クソニンジンってどんな植物?
口に出して読むには少しためらわれるようなこのクソニンジンという植物。ニンジンという名前ですが、実はヨモギの仲間です。今回は、クソニンジンの特徴的な外見と効能をご紹介致します。
名前の由来
クソニンジンは、悪臭と言われるほど独特の異臭を放つことと、葉がニンジンに似ていることが名前の由来となっています。しかし、英名は「スイートアニー(sweet annie)」というかわいらしい名前がついています。日本と海外ではずいぶん印象が違うようです。
ボタニ子
クソニンジンの特徴
ニンジンのような葉
小さな黄色い花
花期は8月頃~10月頃で、小さな黄色い花を咲かせます。株は直立に1m~2mになるため、国内のヨモギの種類のなかでは最大級の大きさとなります。
生薬としてのクソニンジン
薬用植物として渡来
中国の明朝時代に書かれた薬学書「本草綱目」に既に記載のあった伝統のある薬草であるクソニンジン。その中国から薬用直物として渡来しました。当初は、皮膚病に効く薬草として非常に重宝されました。今では、野生化し、本州以南の畑や河原、市街地などに自生しています。
紛らわしい名前
クソニンジンの植物としての中国名は「黄花蒿(おうかこう)」といい、生薬としては「青蒿(せいこう)」といいます。一方で、中国名の「青蒿(せいこう)」は、カワラニンジン(こちらもヨモギの仲間)を指す言葉です。
ボタニ子
ちょっぴりややこしいですね。
クソニンジンの効能
生薬としてのクソニンジンの効能については、大きく分けて次の3つがあげられます。
✔ 解熱作用
✔ 止血作用
✔ 皮膚病治療
薬用部位は?
クソニンジンの薬用部位は、葉、茎、花の地上部の全草を利用することができます。乾燥させたものを使用します。
マラリア特効薬としてのクソニンジン
マラリアとはどんな病気
マラリアは、マラリア原虫に感染することで引き起こされる病気で、人から人への感染ではなく、ハマダラカという蚊によって媒介されます。現在なお、100以上の国で流行しており、世界保健機構(WHO)の推計によると、罹患者は年間2億人以上、200万人の死亡者がでるほどです。潜伏期間を経て、頭痛、発熱、悪寒と震えをきたし、高熱が持続します。診断や治療が遅れると意識障害や多臓器不全により致死的となることもある非常に恐ろしい病気です。
アルテミシニンの発見
中国でのマラリア治療薬の研究が進められるなか、クソニンジンの有効性が確認されました。その後、1972年に中国人女性科学者、屠呦呦(Tu Youyou)博士らは、その有効成分がアルテミシニン(artemisinin)であることを明らかにしました。しかも、クソニンジンには、同じ成分を含むカワラニンジンの3倍のアルテミシニンを含有していることも確認されています。
ノーベル賞の受賞
この功績により屠呦呦博士は、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。中国国内で研究を続けてきた中国人科学者にノーベル賞が授与されるのは初、中国人の女性としても初のことでした。85歳で成し遂げた偉業です。日本はマラリアとは無縁な国であることから、アルテミシニンという医薬品はほとんど知られていませんが、現在では、アルテミシニンとその誘導体が抗マラリア薬として世界中で利用されています。
がん治療にも有効?!
自然由来の抗がん剤
このアルテミシニンは、白血病、大腸がん、肺がんなどの様々ながん細胞に対して抗腫瘍効果があることが証明されています。注目したいのは、「自然由来」であること。現在使われている抗がん剤のような細胞全てを破壊する治療ではありません。身体にやさしいがん治療薬というわけですね。
アルテミシニンの含有量はカワラニンジンの3倍
見た目はよく似ているクソニンジンとカワラニンジンですが、その違いは、香りだけではありません。クソニンジンのアルテミシニン含有量は、カワラニンジンの約3倍であることが確認されています。
ボタニ子
抗がん剤としては、今はまだ動物実験の段階ですが、今後の研究が待ち遠しいですね!
クソニンジンまとめ
いかがでしたでしょうか。クソニンジンのことをいろいろ知ると、その名前が失礼過ぎると思ってしまうほど、私たち人間にとって、効能・効果のある有益な植物だということが分かります。マラリア治療薬として、また自然由来の抗がん剤として、これからますます注目されていくでしょう。今回の記事を通して少しでも、クソニンジンという植物に興味を持っていただけたら幸いです。
日本では、雑草扱いだったことも関係しているのかも・・・