ヌスビトハギ(盗人萩)とは?名前の由来やくっつく特徴などをご紹介!

ヌスビトハギ(盗人萩)とは?名前の由来やくっつく特徴などをご紹介!

ヌスビトハギとはマメ科ヌスビトハギ属の多年草です。花は小さいですが、果実は見たこともある人は多いのではないでしょうか。ヌスビトハギはひっつき虫と呼ばれている植物の一つです。そんなヌスビトハギの特徴や名前の由来、くっつく理由など紹介します。

記事の目次

  1. 1.ヌスビトハギってどんな野草?
  2. 2.ヌスビトハギの名前の由来や花言葉
  3. 3.ヌスビトハギのひっつき虫としての特徴
  4. 4.ヌスビトハギ以外のひっつき虫
  5. 5.ひっつき虫の取り方
  6. 6.ヌスビトハギの近縁種
  7. 7.ヌスビトハギのまとめ

ヌスビトハギってどんな野草?

ヌスビトハギは、里山・林縁にはえているマメ科ヌスビトハギ属の多年草の野草です。森の中を歩いている時、衣服に何かの種子のような物がひっついていることがあると思います。それがヌスビトハギです。

基本情報

学名 Desmodium podocarpum subsp. oxyphyllum
和名 ヌスビトハギ(盗人萩)
分類 マメ科ヌスビトハギ属
分布 中国、朝鮮半島、台湾、日本
花期 7月~9月

花の特徴

花期は7月~9月で、葉っぱの葉腋から総状花序を作ります。花序にまばらに花をつけるのが特徴です。花は、3mm~4mmで、萩特有の蝶型の花をつけ、色はピンク色に熟します。花は基部から順番に咲いていくので、先端の花が咲き始めたころ、基部の花は既に果実になっていることがあります。

花序に蝶型の花がまばらについているのがわかりますね!

葉っぱの特徴

ヌスビトハギの葉っぱは互い違いにつく互生で、三小葉です。てっぺんの小葉ははっきりとした柄があるのが特徴です。形はすべての小葉が卵型で、先端はとがります。てっぺんの小葉は、両側の小葉に比べて大きめの葉っぱです。葉っぱには、細かい毛がはえていて、厚みはありません。葉っぱの裏面は淡緑色です。葉柄についている托葉は、針状披針形です。葉脈が葉っぱの縁に届くのも特徴です。

3枚の三小葉というのがわかりますね。

托葉があるのがわかりますね!葉っぱのつきかは互生です。

葉っぱの裏面です。淡緑色で葉脈が縁に届いてますね。

果実の特徴

ヌスビトハギは節果です。節果は、マメ科特有の果実で、果皮が種子ごとに節を持っていて、種子1つごとに折れているものを、節果といいます。ヌスビトハギは、二節からできています。1つの節は半円形で、二節の間は大きくくびれます。果実の表面に密生したかぎ状の毛があります。熟すと、この二節はバラバラになります。

この果実の中に種子が入っています。

茎の特徴

ヌスビトハギは背丈60cm~100cmに成長します。しかし、その高さは半分が花穂です。茎は細くて硬く、根本は木質化します。茎から葉柄は垂直にはえます。

根本です。木質化していますね。

ヌスビトハギの名前の由来や花言葉

ヌスビトハギの名前は漢字だと「盗人萩」です。なぜ、盗人という名前がつけられているのか。ここでは、その名前の由来と花言葉を紹介します。

名前の由来

Photo byKatillustrationlondon

ヌスビトハギが、なぜ「盗人萩」の名前をつけられたか。それには、諸説あります。一つめが「果実の形が盗人の足跡に似ているため、盗人の名前がつけられた」です。これは、古来盗人は足音を立てないように、地下足袋をはきつま先だけで歩いていました。地面に残されたつま先だけの足跡が、種子の形に似ているからという説です。二つ目が、ヌスビト(果実)が気づかずに衣服にくっつく性質からとの説もあります。萩の部分の名前の由来は、花が萩のような蝶型であることに由来しています。

花言葉

ヌスビトハギの花言葉は「略奪愛」です。花言葉の由来は名前の「ヌスビト」に由来しています。それだけではなく、ヌスビトハギは大きく成長するので「人の土地を奪う」というのと、生き物ににくっついて種を運ばせる性質からもこの花言葉がつけられたとされています。

ヌスビトハギのひっつき虫としての特徴

ヌスビトハギは、人間の衣服や動物の毛にひっつくひっつき虫の一種です。ここでは、なぜヌスビトハギがひっつき虫なのか、どうやってひっついてくるのかを紹介します。

ひっつき虫ってなに?

ひっつき虫とは、かぎ、フック、棘で人間の衣服や動物の毛にひっつく植物のことです。かぎや棘ではなく、粘膜で張り付く植物もいます。ヌスビトハギもこのひっつき虫の一種です。ひっつき虫はひっついてくる物が種だと思われがちですが実は種ではなく、散布体として果実や小穂がひっついて運ばれることが多いです。

ヌスビトハギのくっつくメカニズム

ヌスビトハギの果実の表面は、かぎ状の毛がはえています。かぎ状の毛がマジックテープの役割をはたし、衣服にくっつくのです。ひっつく力はかなり強く、手で払っただけでは落ちません。ヌスビトハギは果実が散布体となりくっついていきます。

くっつく理由

ひっつき虫が、ひっつく理由は散布体としての役割を持っているからです。植物は動くことができないので、風や昆虫、もしくは生物にくっついて分布を広げるしかありません。ひっつき虫も生育範囲をを広げるための一つの手段であり、方法です。

散布体とは?

散布体とは、植物が散布に使用する単位のことです。ヌスビトハギだと、散布体は果実、散布方法はくっつくです。他の野草では、タンポポを例にあげますと、タンポポは綿毛となって分布を広げていきます。綿毛は種ではなく、果実です。なので、タンポポの散布体は果実、散布方法は風です。

ヌスビトハギ以外のひっつき虫

ひっつき虫はヌスビトハギだけではありません。ここでは、ヌスビトハギ以外のひっつき虫の植物を紹介します。

オナモミ属

オナモミ属とはキク科の植物の一種で、ひっつき虫の一つです。オナモミ属はキク科の中では特殊な花の構造をしています。花に見えるのは、花が集まった頭状花序であり、がくに見えるのは葉っぱです。この葉っぱが肥大し、硬くなり、果実を包んでしまいます。その表面には棘があります。この棘を人間の衣服や動物の毛にひっつき、ひっつき虫になります。

ヤブジラミ属

ヤブジラミ属はセリ科の植物の一種で、ひっつき虫の一つです。果実になると、表面に不規則に棘毛を密生させます。さらに棘毛には小さな突起があります。棘毛が人間の衣服や動物の毛にひっつき、ひっつき虫になります。

キンミズヒキ

キンミズヒキはバラ科キンミズヒキ属の多年草です。果実の花床筒に上向きに展開したかぎ状の棘があります。この棘が人間の衣服や動物の毛にひっつき、ひっつき虫になります。

ハエドクソウ

ハエドクソウはハエドクソウ科ハエドクソウ属の多年草です。がくが先端が唇形になる筒状で棘状の歯があります。果実になるとこの歯が成長し硬く残り、下向きになります。この棘が人間の衣服や動物の毛にひっつき、ひっつき虫になります。

ヤエムグラ

ヤエムグラはアカネ科ヤエムグラ属の多年草です。ヤエムグラは茎は下向きの棘が、果実はかぎ状の毛がはえていて、どちらも人間の衣服や動物の毛にくっつきます。果実にかぎ状の毛があるというところはヌスビトハギと同じです。

センダングサ属

センダングサ属とはキク科の植物の一種です。果実は硬くて棒状です。先端に数本の棘状の突起があります。この棘は逆向きについているので、人間の衣服や動物の毛にひっついてきます。センダングサ属は、湿地にはえるタウコギと帰化植物のアメリカセンダングサ以外の野草ではこの棒状の果実をつけます。

チカラシバ

チカラシバはイネ科チカラシバ属の多年草です。ブラシのような穂が特徴です。チカラシバは小穂の基部に針状の毛があります。針状の毛は果実とともにとれ、人間の衣服や動物の毛にくっついてきます。セーターなど目の粗い衣服によくくっつきます。

イノコヅチ属

イノコヅチはヒユ科の植物の一種です。小さく尖った苞葉があり、この苞葉は、果実の熟したあとも残ります。この尖った苞葉がひっつき虫となり、人間の衣服や動物の毛にひっつきます。

ひっつき虫の取り方

フリー写真素材ぱくたそ

ひっつき虫がくっついてきたらどうすればいいのか。もちろん、取りますが、くっつくのは一つ二つではありません。洗濯機で洗うと、他の洋服にもくっついて被害が広がることもあります。手で一つ一つ取っていくのも手間です。ここでは、簡単にひっつき虫を取る方法を紹介します。

軍手やタオルで取る

軍手やタオルでひっつき虫は簡単に取ることができます。軍手をして、ひっつき虫がついているところを撫でます。そうすると、軍手の繊維にひっつき虫がひっついてくれるのです。

ウェットティッシュで取る

ひっつき虫は、ウェットティッシュで簡単に取ることができます。その方法とは、ウェットティッシュで拭くだけです。これだけで、あっという間にひっつき虫が取れていきます。

乾燥させて取る

ひっつき虫のついた衣服を干して、ひっつき虫を乾燥させて取る方法です。特に、粘膜で張り付くひっつき虫に有効です。ひっつき虫が乾燥したらあとははたいて落とすだけです。

ヌスビトハギの近縁種

ムスビトハギはいくつかの近縁種がいます。その中でもヌスビトハギと同じような名前を持ち、同じような姿を持つものがいます。ここでは、代表的な近縁種と見分け方を紹介します。

マルバヌスビトハギ

マルバヌスビトハギは、マメ科ヌスビトハギ属の植物でヌスビトハギの亜種です。ヌスビトハギの葉っぱより丸く、果実の柄が短いことから見分けることができます。

アレチヌスビトハギ

アレチヌスビトハギはマメ科ヌスビトハギ属の植物で帰化植物です。全体的にヌスビトハギより大きく、花も鮮やかで、ヌスビトハギよりは大きな花です。一番の違いは、果実がヌスビトハギは二節なのにたいして、アレチヌスビトハギは三節以上あるというところです。ヌスビトハギよりも繁殖力があり、あっという間に増えてしまいます。荒地や埋め立て地に分布している野草です。

果実が四節ありますね!

ヌスビトハギのまとめ

ひっつき虫の一種であるヌスビトハギ。ひっついてくる果実は見たことがあっても花やヌスビトハギ自体を見落としていた人もいるのではないでしょうか。林を歩いていて、もし衣服に盗人の足跡がひっついてきたら、近くにヌスビトハギがあるかもしれません。ぜひ、探して観察してみてくださいね!

高倉
ライター

高倉

植物が好きです!特に野草。そのあたりに生えている雑草と呼ばれる植物です。中でもカタバミを見るとテンションあがります。

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