エゾニュウとは?北海道に分布する植物としての特徴や食べ方をご紹介!

エゾニュウとは?北海道に分布する植物としての特徴や食べ方をご紹介!

エゾニュウは、北海道~東北地方の海岸線や沢沿いに自生するセリ科の植物です。自生地以外ではあまり流通していないため、山菜としての知名度は低いですが、地元では越冬山菜として親しまれています。エゾニュウの特徴や食べ方、類似種との見分け方を見ていきましょう。

記事の目次

  1. 1.エゾニュウとは
  2. 2.エゾニュウの特徴
  3. 3.エゾニュウの食べ方
  4. 4.エゾニュウと類似種との見分け方
  5. 5.エゾニュウは幻の山菜!

エゾニュウとは

出典:写真AC

エゾニュウ(蝦夷丹生)は、北海道~本州(北部~中部)に分布するセリ科シシウド属の多年生植物です。名前の「エゾ」は北海道の旧名である「蝦夷(えぞ)」に由来し、「ニュウ」はアイヌ語を語源としています。エゾニュウは茎の部分が食用可能で、地元では山菜として食べられていました。非常にアクが強いため、食用する際には茹でてから塩漬けにして保存するなど、しっかりしたアク抜き作業が必要です。

エゾニュウはアイヌ語で「シウキナ」とも呼ばれていて、「苦い草」という意味です。「ニュウ」のはっきりした意味は不明ですが、食用にも薬用にもなる草本につけられています。

エゾニュウはアクが強いから、アイヌの人たちにも「苦い草」と認識されていたんだろうね。

基本情報

学名 Angelica ursina
科名・属名 セリ科シシウド属
樹高・草丈 1m~3m
花の色 白~クリーム色
耐寒性 強い
耐暑性 弱い
特性・用途 北海道の海岸線に自生、山菜として食用される
可食 若い茎の皮を剥いて食べる
アクが強いため、下処理なしでは可食不可能

秋田で愛されたエゾニュウ

エゾニュウは秋田県では「サク」「ニオ」「ニオサク」「ニョウサク」と、さまざまな名前で呼ばれています。別名が多いのは愛されてきたためでしょう。エゾニュウはアクが強いため塩漬けにして保存し、冬がきたら塩抜きして食べるのが一般的でした。塩漬けしたエゾニュウは野菜類が不足しやすい冬の時期、秋田県民にとっては貴重な野菜だったのです。

エゾニュウの特徴

特徴①花

エゾニュウは6月~8月に開花します。白~クリーム色の花を放射状に咲かせるという、個性的な花形が大きな特徴です。この花形の植物学上の呼称は「散形花序(さんけいかじょ)」といい、セリ科やウコギ科の植物によく見られます。エゾニュウは海岸沿いや沢沿いに自生し、最大で3mまで成長する大型の山菜です。大きく育ったエゾニュウが花を咲かせている様子は見応えがありますよ。

散形花序は、サクラソウ科、ネギ類、ヒガンバナ類の植物にも見られる咲き方なんですよ。

エゾニュウの花には独特の香りがあるんだ。満開時には虫もよくつくんだよ。

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特徴②葉

エゾニュウの葉は羽のように裂けた形が特徴的です。葉裏には脈上に毛が生えています。上部の葉は退化して、赤褐色のサヤになります。個性的な花の印象のほうが強いため、あまり目立ちません。ちなみにエゾニュウを食用する際は、おもに若い茎を収穫しますが若芽も食べます。

特徴③茎

エゾニュウの茎は中空で太くまっすぐ育ち、上部で枝分かれするのが大きな特徴です。エゾニュウは3m以上に育つため、十分に育った草姿は堂々とした雰囲気があります。エゾニュウを山菜として用いる場合は、若い茎を開花前に収穫します。収穫の適期は5月中旬~6月下旬です。ただし、エゾニュウは熊の好物でもあるため、収穫する際は熊に注意する必要があります。

エゾニュウを収穫するときは、熊避けの鈴、熊撃退スプレーや爆竹など、熊の被害を防止するための対策が必要です。

特に7月~8月は「熊の草食いの季節」でもあるんだ。エゾニュウに限らず、沢沿いに自生する山菜を収穫する際は注意してね。

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エゾニュウの食べ方

食べ方①煮物

出典:写真AC

アク抜きしたエゾニュウは、煮物にして食べることが多いです。煮込んでも煮崩れせず、シャクシャクした食感をたもちます。セリ科特有の香りもあるため、煮物はシンプルな味つけがよくあいますよ。甘味と食感を楽しめるため、煮物にするとフキやウドよりもおいしいと評判です。

食べ方②炒め物

出典:写真AC

炒め物もエゾニュウの食べ方として定番の料理です。エゾニュウには独特の香りを持ち、口に入れると舌に刺激が感じられるというセリ科の植物に共通する特徴があります。この特徴とエゾニュウ特有のシャクシャクとした食感が、炒め物によくあいます。特におすすめはピリ辛風味のきんぴらです。人参などの野菜といっしょに作ると栄養バランスも整いますよ。

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食べ方③天ぷら

出典:写真AC

山菜料理の定番である天ぷらも、エゾニュウの食べ方としてよく用いられている料理です。油のうま味と衣のサクッとした食感が、山菜特有のクセを中和してくれます。エゾニュウはクセは少ないですが、独特の香りと食感が天ぷらとの相性がよいので、おいしく食べられますよ。旬の魚や野菜もいっしょに天ぷらにすれば、季節感たっぷりの豪華なメニューが楽しめます。

食べ方④汁物の具材

フリー写真素材ぱくたそ

エゾニュウは、味噌汁などの汁物の具材にも用いられます。汁物は煮込む際、具材から溶け出してしまう栄養素を逃さずに食べられる非常に合理的な料理です。旬の食材といっしょに料理すれば、栄養価も高まります。また、エゾニュウ独特の食感は煮込み料理に強いため、汁物にしても失われません。香りと食感が楽しめる汁物が味わえるでしょう。

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エゾニュウと類似種との見分け方

出典:写真AC

エゾニュウは個性的な草姿を持つ植物ですが、よく似ている植物が意外に多く存在しています。素人にはほとんど見分けられないほど似ている種類もあるほどです。

①オオハナウド(大花独活)

出典:写真AC

オオハナウドは、北海道~本州北部に分布しているセリ科ハナウド属の大型多年草です。見た目はエゾニュウとよく似ていますが、植物学上は違います。草丈はエゾニュウが約1m~3mに対して、オオハナウドは1m~2mです。花の咲き方も同じ散形花序ですが、よく見ると外側の花が大きく、花びらの先が2つに裂けています。開花時期は5月~7月と、エゾニュウよりもやや早めです。

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②エゾノシシウド(蝦夷の猪独活)

出典:写真AC

エゾノシシウドはセリ科エゾノシシウド属の植物です。名前はシシウドに似た外見と、北海道に自生していることに由来しています。小葉が厚めで光沢があり、葉柄の基部が袋状にふくらむのがこの種の特徴であり、エゾニュウとの違いです。草丈も違い、エゾニュウが3m以上に成長する大型種であるのに対して、エゾノシシウドは1m~1.5mと、エゾニュウと比べると少し低いです。

エゾノシシウドの開花時期は6月~7月です。開花時期もエゾニュウと似ていますね。

③アマニュウ(甘にゅう)

アマニュウはセリ科シシウド属の多年草で、植物学上はエゾニュウと同じ種類です。「マルバアマニュウ」「マルバエゾニュウ」などの別名があります。7月~8月に開花し草丈は1m~2m、まれに3mに成長する場合があるなど、エゾニュウと非常に似通っている植物です。エゾニュウとの違いは葉の形です。エゾニュウの葉が羽のように裂け、葉先が尖っているのに対して、アマニュウの葉形は丸いです。

アマニュウの別名についている「マルバ(円葉)」は、アマニュウの丸みを帯びた葉形が由来なんだよ。

④エゾノヨロイグサ(蝦夷鎧草)

エゾノヨロイグサは、エゾニュウやアマニュウと同じセリ科シシウド属の多年草です。名前は「北海道(蝦夷)に自生するヨロイグサ(鎧草)に似た草」という意味でつけられました。似ているといってもヨロイグサとは別種の植物です。7月~8月に開花しますが、エゾニュウとの違いは花の咲き方です。エゾニュウの花は上部が平らな状態なのに対して、エゾノヨロイグサはこんもりした半球状に咲きます。

エゾノヨロイグサとエゾニュウのもう一つの違いは茎の太さです。エゾノヨロイグサのほうが茎が細く、華奢な印象を与えます。

エゾニュウは幻の山菜!

出典:写真AC

エゾニュウは「幻の山菜」とも呼ばれています。寒冷地の海岸線や沢沿いなど、限られた地域にしか分布していないからです。そのため、市販の山菜ガイドブックに掲載されていないこともあります。一方でエゾニュウが収穫できる北海道や秋田県では、越冬山菜として親しまれてきました。エゾニュウを食べられる機会があれば、ぜひ味わってくださいね。

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Laylah
ライター

Laylah

バラや百合のような美しくて香り高い花も好きですが、スミレやタンポポのような野に咲く可憐で強い花も好きです。

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