ツタウルシ(蔦漆)とは?
日本が原産地のひとつ
ツタウルシ(蔦漆)はツルを伸ばして成長する植物で、日本が原産地のひとつになっています。日本のほかツタウルシの原産地は中国・朝鮮半島・サハリンなどがあり、日本のポピュラーなウルシ科の植物にはウルシ(漆)やヤマウルシ(山漆)などもあります。
ツタウルシは落葉蔓性植物
秋になると紅葉する落葉蔓性植物のツタウルシは、ツルから「気根」と呼ばれる根を生やし、石や木に絡み付いて上へ伸びていきます。
ツタウルシの基本情報
名前 | ツタウルシ(蔦漆) |
分類 | ウルシ科/ウルシ属 |
生息地 | 北海道、本州、四国、九州 |
開花時期 | 5月~6月 |
花色 | 薄い黄緑色 |
用途 | 染料 |
ボタニ子
ツタウルシの特徴1:葉っぱ
三つ又に分かれた葉っぱ
ツタウルシの葉っぱは、葉柄の先端で三つ又に別れて生じます。葉っぱの形は楕円または卵形で葉先は尖り、三つ又に分かれた真ん中の葉っぱは大きさが5cm~15cm、両脇が5cm~12cmと真ん中より少し小さめ。葉っぱにはつやがあり色は濃いめの緑で、葉の表側には短毛がありませんが、裏側の脈にそって短毛が生えています。
秋になると色づき落葉する
ツタウルシの葉っぱは秋になると鮮やかな黄色や茜色に変わり、冬の前に落葉します。葉っぱはすべて落ちてしまいますがツルは残ったままなので、木に絡みついた姿がしっかりと観察できます。
葉の用途
葉は染料として利用
ツタウルシのツルからは漆器や木工品などで使われる樹脂塗料は取れませんが、葉は染料剤として利用できます。
ツタウルシの特徴2:花
開花時期は5月~6月
ツタウルシの開花時期は5月~6月で、葉柄と葉柄がまたになっている部分や、ツルからじかに花の軸を伸ばして無数のつぼみをつけます。花は雄花と雌花が別々につく雌雄異株で、どちらも薄い黄緑色をしており花びらが反るのが特徴です。
ツタウルシの特徴3:気根
ツルに生える気根とは?
ツタウルシは気根と呼ばれる根っこを地上で伸びるツルから生やします。気根はほかの樹木の樹皮にガッチリと張り付き、呼吸や水分を収集する役目をはたしています。
そのほかの気根の機能
ツタウルシのほかにも気根を生やす植物があります。トウモロコシから生える気根は茎を支える支柱のような役目をはたし、シダ類のヘゴは気根に水分を蓄える保水の役目をはたしています。
ツタウルシは触ると危険?
ツタウルシはツルや葉、樹液などに直接触るか、そばによっただけでかぶれをおこす危険な植物です。登山や山菜取りなどで山に入り、うっかり触ってしまった、または知らないうちに触って皮膚がかぶれてしまうことがあります。皮膚かぶれの症状は数時間から2日後にあらわれ、ひどいかゆみをともないます。
皮膚かぶれやかゆみの原因
かぶれやかゆみの原因は、ツタウルシの樹液が持つ「ウルシオール」という毒成分にあり、直接樹液に触ってしまうとアレルギー性皮膚炎をおこすこともあります。一方で多くのウルシ科植物の樹液に含まれるウルシオールは、漆器などに塗ると黒色に変化し凝固する特性を持ち、食器や工芸品作りにかかせない樹脂塗料の成分です。
そのほかの症状
ツタウルシに触れるとアレルギー性皮膚炎や赤い発疹とかゆみをともなったかぶれのほかに、「水疱」といった症状がでることもあります。症状が治るまでかゆみ等で皮膚をかいてしまい、うっかり水疱を傷つけてなかの液体がでてしまうこともありますが、液体に触れても水疱やかぶれ等の症状がほかの人にうつることはありません。
ウルシかぶれに効く薬
薬用成分の「ヒドロコルチゾン酢酸エステル」が入った薬には、ウルシかぶれによるかゆみや炎症を抑えしずめる効果があります。ヒドロコルチゾン入りの薬は、薬局やドラッグストアで手軽に購入することができますが、いちど医師や薬剤師に相談してからの使用をおすすめします。
ツタウルシの駆除方法
駆除の方法は?
ツタウルシは以下の方法で駆除することができます。
- 根元から切って駆除する。
- 除草剤で駆除する。
駆除後の注意点!
根元から切ったツルや、除草剤で枯れたあとのツルを焼却処理してはいけません。ツルが燃えたときに毒成分のウルシオールが舞い上がり、それを吸い込んでしまうとアレルギー反応をおこす危険性があるます。駆除後は地中に埋めるか人の寄り付かない場所にまとめ、ブルーシートをかけるなどして毒成分の飛散を防ぎましょう。
ウルシの種類
ツタウルシノのほかにもウルシには種類があります。ここでは2つの身近なウルシ科の植物、その特徴と見分け方を紹介していきます。
種類1:ウルシ(漆)
ウルシ(漆)は落葉高木
ウルシ(漆)は高さが3m~10mに成長する落葉高木で、樹皮は灰色やまだらの白色、6月ころに黄緑色の花を咲かせます。ウルシに傷をつけて採取する樹液は、天然の樹脂塗料として古くから漆器や木工品に利用されています。
ウルシの見分け方
ウルシは「落葉高木」「葉軸や葉柄が赤い」「葉が対生に生じる」などで見分けます。
種類2:ヤマウルシ(山漆)
ヤマウルシ(山漆)は落葉低木
ヤマウルシ(山漆)は成長しても高さが3m~8mと低い落葉低木で、樹皮は灰色で縦に亀裂が入り、5月ころに小さな黄緑色の花をたくさん咲かせます。ウルシと同じく樹液は塗料として利用され、9月~10月ころに熟す果実からは木蝋(モクロウ)が採れます。
ヤマウルシの見分け方
ツタウルシは「落葉低木」「対生に生じる葉は上にいくほど大きい」「葉にはツヤがなくざらつく」などで見分けます。
まとめ
ツルから生える気根を使い、ほかの樹木や植物にガッチリと絡み付いて成長するツタウルシ。そのツルや葉などに触る、または近寄るだけで皮膚かぶれやかゆみ、アレルギー反応などひきおこす可能性がある危険な植物ですが、葉は染料として利用でき、秋には色鮮やかな紅葉も楽しめます。紅葉を見るさいは肌の露出を防ぎ、ツルから離れて観賞するようにしてください。
ツタウルシは北海道から九州まで日本の広い範囲に生息し、山地の落葉樹林の多い場所で見ることができます