ユウゲショウとは?
ユウゲショウは、アカバナ科マツヨイグサ属に分類される帰化植物です。明治時代、園芸種として日本に持ち込まれたものが野生化し、現在では道ばたや河原でよく見かける花になりました。ひかえめで可愛らしい花のイメージとは裏腹に、花期が長くたくましい生命力を持っています。
基本情報
分類 | アカバナ科 マツヨイグサ属 |
学名 | oenothera rosea |
英名 | rose eveningprimerose |
別名 | アカバナユウゲショウ |
原産 | 北アメリカ南部~南アメリカ |
分布 | 関東地方以西 |
形態 | 多年草 |
ユウゲショウはマツヨイグサ属の赤花系統
ユウゲショウの英名は「rose eveningprimerose」です。英訳すると「バラ色のマツヨイグサ」となります。マツヨイグサ属の花はすべてが南北アメリカ原産で、そのうち日本に帰化しているものは現在14種あります。これらは生態や特徴がよく似ているため、咲かせる花の色によって区別されています。白または薄ピンク系統は「ツキミソウ」、黄花系統は「マツヨイグサ」、そして「ユウゲショウ」は赤花系統にあたります。
ユウゲショウの特徴
花の特徴
花の色はピンクで1~1.5cmと小ぶりです。丸い花弁が4枚あり、赤い筋が入っているのが特徴です。花の中心は黄緑色で雄しべは8本、雌しべは先が4本に分かれた十字形になっています。小さなカップ咲きの花姿が可愛らしく目をひきます。
茎と葉の特徴
根元から束のように生える茎は高さ20~60cmになり、表面には短く白い毛が生えています。葉は互い違いに生える互生で、長さは3~5cmあり、ふちがギザギザと浅く波打つ楕円形です。
根の特徴
根はひげ根といって、主根を持たない細い根が多数ついています。また根茎と呼ばれる太い地下茎をもっているものもあり、これを地中に伸ばしてどんどん広がっていきます。根茎を全て取り除くことはとても難しく、畑や空き地などで繁殖してしまうと厄介な存在になってしまいます。
実の特徴
実はさく果で、熟すと実がはじけて種子を散布します。上部が膨らんだこん棒のようなかたちをしていて、中には1mmにも満たない細かい種子が60~100個も入っています。8つの稜があり、雨に濡れると4つに裂けて中の種子が流れていきます。これは雨滴散布と呼ばれ、さく果の中でもめずらしいタイプの散布方法です。乾燥すると閉じ、濡れるとまた開きます。これを繰り返すことで、あちこちに種子が運ばれていくのです。
ユウゲショウの開花時期
花期は5月~9月で、長い期間花を咲かせます。その強い性質により、コンクリートのわずかな隙間などでもしっかり生育している姿が見られます。長く伸びた茎や葉は冬になると枯れますが、地面に葉をのばすロゼット状で越冬します。
ユウゲショウの名前の由来
ユウゲショウという名前の由来
昼間は閉じていて、夕方に開花することが名前の由来になっています。「夕方、化粧したように咲く花」とはなんとも風情のある名前ですね。ところが実際には昼間から咲いている個体がほとんどで、夕方になるとしぼんでしまうものさえあるのです。マツヨイグサ属が総じて夜咲きであることや、帰化する段階で花が昼咲きに変化したことによる説もありますが、いずれも推測の域を出ていません。
別名はアカバナユウゲショウ
オシロイバナの別名も「ユウゲショウ」
ユウゲショウの別名はアカバナユウゲショウ、漢字で書くと「赤花夕化粧」です。この名前はオシロイバナと区別するためにつけられました。オシロイバナはオシロイバナ科の多年草で、ユウゲショウとは別種の花です。実はこのオシロイバナも、ユウゲショウと呼ばれることがあります。両者を混同してしまう可能性があるため「アカバナ」とつけ加えられました。
白い花を咲かせる種もある
ユウゲショウの中には少ないですが、白い花を咲かせるものもあります。これに「シロバナ」と名前はついておらず、同じくユウゲショウもしくはアカバナユウゲショウという呼び方になります。白い花を「アカバナ」と呼ぶのは少し違和感がありますね。
学名の意味
ユウゲショウの学名は「oenothera rosea」になります。「oenothera」はギリシャ語の「oinos(酒)」と「ther(野獣)」が語源で、「rosea」は「バラのような」という意味です。根にブドウ酒のような香りがあり、それが野獣を惹きつけるためにこの名前がついたといわれています。
ユウゲショウの花言葉
ユウゲショウの花言葉は「臆病」です。その由来は明らかになっていませんが、夕方に開花する様子や、小ぶりで可憐な花のイメージが「臆病」という言葉を連想させるのかもしれません。本来持っている強い生命力とは相反するような花言葉ですが、そのギャップが魅力の一つともいえるでしょう。
ユウゲショウに似た花
ヒルザキツキミソウ
ヒルザキツキミソウはユウゲショウとそっくりなので、よく引き合いに出されます。ツキミソウの仲間は夕方以降に開花するものがほとんどですが、昼にも開花することがこの花の名前の由来になりました。
ヒルザキツキミソウの特徴
丸い花弁や雌しべの形など、花のつくりはユウゲショウと全く同じです。地下茎で広がり、雨滴散布型のさく果を持っていることまで共通しています。一つ大きく違う点は、花の大きさが約5cmあること。また、花期が5月~7月と短めです。ヒルザキツキミソウも園芸種として日本に導入されましたが、野生化して道ばたや土手などあちこちで見られます。
コマツヨイグサ
次に紹介するのは、黄色の明るい花が目をひくコマツヨイグサです。マツヨイグサの中でも小さい花をつけることから名付けられました。こちらも花の色こそ違いますが、ユウゲショウと似た雰囲気があります。
コマツヨイグサの特徴
花はハート型の花弁が4枚、雄しべは8本、雌しべは十字形です。大きさは2~3cmと小ぶりで、明るい黄色がとても印象的です。コマツヨイグサの茎は直立せず、地面を這うように伸びるのが特徴です。葉は個体によって切れこみの深いもの(羽状)からほとんどないもの(全縁)まであります。浜辺や河原などに生育し、道行く人の目を楽しませてくれます。花期は4月~11月と非常に長いです。
アカバナ
最後は、同じ「アカバナ」という名前を持った花です。紅葉することが名前の由来とされています。先にあげた2つの花は同じマツヨイグサ属に分類される帰化種ですが、こちらはアカバナ属の在来種です。
アカバナの特徴
花に注目してみましょう。ハート形の花弁4枚に、雄しべ8本、雌しべの先が丸くふくらんでいます。大きさは約1cm、ピンク色であることから、ユウゲショウと見間違えそうなほど似ています。アカバナは北海道から九州まで広く分布し、おもに山地や野原の湿地などに生息します。
まとめ
ユウゲショウは、名前の由来や可憐なイメージから想像できないほどの力強さを秘めた花です。今では日本の各地に広がり、野の花として親しまれるようになりました。道ばたに咲いている小さなピンク色の花を見つけたら、ぜひ足をとめてみてくださいね。
出典:写真AC