節分草ってどんな植物?
基本情報
学名 | Eranthis pinnatifida |
属性 | キンポウゲ科 セツブンソウ属 |
分類 | 多年草の山野草 |
原産地 | 日本(関東以西の本州) |
開花時期 | 2月~4月上旬 |
草丈 | 10~20cm |
節分草は日本原産の山野草で、2月の節分のころに咲くことからその名前が付けられました。実際には節分を少し過ぎた2月中旬に、里山や森林の明るい半日陰で2cmほどの小さな白い花を咲かせます。開花は春本番を迎える4月上旬までで、その後は球根を残したまま地上の葉や茎は枯れ、再び根を伸ばす秋まで休眠に入ります。花が少ない時期に咲くため、希少価値のある山野草として年々人気が高まっているのもうなずけるでしょう。
節分草の特徴
花の特徴
節分草は2cmほどの白い花を、1本の茎に1輪だけ咲かせます。花びらは5枚、鮮やかな黄色や青色のしべがとても美しい花です。実は花びらに見えるものは萼(がく)で、黄色いしべのように見えるものが本来の花びらが退化したものです。この黄色のしべのようなものは蜜槽(みつそう)といい、糖分を含んだ花蜜を分泌する腺です。たくさんの青いしべは雄しべ、その雄しべに囲まれている数本の白っぽいものが雌しべです。
葉の特徴
節分草の葉は銀色がかった緑色の小さな葉で、1本の茎に5枚の葉が付きます。花を包むように広がる葉は、深い切れ込みが入った形で、菊の葉によく似ています。
ボタニ子
節分草って、あの花とちょっと似ていない?
節分草はクリスマスローズに似ていませんか?
節分草と園芸種でよく知られているクリスマスローズは、同じキンポウゲ科の植物です。大きさや葉の形などは違うものの、よく似ている花だという印象を受ける人も少なくないでしょう。特にしべのあたりが似ている箇所です。クリスマスローズの花びらも萼が変化したもので、これはキンポウゲ科の植物の大きな特徴です。
ボタ爺
節分草と、ほかのキンポウゲ科の植物と見比べてみよう!
節分草の育て方
節分草のような山野草は育てるのが難しいと思われがちですが、コツを押さえれば自宅の庭でも育てて花を咲かせられます。コツを知り、早春の庭に節分草を咲かせましょう。
節分草の栽培カレンダー
育て方①栽培環境
半日陰の涼しい場所で栽培
節分草は落葉樹林で咲く植物で、庭でもその環境に整えることが大切です。強い日差しを避けて、半日陰の涼しい場所で育てましょう。耐寒性があり秋から冬にかけて生育するため、冬の寒さよりも夏の暑さに対して注意が必要です。山野草栽培の初心者であれば、庭に地植えするより鉢植えで季節ごとに移動させる育て方が安心かもしれません。
育て方②用土
水はけのよい土を好む
節分草は、通気性と水はけのよい土を好みます。地植えなら植える前に水はけはよいか確認しておきましょう。鉢植えの場合は深めの鉢を用意し、赤玉土5:鹿沼土4:軽石小粒1程度の比率で配合しましょう。
ボタニ子
土壌改良の方法は以下も参考にしてね。
育て方③植え付け・植え替え
植え替えは休眠期間中に
植え付けや植え替えに適した時期は、節分草が休眠する8~9月です。休眠期は地上部は枯れているため、地中の球根を掘り起こして新しい土に植え替えます。
育て方④水やり
加湿にならないように
開花中は1日1回、涼しい時間帯に水をやります。花後の休眠期間中は乾燥気味にして、乾ききってしまわない程度に適度に水を与えましょう。
育て方⑤肥料
肥料は開花時期だけ
節分草は多くの肥料を必要としません。花が咲いている間から地上部が枯れるまでの3~5月に、液体肥料を2週間に1回程度与えましょう。
育て方⑥増やし方
種まきで増やす
節分草の増やし方には、球根の分球での増やし方と種まきでの増やし方がありますが、種まきのほうが比較的簡単です。4月ごろ、花が咲き終わった後にできた種を採取します。4~5月が種まきの時期で、まいた種の上に5mmほど土をかぶせておきます。発芽までは1年近くかかるため、乾燥しないように気をつけながら暗い場所で管理してください。
ボタ爺
ただ、種まきしてうまく発芽しても1年目の苗はまだひ弱じゃ。しかも花が咲くまでにはあと1~2年待たなければならんぞ。
ボタニ子
「なかなかセツブンソウの花が咲かない!」と焦らないで、ゆっくり気長に育てようね。
節分草の自生地・群生地
山野草の節分草は、日本の関東以西の林や山のすそで自生・群生します。見事な群生で注目を集める場所もありますよ。早春のハイキングで観察に行ってみましょう。
自生地・群生地①栃木県栃木市四季の森星野
節分草は関東以北の寒い地域では自生していないため、栃木市が北限の群生地です。日本最大級の広さで、一面に咲く節分草は見ごたえがありますよ。ほかにも梅やロウバイ、福寿草などのさまざまな早春の花を見られます。
自生地・群生地②埼玉県秩父郡小鹿野町
関東地方のもう一つの群生地が、埼玉県秩父にあります。広大な敷地に節分草が絨毯のように咲いている様子は幻想的です。秩父は都内からもアクセスがよいため人気のスポットで、節分草が咲く時期には多くのカメラマンや観光客でにぎわいます。3月には「節分祭り」が催され、甘酒がふるまわれたり、たくさんの出店が出たりして、ファミリーで訪れるのにおすすめです。
ボタニ子
秩父郡小鹿野町は四季をとおして花が楽しめる「花の町」だよ!
自生地・群生地③兵庫県丹波市青垣町
群生地は関東だけでなく、西日本にもあります。兵庫県丹波市の群生地もその一つで、開花時期には地元住民でつくる保存会が主催の「森のせつぶん草まつり」が開催されます。ミニコンサートや出店があり、可憐な節分草を見ながら観光気分も味わえるでしょう。
自生地・群生地④広島県庄原市総領町
庄原市総領町は、西日本一の節分草の群生地といわれています。町内には20カ所ほどの群生地があり、その中でもアクセスがよくておすすめなのが道の駅リストアステーション周辺です。駐車場があるため車で行く場合は便利ですよ。こちらも開花期間中はイベントがあり、節分草の苗の販売も行われています。道の駅を中心に、あちこちにある群生地を訪ねて回るのもよいですね。
節分草の保護
準絶滅危惧品種に指定
節分草は絶滅の恐れが高い植物として、環境省から準絶滅危惧品種に指定されています。節分草だけではなく、可憐な山野草は昔から人気が高く乱獲されることが問題になっています。さらに近年は異常気象や山林の開発などの環境破壊でどんどん自生地が少なくなり、節分草は希少植物になりつつあるのが現状です。
地元住民による保護活動
「このままでは種が絶えてしまうかもしれない」という危機感から、地元住民による節分草の保護活動が盛んになってきました。節分草の自生地で開催されるお祭りもその一環で、保護啓発のイベントも行われています。失った自然は二度と元通りにはなりません。地元の方だけでなく見に行く側も、節分草を保護しようという気持ちを持つことが大切といえるでしょう。
ボタニ子
「群生地だし、たくさん咲いているから一株くらい持っていってもいいか…」なんて思っちゃだめだよ!苗は購入しようね。
可憐な節分草を育ててみよう!
節分は日本の暦の上で冬から春への季節の分かれ目で、豆まきも親しみのある行事です。そんな時期に咲く可憐な節分草を愛でる気持ちは、今も昔も変わりません。ぜひ自分の手で、希少になりつつある節分草を育ててみましょう。
出典:筆者撮影