キカラスウリってどんな植物?
基本情報
和名 | キカラスウリ(黄烏瓜) |
学名 | Trichosanthes kirilowii var. japonica |
英名 | Trichosanthes |
科 | ウリ科 Cucurbitaceae |
属 | カラスウリ属 Trichosanthes |
原産地 | 東アジア(中国、モンゴル、日本、ベトナム) |
形態 | つる性多年草 |
草丈 | 2~5m |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
名前の由来
キカラスウリという名前は、近縁のカラスウリの果実が熟すと赤く色づくのに対して、果実が黄色いままであることに由来します。なぜカラスなのかは不明です。東北の雪深い地域では両者ともにカラスが食べることもあるようですが、ほかの地域では確認できていません。
花言葉
キカラスウリの花言葉は「平凡の非凡」です。ありそうでない、平凡に見えてそうではないキカラスウリの特徴にちなんでいるのでしょう。ちなみに、カラスウリの花言葉は「よき便り」「誠実」「男ぎらい」です。「よき便り」はカラスウリの種子が結んだ手紙のような形に由来します。
キカラスウリの特徴
特徴①花
キカラスウリは雌雄異株の植物です。雌花には子房(雌しべの基部の膨らんだ袋状の部分)があるため、つぼみがついたら雄株と雌株の判断ができます。7~9月ごろに開花するキカラスウリの白い花はとても特徴的です。萼筒(ガクトウ)が長い白い花は5枚の花びらの先端が細かく裂け、細い糸が噴き出しているようにも見えます。
開花時間
キカラスウリの花が咲くのは夜中で、夕方から咲き始めます。夜間に活動するスズメガに花粉を運んでもらう植物は、キカラスウリのように夜に花を咲かせるという特徴をもちます。夜に咲く花は夜間でも目立つよう白や黄色の花をつけ、よい香りでガなどの昆虫をおびき寄せるのです。
カラスウリの花との違い
名前がよく似たカラスウリは、キカラスウリと同じように花びらの縁部が細い糸状でレース編みのヴェールをかけたように繊細です。キカラスウリもカラスウリも花が咲き出すのは夕方ですが、カラスウリが明け方にはしぼむのに対して、キカラスウリは夜が明けてからも咲いていることがあります。
カラスウリの開花時期との違い
キカラスウリとカラスウリには開花時期に違いがあります。カラスウリは7~8月ごろにかけての約1カ月間、対してキカラスウリの開花期間は7~9月ごろです。キカラスウリの開花時期はカラスウリより約1カ月長いのが特徴です。
特徴②葉
キカラスウリの葉は表面にツヤがあり無毛、または毛が少なく手触りはザラザラしています。深緑色の葉は浅く3~5裂し、先端は丸みをおびるか尖っています。若葉は青みがかった緑色で、葉脈がはっきりしているのが特徴です。
カラスウリの葉との違い
キカラスウリとカラスウリの葉の違いは触るとわかります。キカラスウリの葉はザラザラとした手触りですが、カラスウリのハート型の葉の表面は毛におおわれ、さわるとふわふわです。
特徴③つる
キカラスウリはつる性の植物で、つるをのばして周囲のものやほかの植物に絡みついて成長します。緑色のつるは晩秋、果実が黄色く色づくころには枯れて茶色くなり、黄色の果実の色が目を引きます。
カラスウリのつるとの違い
キカラスウリのつるは1年で枯れることなく、つるの主となる部分は太く木質化します。カラスウリのつるはその年には枯れてしまうところがキカラスウリとの違いです。
特徴④実
秋になるとキカラスウリの雌株は球形、またはアーモンドのような形の大きな果実をつけます。直径10~15cmほどの浅い凹凸のある果実は、最初は緑色です。秋が深まって結実後約2カ月で黄色く色づきます。熟した果実の中の果肉は甘みもあり食べられます。種子はウリ科に共通する扁平な楕円形で、スイカの種を大きくしたような形です。
カラスウリの実との違い
キカラスウリの実が12月ごろ黄色く色づくのに対して、カラスウリの果実は9月ごろに熟して赤く変化します。大きさはキカラスウリのほうが大ぶりで、ずっしりと重くなります。キカラスウリの種子がウリ科によくみられる形であるのに対して、カラスウリの種子はカマキリの頭のような独特の形です。
特徴⑤根
地中にできるキカラスウリの塊根はサツマイモに似た不整の円柱形で、デンプンを豊富に含むことが特徴です。年数を重ねた塊根は2kgを超えることもあります。塊根からのび出たつるが越冬を繰り返すと木質化し、そこから新芽を出します。
カラスウリの根との違い
キカラスウリの塊根の大きさは、カラスウリのものに比べると大きいです。カラスウリの塊根の表面には細かいシワが多く、キカラスウリは比較的なめらかです。
キカラスウリの効果・効能
効果①口の渇きをおさえる
中国最古の薬物書「神農本草経(シンノウホンゾウキョウ)」には、キカラスウリの根は熱病による口の渇きに効果があると記載されています。キカラスウリの塊根を秋に堀り取って洗い、コルク質の皮をはぎとって乾燥させ「カロコン(栝楼根)」という生薬に加工されます。塊根が十分に肥大し、美しい白色で苦みが少なく、きめ細かな粉状のものが良品とされます。
効果②咳を鎮める
カロコンは漢方では、解熱や鎮咳(チンガイ、咳を抑える)を目的に、虚弱な人の口の渇きがある疾患に用いられます。カロコンが含まれる漢方薬は、柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)、柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)、栝楼桂枝湯(カロケイシトウ)などです。
効果③肌荒れ改善
キカラスウリの果肉は粘りがあり、しもやけやひび割れなどにすりこむと肌荒れを抑える効果が期待できます。カラスウリの果実や果汁にも同じように、しもやけや肌荒れをケアする効果が認められるといわれます。
キカラスウリの用途
食用
キカラスウリの果実は完熟すると果肉の甘みが増し、おいしく食べられます。未完熟の実は塩漬けやみそ汁の具として利用します。初夏~夏にかけて出る若芽は、さっと湯通しして和え物、炒め物にしてもおいしく、生のまま天ぷらや煮物にも利用可能です。飢饉のときには、キカラスウリの根のデンプンは葛(クズ)と同じように使われました。
グリーンカーテン
キカラスウリもカラスウリもつる性の植物のため、夏の暑さ対策のためのグリーンカーテンとしても人気です。種まきで簡単に増やせるため、花も実も楽しめるグリーンカーテンにキカラスウリを植えてみてはいかがでしょうか。
ベビーパウダー
かつてキカラスウリの塊根に含まれるでんぷんは天花粉(テンカフン)と呼ばれ、子どものあせもなどの予防などに用いられていました。キカラスウリのデンプンからつくるパウダーは手間がかかるため、現在ではベビーパウダーはコーンスターチやタルク(滑石)で作られています。
天花粉の作り方
- 秋~初冬にほり取ったキカラスウリの塊根をきれいに水洗いして細かく砕く
- ミキサーに根と水を加え撹拌する。ゴミを取り除く作業を何度か繰り返す
- 白いデンプンを沈殿させ布でこし、天日で乾燥させれば天花粉の完成
キカラスウリの育て方
栽培環境
キカラスウリは日当たりのよい場所を好みます。葉にはしっかりと日光があたる場所を選びます。用土は水はけがよく、保水性のある肥えた土を準備しましょう。
種まき
冬に完熟したキカラスウリの果実から種子を取り出し、乾燥しないうちに土にまきます。土が乾いたら水をたっぷり与えて管理すれば、春に発芽します。キカラスウリは雌雄異株のため、結実させたい場合は雌雄株が必要です。
管理方法
キカラスウリは根付いてしまえば水やりは必要ありませんが、鉢植えでは土が乾いたら水を与えます。キカラスウリはつる性の植物のため、つるが絡みつくフェンスやネットが必要です。冬には枯れたようになりますが、越冬するときの特別な手入れは必要ありません。株が大きくなるため、1~2年に1回はひとまわり大きな鉢に植え替えましょう。
まとめ
キカラスウリはグリーンカーテン以外にもさまざまな用途がある植物です。夜にしか咲かない幻想的な花とデコレーションとしても活躍する黄色い実を楽しんでみてください。昔ながらのベビーパウダーを手作りしてみるのもおすすめですよ。
出典:写真AC