ハハコグサとは?
ハハコグサとは、道端や水田に生育しているキク科ハハコグサ属の植物です。全体に白い綿毛が生えており、春の七草のひとつであり「御形」として知られています。
基本情報
学名 | Gnaphalium affine |
分類 | キク科ハハコグザ属の越年草 |
分布 | 中国、インド、マレーシア、日本 |
別名 | 御形 |
花期 | 4月~6月 |
ハハコグサは古くから日本で生育している植物ですが、縄文時代に稲や麦などと一緒に朝鮮半島経由で入ってきた史前帰化植物の一種です。
葉の特徴
ハハコグサの葉は、根出葉と茎葉の2つがあります。根出葉は、根本からロゼット状に生える葉のことで、茎葉とは、その名の通り茎から生える葉のことです。ハハコグサの葉は、白い綿毛に覆われているため、全体的に白っぽく見えるのが特徴です。特に葉の裏面はより白っぽく見えます。厚みがある葉も特徴です。
根出葉
根出葉は、冬の間のみ、ややロゼット状になります。花が咲いている時期は、根出葉は枯れてしまいます。
茎葉
茎葉は互生で、互い違いに生えます。大きさは2cm~6cmほどで、へらの形をしています。
茎葉は、へら形です!白い綿毛があるのも特徴です。
茎の特徴
ハハコグサは、冬の時期はロゼット状で過ごしているため、茎が短いです。春の時期になると、茎をのばし、先端に花をつけるようになります。茎の先は分かれ、高さ10cm~30cmほどに成長します。葉にも、白い綿毛があるように、茎にも白い綿毛が生えているため、全体的に白っぽく見えます。
茎にも白い綿毛が生えているのがわかりますね!
茎の先が分かれ、花がついていますね!
花の特徴
花期は4月~6月で、春から夏の季節に花を咲かせますが、秋の季節に花をつけることもあります。茎の先端に頭状花序でつぶつぶした細かい黄色い花を多数咲かせます。花は中央に筒状の両性花と、その周りに細い糸状の雌花があります。ハハコグサには舌状花はありません。総苞は球鐘形で、総苞片は3列で果実が熟すと開きます。
たくさんの黄色い花がありますね。タンポポみたいな舌状花はありません。
総苞片が開いているので、果実は熟したあとですね!
果実の特徴
ハハコグサはそう果です。果実は長さ0.5mmの長楕円形をしています。淡白色の冠毛があるのが特徴です。また、そう果の表面には乳頭状の突起があります。
そう果のまわりに冠毛があるのがわかりますね!
ハハコグサの芽生え
ハハコグサは秋になると発芽し、芽を出します。その後、冬をロゼット状で過ごし、翌年の春になると根本で分かれた茎をのばして立ち上がります。若葉のころから、ハハコグサの葉には白い綿毛があります。
ハハコグサの名前の由来
ハハコグサは漢字で書くと「母子草」です。なぜ、母と子なのか、ここでは名前の由来と花言葉について紹介します。
名前の由来
ホウコグサ
ハハコグサは全体が白い綿毛で覆われています。このことを昔は「ほうけ立つ」と言い、ホオコグサと呼ばれていました。これが転じてハハコグサとなった説です。
母が子を支える
ハハコグサ全体が白い綿毛に覆われていて、茎の上に多数の花を付けます。この花を、白い綿毛の生えた茎が支えているように見えることから、母が子を優しくつつむようだと思い「母子草」となった説です。
母子餅
昔、ハハコグサは母子餅と呼ばれていた草餅の材料とされていました。このことから、ハハコグサという名前がついた説です。
葉っこ草
ハハコグサの草を団子にして食べたことから「葉っこ草」と呼ばれていて、これが転じてハハコグサになったという説です。
学名の由来
ハハコグサの学名は「Gnaphalium affine」です。属名はギリシャ語で「gnaphallon(むくげ・フェルト)」が由来となっています。「affine」は近似、関係があるという意味です。
花言葉は?
ハハコグサの花言葉は「いつも想っています」「忘れない」「無償の愛」です。花言葉の由来は、ハハコグサは漢字で書くと「母子草」です。そのため、母が子に無償の愛を注ぐ姿や慈しむ姿がハハコグサの花言葉の由来となっています。
ハハコグサの用途
ハハコグサは、薬効や食用としての用途があり、利用されていました。ここでは、薬効や食用としてどのように利用されていたのかご紹介します。
薬効
ハハコグサは、薬効として使うことができます。花が咲いているときに全草を採取し、水洗いして乾燥させたものを鼠麹草(そきくそう)と呼んでいました。鼠麹草は、お茶にして飲むことができました。このお茶を飲むと、咳止めや内臓に効くとして古くから利用されていました。ただし、伝統的な漢方方剤としては使用されていませんでした。
鼠麹草と呼ばれる理由
薬効としてのハハコグサの名前ですが、葉に白い綿毛があり、形がネズミの耳のような形であることから、鼠という字があてられています。麹は、花がつぶ状で黄色い麹に似ていることからこの名前になりました。
食用
ハハコクサは食べることもできます。主に若葉を食べていました。食べ方としては、お粥、草餅、草団子、天ぷらとして食べます。昔、草餅はハハコグサの若葉で作っていました。ハハコグサを練りこませて作った草餅を「母子餅」といい、草餅の主流でした。現在の草餅の主流はヨモギですが、ハハコグサからヨモギに変わった理由は、「母と子と潰すのは縁起が悪い」もしくは「ハハコグサで作った草餅の色が薄い」という理由でヨモギが使われるようになった説があります。
ハハコグサは春の七草
ハハコグサは、春の七草のひとつである「御形」です。ここでは春の七草のことや、ハハコグサの別名である「御形」の由来や意味を紹介します。
春の七草
春の七草は、無病息災や邪気を払うために1月7日(人日の節句)の朝に春の七草が入った七草がゆを食べるという風習があります。この風習は平安時代に中国から伝わってきたもので、江戸時代に幕府が五節句を公式行事にしたことより庶民へと広まっていきました。七草の種類は「芹、薺、御形、繁縷(はこべら)、仏の座、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)」の七種類です。ハハコグサは、七草のうちの御形にあたります。
御形の意味
御形とは「身体の穢れを清める」という役割を持っています。名前の意味としては御形は「人形(ヒトガタ)」という意味を持っています。「ヒトガタ」とは、紙で作られた人形のことで、この「ヒトガタ」を川に流し、穢れを払ったとされています。ハハコグサは「ヒトガタ」に使われていたので、御形と呼ばれるようになりました。
ハハコグサに似ているチチコグサ
ハハコグサの仲間に、ハハコグサに似ている野草があります。その植物ハチチコグサといい、名前も似通っています。一緒にはえていることもあるため見間違えていることもあるかもしれません。ここでは、ハハコグサとチチコグサの違いを紹介します。
チチコグサ
チチコグサとは、キク科ハハコグサ属の多年草です。ひなたの草原にい生える背の低い野草です。ハハコグサににて、白い綿毛が生えていますが、見えているところには綿毛が生えていないので、見た目は緑色に見えます。チチコグサの特徴は、花茎の先端に多数の茶色い花をつけるところで、基部の先端から出る苞葉が星形に広がります。チチコグサもハハコグサと同様に根出葉と茎葉があります。花期は5月~10月で、根出葉は花期のときも残ります。
チチコグサの名前の由来
チチコグサは漢字で書くと「父子草」です。チチコグサの名前は、ハハコグサにちなんでつけられたものです。ハハコグサは黄色い花をつけるのに対して、チチコグサは茶色い花をつけます。この、ハハコグサに比べて地味というところが「母」と「父」にたとえられてつけられたといわれています。
ハハコグサとの違い
チチコグサはハハコグサと同様、白い綿毛を全草に生やしています。違うところは、ハハコグサは根出葉は花期にはなくなるのに対して、チチコグサは残っています。また、チチコグサは横に這うように茎をのばしますが、ハハコグサの茎は横に這うようにはなりません。なによりの違いは花の色です。ハハコグサは黄色い花で、チチコグサは茶色の花を咲かせます。
ハハコグサのまとめ
春の七草の「御形」をハハコグサだと知らなかった人も多いのではないでしょうか。ハハコグサは道端に生える普通の野草です。その全体は白い綿毛に包まれているため、目立つことでしょう。黄色い花をつけている白っぽい野草を見かけたら、ぜひ観察してみてくださいね!きっと、それはハハコグサであり、毎年七草がゆで食べていたり、咳止めのお茶として飲んだことがあるかもしれませんよ!
左右の葉が互い違いに生えています。互生ですね!