カワラナデシコ(河原撫子)はどんな花?
秋の七草の一つであるカワラナデシコ(河原撫子)は、昔から日本人になじみのある花です。小さく、とてもかわいらしい花です。品種が多く日本にも何種類か異なる花が自生しています。カワラナデシ(河原撫子)の特徴や見分け方、育て方を紹介していきます。
基本情報
分類 | ナデシコ科、ナデシコ属 |
学名 | Dianthus superbus var. longicalycinus |
花の色 | ピンク、白、赤紫 |
分布 | 日本全国、中国、朝鮮半島 |
生育地 | 草地、河原 |
ナデシコ属は北半球の温帯地帯に約300種類ほどが生息し、ヨーロッパ南部や北アフリカなど地中海沿岸の地域にも広く分布しています。
名前の由来
ナデシコの名前は「撫でいつくしむ子どものようにかわいい花」ということから付けられました。河原は、草原や河原(水の近く)に咲いていることが多かったからかもしれません。別名「大和撫子」といわれて、中国原産のセキチクと分けて呼んでいます。秋の七草に入っているナデシコは、花の咲いている期間が長く夏の花として慕われていたようです。
カワラナデシコの特徴
カワラナデシコ(河原撫子)にはどのような特徴があるのでしょうか。花や葉の付き方、実の結び方をそれぞれ見ていきます。
花の特徴
花びらは5枚で、先が細かく裂けているのが特徴で、直径は4~5cmです。花びらの元に苞(ほう)が3~4個ついています。苞(ほう)は葉が変形してつぼみを包むような形になったもので、花が終わっても茎にそのまま付いています。
葉の特徴
葉は線形ないし披針形で茎の部分に節を作り、茎に対して向かい合って生えています。葉は冬の寒さや夏の寒さに耐えられます。害虫が付くこともあまりありません。
実の特徴
実はさく果と呼ばれ、果皮が乾燥すると皮の目に沿って二つに割れます。下の部分が破け種子が飛び散ります。種を集めたい場合には、熟す前に袋をかけて空中に拡散しないように手を加えておきましょう。
カワラナデシコの種類
カワラナデシコ(河原撫子)の種類は日本に分布しているだけでも数多くあります。その一部を比較しながら紹介します。自生しているものは咲いている場所で見分けることが可能です。
見分け方
エゾカワラナデシコとの見分け方
エゾカワラナデシコは苞(ほう)が2対で十字をきるように付いています。花の付き方がカワラナデシコと異なりますが、葉の形は線形で似ているため咲く前は見分けづらいです。高原に咲いていることが多く、美ヶ原高原や霧ヶ峰高原はエゾカワラナデシコの宝庫です。
タカネナデシコとの見分け方
花弁の2/3くらいが裂けており、花弁と花弁の空間がたっぷりできています。花が密集したように見えるカワラナデシコと明らかに雰囲気が違うでしょう。花びらの元に紫褐色の模様が入っている種類を見かけられます。エゾカワラナデシコが高山で変種したもので、通常紅紫色が多いですがまれに白花も見られるようです。
姫ナデシコとの見分け方
ヨーロッパに多い園芸品種で古くから栽培されています。白の花びらの内側にピンクが入ったツートンカラーを目にすることが多いでしょう。花弁にギザギザが入っていて、ほのかな香りを漂わせます。姫ナデシコの変種が中国原産のセキチクです。
カワラナデシコの育て方
カワラナデシコは管理がしやすく病気や害虫にも強く、比較的育て方は容易です。常緑多年草のため、毎年花がつき、育て方に左右されず生育します。
場所
カワラナデシコは日当たりのよい場所を好みます。耐寒性があり庭植えに適していますが、霜が降りる地域は栽培場所を工夫しましょう。鉢植えの場合、冬は場所に移動させて霜を避けます。ベランダで管理するときは、階数が上にいくほど風が強くなるため、時折、場所を変えて日当たり加減や風通しを調整しましょう。
用土
カワラナデシコは酸性に弱いです。酸度を測定するには、pH測定液やpH測定器を利用します。水はけのよい土を作るには、赤玉土2:日向土3:桐生砂5の割合がよいでしょう。日向土は火山の噴火で排出された軽石砂の一種で、関西より西でよく手に入ります。関東方面は、富士砂や浅間砂で代替えできます。さらに水はけをよくする場合には、腐葉土を加えましょう。
植え付けと植え替え
カワラナデシコの植え付けや植え替えの時期は、3月~5月または9月~10月の花が咲く前または花が終わった頃が適しています。植え付けや植え替えを行ったあとはたっぷり水をあげましょう。植え替える目安は他の鉢より元気がない場合です。元気場ないカワラナデシコは、根詰まりを起こしている可能性があります。夏のあとで夏バテをしたり、水枯れをしたりしたときも植え替えて管理しましょう。
植え付け
植え付けの際は、用土の酸性度を下げておくようにします。中和するには苦土石灰を混ぜて、水はけがよいように腐葉土を混ぜ込んでおくとよいでしょう。元肥をあらかじめ混ぜておくと生育がよくなります。ポット苗を購入したときには、ポットの用土をそのまま利用するのではなく、落として用意した用土に植え付けて管理しましょう。
植え替え
カワラナデシコは生育がよいため、根詰まりしやすいです。鉢植えの場合には1年に1回、ひと回り大きな鉢に植え替えます。株が増えすぎている場合は、根鉢を崩して地下茎を切り株分けします。鉢を大きくする場合は、株周りの用土を少しだけ落として鉢に植え替え、周りに新しい用土を補って管理しましょう。
水やり
庭植えの場合は、夏場を除いて水まきをしなくても問題ありません。鉢植えの場合は、表面が乾いてからたっぷりと水を与えます。乾燥を好む品種のため、用土が乾ききってから水やりをします。時折、鉢から抜いて根周りの水分状態を調べて管理しましょう。蒸れは根腐れや病気の発生原因になります。
肥料
3月~5月、9月~10月の間、肥料で栄養を十分に与えます。肥料不足は株の元気さがなくなり、花付きに影響が出るため、株をよく観察して肥料をあげるか判断しましょう。開花時期には10日に1回くらいの割合で液体肥料をあげます。肥料には用土に混ぜるタイプと土の表面に置いておくタイプ、液体タイプがあります。使いやすい肥料で問題ありません。
手入れ
花が咲いたあとはこまめに花殻を摘み取ります。完全に終わったあとは茎を元近くから切り戻して、株が蒸れるのを防ぎましょう。花が多く咲くと株が劣化するのが意外に早いです。早めに株分けをして肥料を与え、次の株を育てるとよいでしょう。水を与えても元気がないときは、真夏でも植え替えをして管理します。
病気と害虫
比較的病気に強く、害虫もあまりつきません。害虫に気づいたらすぐに駆除します。病気や害虫が付かないよう常日頃からの管理が大事です。よく日に当てて水はけのよい用土を維持し、株が元気な状態を保つようにします。気をつけたい病気や害虫は、うどんこ病や立枯病、アブラムシやヨトウムシなどです。病気や害虫予防のためとはいえ、薬剤に頼りすぎないようにしましょう。
カワラナデシコ(河原撫子)の花言葉
古くから愛しい子を撫でるようにかわいいといわれているカワラナデシコには「懐草(なつかしぐさ)」の異名があります。万葉歌人たちが、愛する人をカワラナデシコの花にたとえて、多くの歌を詠んでいます。数多い品種があるナデシコ科の花は、ヨーロッパの国々で独特の花言葉が添えられて、人々親しまれているのでしょう。
花言葉
花言葉は「大胆」「可憐」「純愛」です。花の色によっても花言葉が違います。ピンクは「純粋な愛」、赤は「純粋で燃えるような愛」、白は「器用、才能」です。品のある清楚な花にぴったりの花言葉です。英語名は「pink」で、ピンク色は撫子色を指していました。フランスでは「小さな眼」、オランダ語では「まばたき」に関連する花言葉がついています。
まとめ
近年、徐々に自生しているカワラナデシコは見かけられなくなってきたようです。そのため、家で可憐な花姿を楽しむのがおすすめです。丈夫で育てやすい花であまり手がかからず、初心者が育てるのにも向いています。病気や害虫にも強く、鉢植えで十分育つため、ベランダ園芸にいかがでしょうか。
出典:写真AC