ウラシマソウとはどんな植物?
ウラシマソウとは、日本を原産とするサトイモ科テンナンショウ属の球根植物です。おもに本州、四国に分布しています。耐陰性が強いため、海岸付近の林床や人里近い林などに自生することが多いです。一方で日照量が不足すると、開花しにくくなる繊細さを持っています。球根植物ですが種子でも繁殖する植物です。
ウラシマソウはおもに本州や四国に分布していますが、北海道や九州の一部でも見られますよ。
ウラシマソウは直射日光が苦手だから、どこでも生えるわけじゃないんだ。明るめの林縁や木漏れ日がさす樹木の下などに自生しているよ。
基本情報
園芸部類 | 山野草、球根植物 |
形態 | 多年草 |
大きさ・高さ | 30cm~80cm |
花の色 | 黒褐色、赤褐色、濃紫色、緑白色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 普通 |
特性・用途 | 落葉性、耐陰性が強い、乾燥に弱い |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
名前の由来
ウラシマソウの名前は、個性的な花の形に由来しています。ウラシマソウの黒っぽい花は、実際は「苞(ほう)」と呼ばれる部分です。ウラシマソウは開花時期になると、苞の中にある付属体の先端部分が細い糸のように伸びる特徴があります。その姿が、昔話の浦島太郎が釣り糸を垂らしている様子を連想させることから「浦島草(ウラシマソウ)」と名づけられました。
花言葉
ウラシマソウの花言葉は「遠くの友を思う」「不在の友を思う」「別れた友への思い」「過ぎ去った日々」「注意を怠るな」です。花言葉の意味は、いずれも名前の由来でもある昔話の「浦島太郎」に由来しています。「別れた友への思い」や「過ぎ去った日々」などの戻らない時間や友人を思う花言葉は、竜宮城にいる間に故郷では長い時間がたってしまった結果、孤独になった浦島太郎の心境が由来です。
「注意を怠るな」という花言葉は、浦島太郎が「開けてはいけない」と注意された玉手箱を開けて、老人になってしまった結末が由来です。
ウラシマソウは絶滅危惧種?
ウラシマソウは日本固有種ですが、絶滅危惧種にも指定されている希少な山野草です。絶滅危惧種は都道府県ごとに指定されるため、地域で異なりますが、ウラシマソウの場合は2018年に山口県、愛媛県、高知県で絶滅危惧種Ⅰ類指定されました。このほか長野県では絶滅危惧種Ⅱ類、埼玉県、山梨県、京都府、鳥取県、岐阜県では準絶滅危惧種に指定されています。
ウラシマソウは日本固有種ですが、近年は森林の伐採や整地などで個数が減少し、生育地も限定されているんですよ。
絶滅危惧種のリストは、数年おきに見直されるんだ。だから保護が進んで数が増えれば、絶滅危惧種指定が外れることもあるんだよ。
ウラシマソウの特徴
特徴①個性的な花形
ウラシマソウ大きな特徴は、名前の由来にもなった個性的な花形です。ウラシマソウの黒っぽい花のような部分は「仏炎苞(ぶつえんほう)」といい、本当の花を包んでいます。苞の中にある付属体の先端部分が糸状に伸びます。仏炎苞の色は黒っぽい色が一般的ですが、赤褐色や緑白色、無地やストライプ柄といった変異種もあり、意外に種類豊富です。
仏炎苞という名前は、仏像の背景にある炎の形をした装飾物に見立てて名づけられました。
ちなみにウラシマソウの仏炎苞の大きさは10cm~25cmだよ。
特徴②性転換する花
性転換植物であることも、ウラシマソウの大きな特徴です。ウラシマソウの花には雄花と雌花がありますが、成長具合や栄養状態によって、つける花が変化します。開花時期を迎えると、生育状態によって雄花になるか雌花になるかが決まるのです。若い株、または比較的小さい株は雄花、年を経て充実した株、または大型の株は雌花をつけます。
生育状態が微妙な株の場合は、雄花と雌花が一緒に咲くことがあるよ。
ちなみにウラシマソウの開花時期は3月~4月が一般的ですが、地域や気候条件によっては5月に開花する場合もあります。
特徴③赤い果実
ウラシマソウは、花色は落ち着いた黒褐色なのに対して、果実は鮮やかな赤色で、トウモロコシに似た形状です。ウラシマソウの果実は、最初は緑色ですが、成熟すると赤色に変わります。また、ウラシマソウの果実にはサポニンという毒が含まれているため、食用にはなりません。
特徴④傘のような葉
花姿が個性的なウラシマソウは、葉形も個性的です。ウラシマソウの葉は根際から1枚~2枚生えます。形状は11個~17個の小葉で構成されている烏足状複葉です。長くて太い葉柄が直立するため、遠目から見ると大きく切れ込みが入った傘のように見えます。落葉性のため、夏~秋の間に枯れ落ちます。なお、葉の大きさは12cm~25cm、葉柄の長さは20cm~40cmです。
ウラシマソウの育て方①時期
地域によっては絶滅危惧種指定を受けているウラシマソウですが、栽培は可能です。植え付け時期である冬には球根苗が出回っています。ウラシマソウは山野草のため、栽培が難しい印象がありますが、もともと日本固有種で日本の気候風土があっています。栽培環境や病害虫対策など複数のポイントを押さえれば、育てることはそれほど難しい植物ではありません。
植え付けから開花までの時期
植え付け時期 | 11月~2月 |
植え替えの時期 | 11月~2月 |
肥料の時期 | 5月~6月 |
花が咲く時期/開花時期 | 3月~4月頃 |
栽培スケジュールカレンダー
ウラシマソウの育て方②栽培環境
栽培方法
ウラシマソウは日本で育てるなら、鉢植えでも地植えでも大丈夫です。ただし、強い日差しや乾燥に弱いため、初心者の場合は管理しやすい鉢植え栽培がよいでしょう。寒さにも弱く、冬場は土が凍結しない場所で管理することも重要です。
育てる場所
ウラシマソウが好むのは、風通しのよい半日陰です。ウラシマソウの葉は夏の直射日光などの強い日差しに弱く、当たると葉焼けを起こして枯れてしまいます。一方で、日照不足になると花が咲かないなど生育障害が起こるため注意が必要です。鉢植えの場合は明るめの半日陰で管理しましょう。
地植えにする場合は、落葉樹の下が最適です。夏場は直射日光を避けられ、冬場は適度に日が当たります。
野生のウラシマソウも、木漏れ日が当たる場所に生えているんだ。できるだけ生息場所の環境に近づけるのが、山野草栽培のコツだよ。
山野草はデリケートだから、どこでもいいというわけではないのね。
用土
ウラシマソウは乾燥が苦手ですが、多湿な環境も生育に悪影響を与えます。用土は水はけや水もちのよいものを用意しましょう。鉢植えの場合は、赤玉土6:鹿沼土4、または赤玉土5:鹿沼土5の割合で作ります。鉢は用土の乾燥を防ぐため、素焼きの鉢や小さい鉢は避けましょう。
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出典:写真AC