日本酒の原料に使われる食用米
日本酒に使われる米は、酒造好適米だけではありません。主に食用として栽培されている食用米も、日本酒づくりに利用されています。食用米は酒造好適米と比較すると安価なため、米が大量に必要な掛米の工程で多く使われます。
食用米①日本晴
日本晴は、滋賀県を中心に栽培されている品種です。昭和中期にはおいしい米の代表として人気が高かったものの、コシヒカリの登場によって次第に姿を消していきました。現在ではチャーハンや寿司向きの品種として利用されているほか、日本酒作りにも比較的多く利用されています。
食用米②愛国
愛国は、コシヒカリやササニシキ・ひとめぼれなど、多くの有名品種の祖先である品種です。ほかの品種と比較すると寒冷耐性が高く、大正時代には米の代表品種でした。しかし次第に、より味のよい品種へと代替わりしていきます。酒造好適米ではないものの、収穫量の多さや防虫性から、現在では日本酒造りのために栽培されています。
酒造好適米の役割
日本酒を造るときの米の用途は、大きく3つに分けられます。米麹の元となる「麹米」・日本酒酒造りの土台になる「酒母」・日本酒の原型になる「掛米」です。日本酒の銘柄によっては、用途ごとに使用する米を変えている場合もあります。また食用米は、主に掛米の工程で利用されます。
役割①麹米
麹米は、米麹を培養するために使う米です。蒸し米に麹菌をつけて培養し、デンプンを糖化させたものが米麹です。米麹を造るためには、米に酵母菌が十分に行き渡らせる必要があります。そのため、心白が大きくデンプンの量が多い品種を使うことで、よい米麹ができあがります。日本酒造りに使用する米の2割が、この麹米です。
役割②酒母
酒母は日本酒の母体となる液体で、もろみとも呼ばれます。米・水・米麹・乳酸菌・酵母を混ぜて、発酵・培養したものです。麹菌によって糖化したデンプンはブドウ糖になり、さらに酵母菌によってアルコールになります。日本酒造り全体にしめる酒母米の割合は1割ほどと少ないですが、この酒母のできぐあいが日本酒の風味を左右します。
役割③掛米
日本酒造りに使う米の7割が、掛米として使われます。掛米は、蒸したあと直接酒母の中に入れるための米です。酒母はすでに発酵が進んでおり、投入された掛米は溶けて酒になります。ただし、一度に多量の掛米を入れると発酵バランスが崩れるため、何度かに分けて少しずつ酒にしていきます。
米の種類や違いを知って日本酒を楽しもう
日本全国で、さまざまな種類の日本酒が造られています。それぞれの特徴は、醸造している酒蔵だけではなく、原料となる酒造好適米によっても違いが出ています。有名な品種や地域を代表する特色ある品種もあるため、それぞれの違いを知ることで、より日本酒を楽しめるでしょう。
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出典:写真AC