キジムシロの特徴
キジムシロは、バラ科キジムシロ属の多年草です。日本、南西諸島、朝鮮、中国大陸の山地、シベリアのサハリンなどに生育しています。日本では北海道から九州まで、全国の山野に見られるポピュラーな山野草です。山が好きで散策される方なら一度は見かけたことがあるでしょう。日当たりのよい場所であれば、草原・砂地・岩場など土質は比較的選びません。湿地に自生するものもありますが、基本は日当たりのよい水はけのよい場所が適地です。
可憐な黄花に彩られるおしゃれなムシロ
キジムシロの葉は根際からでて放射状に地面に広がり、花柄は地面をはうように長く伸びます。葉を中心にして、周りを黄色い花が取り囲むように咲くため、あたかも雉(キジ)が休むために用意されたムシロのようであることから、この名がつけられました。
キジムシロの仲間と見分け方
キジムシロ属の仲間の花は皆、黄色です。それだけでなく一見すると見分けがつかないくらい似ているのが特徴です。しかし、よく観察すると違いが分かります。ここでは、キジムシロの仲間と見分け方について見ていきます。
キジムシロの仲間
キジムシロは、当然、キジムシロ属の植物たちの代表格です。仲間たちの有名どころでは、ヘビイチゴ、オヘビイチゴ、ミツバツチグリ、カワラサイコなどがあります。イワキンバイ、ウラジロキンバイ、メアカキンバイなど植物名に「キンバイ」とついたものもキジムシロ属です。キジムシロの特徴の一つに「羽状複葉」が挙げられます。同じ羽状複葉の仲間が、エチゴキジムシロ、ツルキジムシロ、エゾツルキンバイ、ツチグリ、ヒロハノカワラサイコなどです。
それぞれの見分け方
キジムシロの葉は、地上茎の基部についた葉は節と節がつまり、束状に見えます。5~9枚の奇数、羽状の複葉です。ここに1~6対の小葉をつけます。小葉は円形または卵形で、先端は90度以下の鈍形(鈍角)です。基部も鈍形で茎の節に葉柄がない無柄です。葉縁には角度の鈍いギザギザがつきます。小葉の長さは1~3cm、幅は6~15mmです。茎につく托葉は、楕円形でまったく切れ込みがありません。上にある小葉ほど大きく下方のものほど小形で、両面ともに粗毛があり、特に下面の脈状に多く見られます。
キジムシロの見分け方をまとめてみました。
- 葉は羽状複葉で上部の小葉ほど大きい
- 葉に毛が多い
- 走出枝(親株から長く伸びた茎)を出さない
同じ羽状複葉の仲間の見分け方
エチゴキジムシロは、小葉が全体的に小さく、大きさに変化がありません。ツルキジムシロとエゾツルキンバイには細い匐枝があり、見分けがつきます。ヒロハノカワラサイコとツチグリは、葉の裏面に白い毛が見えるのが特徴です。よく観察して、似た仲間の植物の見分け方を発見するのも山歩きの楽しみ方の一つです。
実はならない
キジムシロはイチゴのような赤い実はなりません。赤い実がなるのはヘビイチゴです。この点も見分け方に含めてもよいでしょう。ちなみに、ヘビイチゴは以前、ヘビイチゴ属に分類されていました。俗名で「ドクイチゴ」といわれることもありますが、人が食しても体に毒にはなりません。
キジムシロの開花時期
春、花柄の基部から別の花柄がでる集散花序をつくって花を開きます。花弁は5枚です。花は細毛を密生させ、細い花柄を出します。開花時期は4月~5月頃です。5~30cmの花柄の先に5弁の黄花をつけます。5つのがく片の形状は卵形で先端は鋭く、葉柄に近い側で最も幅が広くなる披針形です。毛が多いのも際立った特徴です。
まとめ
キジムシロは決して派手な花ではありません。山野に咲く花らしく、素朴な花姿が魅力といえるでしょう。近くの山野で、開花時期にかわいらしい黄花を見つけたら、キジムシロかどうか確かめてみてください。
出典:写真AC