小判草(コバンソウ)とは
小判草の基本情報
別名 | タワラムギ(俵麦) |
属性 | イネ科コバンソウ属 |
種類 | 一年草 |
原産地 | ヨーロッパ |
草丈 | 20~60cm |
耐寒暑性 | 耐暑性:強い 耐寒性:普通 |
たれ下がった小判がかわいい植物
見ての通り、小判のぶら下がった植物である小判草。雑草として扱われていますが、意外にも種や苗が販売されている観賞用の植物です。日本では北陸から関東以西に分布しており、性質は強健で土壌を選ばず、日当たりでも日かげでもよく育ちます。
別名は俵麦(たわらむぎ)
人によっては垂れ下がった小判が虫のように見えて気持ちが悪いという意見もありますが、そこは好き好きでしょうか。別名の「俵麦(たわらむぎ)」は小穂の形が俵に似ているところからきています。
花言葉は「お金持ち」?
小判草の花言葉は「お金持ち」です。ほかにも「金満家」「熱狂」「興奮」「白熱した議論」「心を揺さぶる」と、なにやら熱いキーワードの花言葉が並びますが、やはり「お金持ち」がしっくりくるでしょうか。小判草は金運アップの縁起物として生け花などに使われることもあります。まさに「名は体を表す」ですね。
小判草の特徴
小判草の花
小判草の開花時期は5~7月。両性花であり風媒花です。花のつき方は円錐花序で、細く糸のように伸びた小茎の先端に1~3cmほどの小判のような小穂をつけます。花弁は退化して鱗片が重なり合った状態で、苞が変化した穎(えい)(*1)から雄しべと雌しべが飛び出る形になります。花の下の一対は苞が変化したもので赤褐色をしています。若いうちは黄緑色で熟すると全体が黄金色に変わります。
(*1)穎(えい)
穎(えい)とはうろこ状の包葉のことで、イネ科の植物によく見られます。
小判草の葉
イネ科らしい草姿
イネ科である小判草の葉は線形で縦に葉脈が走り、互生の形をとっています。全体の草丈は20~60cmで葉の長さは10cmほど。無毛で薄く柔らかです。茎や葉の基部は赤褐色で、若干匍匐してから垂直に伸びていきます。
小判草の種
小判草の実は穎果(えいか)とよばれるもので、果皮に種が密着して一体化した状態になっています。果皮を一枚一枚をはがしてみると、種が一粒づつ付着しているようすがよく分かりますね。種の大きさは2.5mmほどで、乾燥した種は鱗片ごとに自然に剥がれ、風に運ばれて飛散していきます。
小判草と大判草(オオバンソウ)
大判のような形の種
大判草の特徴はなんといってもその独特な種の形でしょう。平たい大判のような形状の莢(さや)に種が透けて見えます。大判草の開花時期は5~6月。原産地はヨーロッパで、日本では高温多湿に弱いことから関東以北に分布しており、東北から北海道などでは雑草化しています。
別名 | ルナリア 合田草 銀扇草 銭幣草 |
属性 | アブラナ科ルナリア属 |
分類 | 二年草 |
原産地 | ヨーロッパ |
草丈 | 20~50cm |
耐寒暑性 | 耐暑性:普通 耐寒性:強い |
小判草と大判草の違い
小判草とは植物としての科も属性も違います。ですから近しい品種ということではなく、どちらも外見の特徴からつけられた名前ということになります。
大判草の別名の由来
大判草の別名の「合田草」は明治34年に合田清氏(東京美術学校教授)がフランスから種を持ち帰ったことが由来となっています。そして「ルナリア」(Lunaria)のルナ(Luna)は月を意味しています。「銀扇草」の由来は、乾燥した種が銀色に光る薄い和紙でできた扇のようだと表現されたことからでしょう。大きな種を大判に例える人、月に例える人、扇に例える人。いろいろな見方があって面白いですね。
小判草と姫小判草(ヒメコバンソウ)
小判草と姫小判草の違い
小判草と姫小判草はどちらもイネ科のコバンソウ属です。写真で個別に見た分には区別がつきにくそうですが、並べて比較してみるとサイズの違いが一目瞭然ですね。姫小判草は世界中の温帯地方に分布し、日本各地で見ることができます。
別名 | スズガヤ |
属性 | イネ科コバンソウ属 |
分類 | 一年草 |
原産地 | ヨーロッパ |
草丈 | 10~60cm |
耐寒暑性 | 耐暑性:強い 耐寒性:普通 |
極小サイズのヒメコバンソウ
姫小判草の開花時期は5~7月。小判草と同時期になります。また姫小判草の別名のスズガヤ(鈴茅・鈴萱)は、小さな三角形のおむすび状の種を振ると、カラカラと鈴のように音を立てるところからきています。
小判草と西洋小判草(セイヨウコバンソウ)
西洋小判草(セイヨウコバンソウ)との違い
別名には「ニセ」とついていますが、丸みのある柔らかい雰囲気の小判草に対して、平たくざっくりとワイルドな花穂をもつ西洋小判草ですので、見分けるのは容易でしょう。分布は日本各地ということなので、見たことがある方も多いのではないでしょうか。
別名 | ニセコバンソウ ワイルドオーツ |
属性 | イネ科カスマンティウム属 |
分類 | 耐寒性多年草 落葉性 |
原産地 | 北アメリカ |
草丈 | 70~100cm |
耐寒暑性 | 耐暑性:強い 耐寒性:強い |
識別は容易なニセ小判草(西洋小判草)
西洋小判草の開花時期は7~8月。乾燥や多湿にも強く、多年草ということで毎年同じ場所で仲間を増やしていきます。秋に落葉しても茶色くなった花穂はそのまま冬まで残り、観賞用として人々の目を楽しませてくれます。
小判草の育て方
強健な野草でもある小判草
どこでも育つ小判草
雑草として扱われているぐらいですから、小判草の育て方といっても取り立てて特筆することはありません。荒れ地や乾燥が続く状態でも育ちますし、ましてや肥料なども必要としませんが、一般的な植物と同様に、日当たり、適度な水、肥沃な土であれば、おおいに繁殖することでしょう。種を手に入れた場合の種まきは9月中旬~11月。こぼれダネが飛散する時期に合わせるとよいでしょう。
実は侵略的外来種
一部では苗や種の売買もされている小判草ですが、強健で繁殖しやすい性質から侵略的外来種という扱いになっています。そういうわけですから、小判状の花穂を観賞したあとは、きちんと種を管理して周囲に広がらないように配慮することが大切です。
まとめ
小判草とそれに近い名前を持つ三つの植物をご紹介してきましたが、ご存じの品種はあったでしょうか?植物の姿もさることながら、そのネーミングに関わった人たちのセンスも洒落ていますね。そして小判草の外観からと思われる花言葉の「お金持ち」には妙に納得させられました。雑草としてあまり意識していなかった植物でも、その名前の由来を知るととても身近に感じられるようになりますね。
写真:「大判」と呼ばれる理由になった種