください。
出典:flickr