ヤブガラシ(藪枯)とは?
ヤブガラシの基本情報
別名 | ビンボウカズラ(貧乏葛)ビンボウヅル(貧乏蔓) |
植物分類 | ブドウ科ヤブカラシ属 |
園芸分類 | つる性多年草 |
分布 | 熱帯~東南アジア、北海道~南西諸島 |
草丈:花の色 | つるの長さ:2~3m:緑・オレンジ(花盤) |
開花時期 | 6~9月 |
耐寒暑性 | 耐暑性:強い 耐寒性:やや弱い |
生命力にあふれるヤブガラシ
雑草としてトップクラスの生命力を持つヤブガラシは、夏の暑い時期に生育が著しいということもあり、至る所で目にする機会の多い植物です。ちなみに英語名はBush killer(茂み殺し?)鋸歯のある複葉が雑木林や人の手のあまり入らない所で大繁殖する姿には、思わずため息がもれてしまいますね。
二倍体と三倍体
ヤブガラシの生態の特徴として、種子をつける二倍体と種子をつけない三倍体の種類があります。三倍体は種子をつくるエネルギーが使われない分、植物自体が大きくなる傾向にあります。種子をつける二倍体は主に西日本に分布しており、関東以北でみられるヤブガラシの大半は種子をつけない三倍体になります。
ボタニ子
三倍体とは、基本的に通常であれば雌雄からもらった二つの染色体を持つ生物(二倍体)であるはずが、何らかの変異で三つの染色体を持ってしまった状態をいうんだよ。自然に起こることもあれば人為的に起こす場合もある。
ボタニ子
えっと…具体的にはどんなのがあるの?
人為的な例としては種なしスイカやバナナがあげられるかな。三倍体に種子が出来ないのは、3という数では減数分裂ができないからだよ。だから子孫が残せないというわけ。
ボタニ子
なるほど。三倍体が種子をつけないということは分かったけど…
分かったけど…?
ボタニ子
一般的だといわれている、種子をつけない三倍体のヤブガラシが増殖していくのはどうしてなの?
そこが謎なんだよね。やはり地下茎で増えていくとしか考えられないかなぁ
ヤブガラシ(藪枯)の名前の由来
名は体を表す?一目瞭然の繁殖力
ヤブガラシ(藪枯)の名の由来は、その名の通り藪を覆いつくし、枯らしてしまう勢いで繁殖するところからきています。別名として「貧乏葛」「貧乏蔓」がありますが、こちらは人の手の入らない貧乏くさい場所に繁殖するという意味で名づけられています。雑草扱いとはいえ、なんとも不名誉な名前ですが、じつは昆虫たちにとってのヤブガラシは貧乏どころか大富豪な植物なんです。
昆虫とヤブガラシの関係については、次の項目でご説明します
ヤブガラシの生態と特徴
ヤブガラシの花
蜜の豊富な花
ヤブガラシの花は地味で小さいのですが、昆虫たちが集まってくるのには理由があります。それは蜜が豊富で吸いやすいこと。上の画像のオレンジ色のところは花盤とよばれ、虫たちが蜜を吸うのに最適な形状になっています。この花盤には葉の気孔と同じようなつくりの開口部があり、そこから蜜が大量に分泌されるのです。
豊富な蜜に群がる虫たち
蜜を目的にやって来るのは蟻や蝶、テントウムシ、ハエ、コガネムシと多種多様ですが、その中でも注意しなくてはならないのが蜂です。ヤブガラシの茂みの中に巣をつくることはありませんが、蜂の大好きな植物としてあげられているほどですので、いろいろな蜂が飛来してきます。ヤブガラシ駆除の際には刺されないよう十分注意してください。
ボタニ子
ミツバチにオオスズメバチ、アシナガバチもくるの~!?
蜂だけでも十数種はやってくるね
ヤブガラシの葉
鋸歯のある5枚の複葉
ヤブガラシの葉は5枚の複葉で、特徴としては縁が鋸歯になっています。夏の暑い時期にぐんぐん勢力を拡大していくヤブガラシの葉は、あっという間にあたりの植物を覆いつくしてしまいます。複葉という形状は、自分の陣地を効率よく拡大するのには適しているのかもしれませんね。
ヤブガラシのつる
コイル状の巻ひげ
ヤブガラシの茎は自分を支えることができないので、2~3mほどのつる性の茎から巻きひげを出し、周囲の植物にコイルのように絡まって成長していきます。とある研究によると、ヤブガラシはハダニの発生した植物には巻き付かないという結果が出ています。ヤブガラシに自分の身を守る賢さがあるとは驚きですね。
ボタニ子
周囲をハダニ付きの植物で取り囲めばヤブガラシも一網打尽?
さすがにそれはどうかなー。そもそも庭の植物をハダニだらけにしたくないよね
ボタニ子
うーん。なにかいい駆除方法はないものか…
ヤブガラシの種子
西日本のみで見られる種子
二倍体の花盤のあとに見られる結実のようすです。この実はやがて黒く熟し、中に4mmほどの種が一つだけできます。西日本以南でしかみられない種子ですが、駆除対象の場合は、一刻も早く切り取ってしまいましょう。鋸歯のある複葉と黒い実の組み合わせは、切り花にするには良い素材なんですけれどね。
ボタニ子
大繁殖さえしなければ、見た目は悪くない植物なんだけどね
ヤブガラシの根
ちぎれても再生する生命力
地表に近い根は細長く、簡単にちぎれてしまう頼りないで根ですが、地下50cmあたりにはこんな太い根がはびこっています。この根が少しでも地中に残っていると、ヤブガラシはそこから再生し、どんどん繁殖していきます。ヤブガラシの駆除が大変といわれるのはこの尋常でない生命力の強さからきているのでしょうね。
有用植物としてのヤブガラシ
食用としてのヤブガラシ
新芽を食べるときはよくアクを抜いてから
意外にも食べることができるヤブガラシですが、アクが強いのでお浸し用などに茹でた後は一晩アク抜きをしましょう。茹でると赤い新芽は緑色に変わります。味は山菜系でわずかな辛みとぬめりがあり、ワラビに似た食感です。天ぷらにしてもクセなく食べることができます。
漢方としてのヤブガラシ
漢方名は烏歛苺(ウレンボ)
雑草として嫌われているヤブガラシですが、その根は漢方として利用することができます。利尿・解毒・鎮痛剤としての効能があります。膀胱炎や関節炎にも用いられますが、一般的に雑草と呼ばれている植物に漢方としての有効成分が多く見られるのはおもしろい話ですね。
切り花としてのヤブガラシ
小粋な生け花として
植物としての造型は決して悪くないヤブガラシを、好んで切り花として楽しむ人も少なくありません。はっきりと浮き出た葉脈に鋸歯のある葉と、小さいコイル状のつると愛らしい花。単品で活けてもなかなかサマになるのがつる性植物の持ち味でしょうか。お茶花としてもよさそうですね。
ヤブガラシの駆除方法
嫌われ者のヤブガラシ
完全駆除は難しいのが現状
根からの再生能力が高く、繁殖力旺盛なヤブガラシの厄介さをご理解されたことと思います。さてヤブガラシの駆除です。手でひっこ抜くことから始まり、道具で刈り取る、除草剤をまく、防草シートを敷く、などの方法があげられていますが、どれも完全とはいえないのが現状です。いくつかの方法を組み合わせて長期戦で戦いましょう!
地下まで浸透する除草剤
除草剤は根気よく続けて
日産化学 除草剤 原液タイプ ラウンドアップマックスロード 500ml
参考価格: 1,342円
内容量 | 500ml |
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成分 | ホスホノメチル |
タイプ | 液体タイプ |
持続期間 | 数カ月 ※植物や環境によって変わってくる |
上記のラウンドアップマックスロードには、地下まで浸透して根を枯らす効果があります。それでも一度で上手く枯らすことは難しいので、数年単位で根気よく続けることが大切です。こちらの商品は散布した後に雨が降っても大丈夫です。
打ち込みタイプの除草剤
大きく育ってしまったヤブガラシには
石原バイオサイエンス クズ専用除草剤 ケイピンエース 50本入り
参考価格: 771円
比較的効果のある方法として、上の画像の根に打ち込むタイプの除草剤をおすすめします。こちらはヤブガラシよりも厄介といわれているクズの防除剤としても使用されています。ヤブガラシの細い地下茎は浅い所にあり、比較的掘り出しやすいのですが、深い物だと地下50cm~の場所にあったりします。大変な作業になりますが、大元から退治することが大切です。時期的には葉の勢いが衰える秋口から翌春にかけてがよいでしょう。
ヤブガラシ駆除のポイント
- 持ち込まないこと
- 種子を見つけたらすぐに処分すること
- 駆除の作業の際には蜂に気を付けること
- 一度で片付けようとせず、繰り返し拡大させないように年単位で駆除していくこと
まとめ
決して見た目は悪くないヤブガラシ。昆虫にとってはオアシス的な存在でも、人間の生活圏を脅かすとなると駆除対象植物になってしまうのも仕方ないですね。ヤブガラシとの戦いは体力勝負なところもありますので、夏季は無理をせず、涼しくなってから行ってくださいね。
三倍体ってなあに?