はじめに
お盆の時期によく見かける「きゅうりの馬と茄子の牛」。あれって何だろう?どういう意味があるのだろう?と、気になっている方も多いのではないでしょうか。あれは、お盆に先祖の魂が乗って帰るといわれる「精霊馬(しょうりょううま)」と呼ばれるお供え物です。今回はお盆と精霊馬の持つ意味と、SNSを賑わす人気の精霊馬のアレンジの数々をご紹介します。
精霊馬とは?
7月15日を中心としたお盆の時期、また、月遅れの8月のお盆の時期によく見かけるのが、きゅうりと茄子で作った精霊馬(しょうりょううま)。お盆にはあの世からご先祖さまや亡くなった家族の霊魂が家に戻って来るといわれますが、精霊馬はあの世とこの世の橋渡しをする役割を果たします。
「精霊馬」の豆知識
お盆の代表的なお供えの精霊馬。これは、死者の魂を運ぶという「馬」と「牛」を模した二対のお供えものの総称です。精霊馬の「馬」はご先祖様の霊魂を乗せて早足で運んで来るといわれています。また、精霊馬の「牛」は、お盆の終わりにご先祖様の霊魂とお供えものを乗せ、あの世に戻る役割をするといわれています。
野菜以外の精霊馬もある?
きゅうりや茄子を精霊馬に見立てるのは、それらが貴重な夏の収穫物からです。神様に感謝として収穫物を奉納したのが始まりともいわれているようです。また、藁で精霊馬を作る地方もあります。昔はお墓に続く道の草刈りをし、その刈草で精霊馬を作りました。そのため、今でも岩手の「わら馬」など、藁で作った精霊馬をお供えする地域が残っています。
精霊馬とお供えもの
精霊馬と共に用意するお供えものもいろいろあります。特にお盆の供養に欠かせないお供え花のことを「盆花」と呼びます。これは、ちょうどお盆の時期に花を咲かせるキキョウやオミナエシ、ハギ、ミソハギ、ユリなどを総称したものです。その他にもお団子やおはぎ、果物、素麺など、地方によって違ったお供え物をする風習があるようです。
お盆に合わせて精霊棚を作る地方も
お盆になると「精霊棚」と呼ばれる盆棚を作る地方もあります。いろいろな種類があり、中には竹で、高さ1メートルもある特別な盆棚を作る地方もあるそうです。これらの精霊棚には、まずご先祖さまの位牌を安置し、そこに精霊馬と盆花、故人が好きだった嗜好品やお菓子などをお供えするそうです。
精霊馬の作り方
精霊馬の作り方はとても簡単です。新鮮なきゅうりと茄子を用意したら、それぞれの「へた」の部分を頭に見立ててバランスを考えてみましょう。足をつける位置の検討をつけたら、麻ガラや松明の木を使って、4本の足を差し込みます。足に爪楊枝を使う場合は、バランスが崩れてしまわないよう、爪楊枝を5本ぐらい束ねて使うと安定しますよ。
バランスが一番の難関
精霊馬を作る上で、多分一番の難関かもしれません。最初は何度か失敗して野菜が穴だらけになりますので、材料はあらかじめ複数用意しておくとよいでしょう。うまくバランスがとれたら、餌皿に見立てたフキやハスの葉に、失敗したきゅうりと茄子を角切りにして餌がわりに置きましょう。お水も忘れずにお供えしてくださいね。
精霊馬の保存方法
野菜で作る精霊馬は「生もの」ですので、暑い時期は外に置いておくとしなびたり、変色することもあります。お盆の前日に精霊馬を作ったら、ラップに包んで冷蔵庫に保存しておくのがおすすめです。野菜は傷むのが嫌という方に人気なのは、精霊馬そっくりのロウソク飾りや、藁の雑貨的な精霊馬です。これなら毎年繰り返し使えて便利ですので、仏具屋さんなどでチェックしてみてはいかがでしょう。
精霊馬の処分方法は?
お盆が終わったあと、役目を終えたきゅうりと茄子の精霊馬はどうやって処分すればいいのでしょう?昔はお盆が終わると、精霊馬を藁で作った船に乗せ、川に流す「精霊流し」を行なっていました。しかし、今ではあまり見かけることはありません。そのため、土に埋めたり、川に流す方法が一般的ですが、現実的にはごみとして出すしかないのが現状ではないでしょうか。
精霊馬は感謝をもっていただこう
お役目が終わった野菜の精霊馬を、そのままごみにするのは、あまりにもしのびないものです。そこでぜひおすすめしたいのは、先祖への思いを馳せながらおいしくいただくことです。多少野菜の表面がしなびていても、皮を剥いで調理すれば、ほとんど問題なく食べられます。きゅうりも茄子も、甘酢で炒めて中華風にするとおいしいですよ。食材を大切にするためにも、ぜひ試してみてくださいね。
SNSは精霊馬アイデアの宝庫
考えてみれば、精霊馬の形に「これ!」といったルールはありません。SNSには一般的な精霊馬を超越したものや、思わず真似したくなる精霊馬のアイデアがたくさん紹介されています。どれも愛情たっぷり、作り手の想いがこもったものばかりです。それでは、年々力作が増えて行く精霊馬の人気のアレンジをさっそくご紹介しましょう。
かわいい精霊馬のアイデア
アレンジ①野菜が変身!繊細なカービング系
草花精霊馬。 pic.twitter.com/ydSWDS7z9j
— 花日和 畳 (@tatami111) August 14, 2019
これは素敵!細かなカービングを施したかわいい精霊馬です。ちょっとしたアイデアで精霊馬の持つ雰囲気が変化することがわかります。
アレンジ②乳牛がかわいい!ほのぼの作り込み系
世間はお盆ということで。
— ガガさん。 (@12345678910GAGA) August 14, 2018
きゅうりの精霊馬は間に合わなかったので、ナスの精霊牛を作ってみました…。
ちょっと仔牛っぽい?けどまぁ、おじいちゃん細かったから大丈夫でしょう!笑 pic.twitter.com/29lzjSAEvk
リアルに彫刻で細工をした茄子の精霊馬です。牛は牛でも、乳牛という部分がポイントです。
アレンジ③安定感抜群のペガサス系
我が家の精霊馬 ペガサス pic.twitter.com/D710xby5y1
— takapapi (@TAKAPAPl) August 12, 2018
これも発想力が抜群。ペガサスの精霊馬です。足も羽もきゅうりで作っているので、全体的なバランスのよさ、安定感がありますよね。
発想が面白い!人気の精霊馬のアイデア
アレンジ④もはや馬ではなく二式大艇!
お盆の精霊馬、きゅうりとオクラでじいちゃんが好きだった二式大艇作った。
— d-mayumi (@dragon_mayumi) August 12, 2018
日の丸はトマト。
じいちゃん、享年94才、若い頃この飛行艇の整備に関わってたらしい。
初盆だからな、馬より早く帰って来てほしい。 pic.twitter.com/NlBUef7pxk
こちらの精霊馬はなんと飛行艇です。オクラやトマトの使い方が芸術的ですよね。
アレンジ⑤これは面白い!アメリカンバイク系
初盆です。
— Captain's Salt (@CaptainsSalt1) August 12, 2018
今からコレで爺サマ迎えに行きます笑
まぁ歩みが遅い牛の代わりにハーレーダビッドソン作っちゃったのはご愛嬌#初盆 #精霊馬 pic.twitter.com/KAGZXRQLmK
こちらの精霊馬は、馬に手綱と鞍がついていて、本格的に乗馬できる作りをしています。ハーレーの牛も割り箸を使い、メカニックな工夫に溢れています。
アレンジ⑥面白い!「ネコバス」も精霊馬に
ハトトカの制作担当の54が作った送り火の精霊馬がすごい(笑 流石だぜ!!リンク先には別アングルの写真や、ラピュタのフラップター(空飛ぶ乗り物)もあるので是非覗いて下さい!https://t.co/dcgElvWCUo pic.twitter.com/8Od3qEt7Uv
— 中村慎太郎@徒歩で日本一周サッカー旅の書籍原稿執筆ちう (@_Shintaro_) August 13, 2015
変化球の精霊馬アレンジの紹介ツイートです。映画「となりのトトロ」に登場するネコバスをリアルに再現しています。二つの茄子と爪楊枝を使って、うまく表現していますよね。行き先がさりげなく「自宅」となっているところもポイントです。
アレンジ⑦まるでSF映画のような精霊馬
キュウリを収穫日に見落としてしまい、巨大化してしまったので大人数用の精霊馬になってもらいました。浮かせてるつもり。 pic.twitter.com/b6UgoOKAiH
— 横山拓彦 (@takuhikoy) August 14, 2016
収穫期を逃して巨大化したきゅうりの特性を、うまく活かした精霊馬です。細かな細工と大量の爪楊枝の組み合わせが、近未来チックで絶妙なバランスですよね。
アレンジ⑧恐竜系精霊馬
曾祖父ちゃん達これに乗るのか… pic.twitter.com/2abRjJcsx8
— サトウ アンジュ (@anju_sato_) August 12, 2018
精霊馬ならぬ恐竜馬!着想力のユニークさはピカイチです。すごいスピードであの世とこの世をひとっ飛びしそうですね。これに習って、野菜をパーツにして精霊馬を組み立ててみるのもいいですね。
アレンジ⑨水陸両用精霊馬
お盆なので精霊馬作りました pic.twitter.com/cmCcc5pwCQ
— 南雲秋人(なぐもあきと) (@akitonagumo) August 11, 2018
茄子ときゅうりを合体させた変わり種の精霊馬。水陸両用できそうなユニークな足元がポイントです。きゅうりの馬、茄子の牛、どちらもスピードが出そうな形です。
アレンジ⑩謎の不思議な精霊馬
なんと、ゴーヤの精霊馬! 夏野菜で作るという意味では、こちらも立派な精霊馬です。しかし、ユニークですよね。すでに精霊馬の域を超えてしまっているという方がよいかもしれません。
まとめ
精霊馬を作っていると、亡くした家族が家に帰ってくる温かく切ない気持ちに包まれます。きっと、みなさんも同じ気持ちで精霊馬を作っているのではないでしょうか。次のお盆の精霊馬はご先祖様が喜ぶ姿を思い浮かべつつ、特別な細工をしてみていかがでしょう。ぜひ、オリジナル精霊馬に挑戦してくださいね。
出典:写真AC