サルトリイバラの近縁種
ケナシサルトリイバラ
ケナシサルトリイバラは中国に分布するサルトリイバラの近縁種です。葉が長く、ツルに棘が無い点がサルトリイバラと違います。花期にはサルトリイバラと同じ散形花序をつけますが、果実は黒く熟します。
ケナシサルトリイバラ基本データ
- 標準和名:ケナシサルトリイバラ
- 学名:Simlax glabra
- 分類:サルトリイバラ科シオデ属(旧ユリ科シオデ属)
- 分布:中国大陸部(日本には自生しない)
薬用植物サンキライの正体
ケナシサルトリイバラの塊茎(地下部)はサンキライ(山帰来)と呼ばれ、薬用植物として使われてきました。「山帰来」の名前の由来は「山に捨てられた病人がケナシサルトリイバラの根を食べたら回復して帰って来た」という伝承にちなみます。薬効成分として、アスチルビンやジオスゲニン配糖体を含み、中医学では解毒薬として、江戸時代には梅毒に効くという触れ込みで出回りました。
サルトリイバラは薬用にならない
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日本薬局方に収載されている生薬を、写真で詳しく解説しています。
先述のとおり、サンキライは薬用植物として知られていました。しかし本物のサンキライは中国にしか自生しないため、日本では類似したサルトリイバラも代用品として使われました。その結果、サルトリイバラも「サンキライ」と呼ばれるようになったのです。現在、日本薬局方にも収載されている「山帰来」はケナシサルトリイバラから作ったものだけで、サルトリイバラは薬用として認められていません。
シオデ
若い果実をつけたシオデ。花期は6〜7で、果実は黒く熟します。
シオデ基本データ
- 標準和名:シオデ
- 学名:Smilax riparia var. ussuriensis
- 分類:サルトリイバラ科シオデ属(旧ユリ科シオデ属)
- 分布:北海道〜九州
サルトリイバラより葉が長い
シオデは山地に分布するツル植物で、雌雄異株である点や散形花序をつける点はサルトリイバラと同じです。しかし葉がサルトリイバラより長く、ヤマノイモ科のツル植物に似ています。ヤマノイモ科とは花の形で見分けられます。
知る人ぞ知る「山のアスパラガス」
シオデの新芽は食べられますが、滅多に市場に出回らず幻の山菜と呼ばれます。シオデの生息地自体が限られていることに加え、他のツル植物との違いが分かりにくいことが幻と呼ばれる所以。緑色のツルが地面からまっすぐ伸びる様子から「山のアスパラガス」とも呼ばれます。味にクセがなく、まさにアスパラガスのような感覚で様々な食べ方ができます。
ボタニ子
入手する機会があったら、茹でてゴマ和えにしたり、天ぷらにしたりしてみよう!
サルトリイバラの見分け方
サルトリイバラとシオデは生える環境が似ており、見分けがつきにくいこともあります。さらにややこしいのが、ヤマノイモ科のツル植物。ヤマノイモ、ニガカシュウなどとも葉の形が似ています。違いを図で整理したので参考にしてください。サルトリイバラ科の特徴は托葉が変形した巻きひげと、花柄が放射状に広がる散形花序です。サルトリイバラはシオデよりも葉に丸みがあり、葉脈が少ない点で見分けられます。
ボタニ子
巻きひげと花に注目!これなら見分けられるかも。
サルトリイバラまとめ
サルトリイバラは日本各地に分布するツル植物。人里近くに生える植物なので、様々な食べ方や利用方法が編み出されてきました。かしわ餅の包みや生け花としての利用方法もあり、日本文化に影で貢献してきた植物と言えるでしょう。山菜として食べるときはアクの強さが難点ですが、身近な春の味覚として様々な食べ方を試してみてはいかがでしょうか。
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ケナシサルトリイバラ。日本には自生しませんが、薬用植物園で栽培されていることがあります。写真は東京都薬用植物園の個体です。