イラクサとは?
本州はもとより、四国や九州などほぼ全国に分布している植物の一つが「イラクサ」です。どちらかといえば雑草に近い扱いもされています。栽培などを進んでするような人はレアなタイプとされます。しかしこのイラクサという植物には、隠された秘密があります。ごく一部の方々には注目されている野山の植物です。今回はイラクサの特徴など知られざる内容を紹介します。
厳しい自然を生き抜く植物
イラクサは長い期間地上に群生し続けている植物です。日本全土だけではなく世界中各地に分布しています。湿気のある地域なら自生し続ける強さを兼ね備えた植物としても知られています。かつては野山の動物たちの食用になってしまう歴史がありました。その防御という意味から、自らにトゲや毒を身につけて進化をしてきた植物です。かなり逞しい力を持っている植物といえます。
イラクサの特徴
イラクサは樹高50~100cmくらいの多年草植物です。雌雄異株体で刺毛が生えている特徴があります。葉は対をなすように木から生えて、鋸歯状の細長い形をしています。イラクサの開花は夏から秋にかけてで、緑白色の雄花と淡緑色の雌花が咲きます。イラクサを英語ではNettle、ドイツ語でBrennessel、フランス語でOrtieと表記します。古くからその効用などが見出され、広く利用されています。
どこにでも生える生命力
イラクサは湿気などを気にすることなく有機質に富んだ土壌に生える特徴があります。日本では本州を中心に群生し、近年では北海道でも自生するようになりました。世界では北アメリカ、ヨーロッパで多く見られます。荒れ地やあぜ道、住宅の周りなどにも普通に生息しているポピュラーな草花といえます。ただし一度生えたところで安定を好むので、周囲の変化には弱く枯れることがあります。
毒性を持った刺
イラクサの最も特徴的なことといえば、茎や葉の表面には毛のような刺があり毒性を持っていることです。その刺の基部には、「アセチルコリン」と「ヒスタミン」という毒の成分を含んでいる液体が入った嚢があります。もし刺に触れてその嚢が破れた際、皮膚に付着した場合には強い痛みや痺れを生じることがあります。イラクサはごく普通に群生しているので野山に入るような時は注意が必要です。
イラクサの種類
かなりの分布率を誇るイラクサなので、その仲間にはいくつかの種類が存在します。主にはラセイタソウ、ヤブマオ、カラムシ、コアカソなどの種類があげられます。また、ヨーロッパや北米の近縁種として「セイヨウイラクサ」と呼ばれている種類がありますが、日本で自生しているイラクサの種類とは別なものだとされています。ここでは、いくつかのイラクサの種類を紹介します。
ラセイタソウ
ラセイタソウは、主に北海道南部から紀伊半島までの太平洋岸に分布する多年草です。海辺の岩場などに自生しています。葉は厚く強靱で6~15cmくらいの楕円形で不揃いに生えています。葉の表面の突出部分に短い毛があり、裏面全体にも短い白毛が密生しています。花は7月~9月にかけて咲き、葉の間から頭を出す程度の短い花です。海岸での強風に絶えるよう適応したとされています。
ヤブマオ
ヤブマオは北海道や九州、中国地方など全国に分布します。主に住宅周辺、草原・草地に普通に生育しています。草丈は1mを超えて群落を形成している傾向があります。葉は15cmくらいで厚みがあり丈夫です。鋸歯な先端をした葉ほど大きく全体に毛が多く目立ちます。7月~10月にかけ長い紐状の花を咲かせます。変異も大きくて「カタバヤブマオ」「マルバヤブマオ」といった変種もあります。
カラムシ
カラムシは草丈1.5mにもなる種類で、主に東南アジアを中心に広く分布しています。日本では本州以南の各地に目立って生えている植物です。土手や小川のほとりに群落を形成していることがあります。カラムシは繊維性があることで布などを編んだという歴史があることで、人為的に栽培し分布していったとされています。葉裏には白色の細毛が密生しています。開花は7月後半~10月頃です。
コアカソ
コアカソは日本全国、それに韓国や中国などアジアに広く分布している種類です。畑や石垣などに普通に自生しています。高さが1mを超えることがあり、しっかりとした茎で立ち上がっています。葉は対生で鋸歯になり明瞭で深く葉の先端は尾状に伸びています。茎から葉柄が赤色を帯びることでこの名前が付いたとされています。開花は8月~10月にかけて形成し、頭を垂れるように咲きます。
次のページでは、イラクサの栽培方法や利用方法を紹介します。