ハシリドコロとは
ハシリドコロは、春から夏に野山で見られる野草です。非常に強い毒を持つことで知られていますが、他の食べられる野草と間違えることがあります。まず、ハシリドコロがどのような植物なのかを紹介します。
ハシリドコロの基本的な情報
科・属 | ナス科・ハシリドコロ属 |
学名 | scopolia japonica |
生息地 | 日本の本州・四国・九州 |
生育場所 | 谷間の湿度が高い木陰 |
草丈 | 40cm〜50cm |
花が咲く時期 | 4月〜5月 |
ハシリドコロは、葉や花は枯れてしまいますが、根は地面の中で成長していく多年草です。春先に芽を出し、花や実をつけた後、夏に葉が枯れるので、春にしか見ることはできません。実の中に種があり、地面に落ちた種が春に発芽します。
ハシリドコロの名前の由来
ハシリドコロは、食べると幻覚を起こしながら苦しんで走り回る様子よりこの名前がつけられ、「キチガイイモ」や「キチガイナスビ」とも呼ばれます。こう呼ばれるほどハシリドコロの持つ毒性は大変強く、間違えて食べてしまうと大変なことになります。
ハシリドコロの外見の特徴
ハシリドコロは、葉や花など草全体に強い毒性を持っています。しかし、誤って食べてしまい、中毒症状を起こしてしまう方がいます。そのため、他の野草と見分ける必要性は高く、ハシリドコロの特徴をしっかり理解しておくことは、野草を食べる機会がある方には非常に大切です。この章では、ハシリドコロの特徴を部分ごとに詳しく紹介します。
ハシリドコロの特徴①芽
ハシリドコロは、早春の2月〜3月に芽を出し始め、芽を出したばかりの頃は黄緑色ですが、成長するにつれて緑色が濃くなり、紫の色味もでてきます。ハシリドコロの新芽は、フキノトウの新芽と間違えやすいです。ハシリドコロとフキノトウは、芽を出し始める時期も近く、新芽の葉の丸まり方や色が大変似ています。
ハシリドコロの特徴②葉
ハシリドコロの葉は、形が楕円形、長さが5cm〜15cm、色が黄緑色か緑色です。葉に毛は生えていません。青々としておいしそうに見えますが、葉にも毒性があるため食べることはできません。ハシリドコロの葉は、オオバギボウシの葉と間違えられることがあります。
ハシリドコロの特徴③根と根茎
ハシリドコロの根は、葉が枯れた夏から冬の間も地面の中で成長しています。根は、長さ15cm、直径3cmほどの大きさで、不規則に曲がって枝分かれしています。また、ハシリドコロには茎が根のように変形した根茎もあります。根と根茎の両方が、薬の原料に使われている「ロートコン」です。
ハシリドコロの特徴④花と実
ハシリドコロの花は、葉の根元から垂れ下がるように咲き、色は暗紫色、大きさは3cmほどで鐘形をしています。花が終わったら実をつけ、実は、花がくの中にあり種が入っています。ハシリドコロの花や実は、小さくてかわいらしくつい触りたくなりますが、どちらにも毒性があるため、素手でさわるのは避けてください。
ハシリドコロの持つ毒性
ハシリドコロは、草全体に毒性がありますが、特に根と根茎に毒性成分を多く含んでいます。その成分は、毒として作用するだけでなく痛みを和らげる効果があることがわかり、薬の原料として活用されるようになりました。
ハシリドコロの持つ毒性成分
ハシリドコロが持つ毒性成分は、ヒヨスチアミン、ノルヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどです。誤って食べられることがあるチョウセンアサガオも、同じ成分を含んでいます。この毒性成分は、家庭での調理程度の加熱では分解できません。他の食べられる野草のように、ゆでたり油で揚げたりしても中毒症状を起こします。
ハシリドコロの中毒症状
ハシリドコロから引き起こされる中毒症状には、嘔吐や下痢、腹痛といった胃腸症状から、めまいや幻覚、異常な興奮といった神経症状まであります。また、食べるだけでなく、ハシリドコロに触れた手で目をこするだけで、目に毒性成分が入り物の見え方が変わってしまうことがあります。一時的なものでずっと症状が続くわけではありませんが、ハシリドコロは素手で触らないよう気を付けて、もし触ってしまったら手をしっかり洗ってください。
ハシリドコロの中毒を起こしたら
ハシリドコロの中毒症状がでたら、すぐに病院を受診してください。食べる量が多いと死亡することもあり、病院で治療を受けないと症状もおさまりにくいです。中毒症状は、食べた後1時間〜2時間後に出始め、1日経過すると落ち着いてきます。
次のページでは、ハシリドコロの見分け方や薬への利用についてご紹介します。
出典:写真AC