ウサギギクとは
ウサギギクは、キク科ウサギギク属に属します。本州中部より北の高山から亜高山地域に分布し自生する、多年草の高山植物です。ここでは、ウサギギクという変わった名前の由来や特徴を見ていきましょう。
ウサギギクの特徴
ウサギギクの姿
単一の茎で直立し、先端に一輪の黄色い花をつけます。葉は長くやや厚めで、ウサギの耳のように垂れ下がる姿が大きな特徴です。この姿がウサギギクという名前の由来です。黄色い丸い花をつけることから「黄車」と言う別名もあり、古くから親しまれてきました。
ウサギギクの効能
ウサギギクの一種であるアルニカ(セイヨウウサギギク)は薬草として知られ、古くから使われてきました。アルニカ花から抽出されたオイルが消炎、血行促進、鎮痛に効果がある「アルニカオイル」として販売されています。アルニカオイルとはマッサージ用や手作りコスメにも使える市販品です。
ウサギギクの種類と見分け方
ウサギギク属の種類は多く100種を超えていますが、大半はアメリカに分布しています。日本国内で確認されているウサギギクの近緑種は、以下の4種類だけです。
エゾウサギギク
エゾウサギギクは北海道、東北、中部の一部に生息します。外見がウサギギクととてもよく似ており、花茎1つに1輪の花を咲かせます。花の大きさは4.5~5cm程です。黄色い花びらの端はギザギザののこぎり状ですが、葉にはギザギザがありません。全体的に縮れた毛でおおわれています。
オオウサギギク
北海道の宗谷地域、礼文島、サハリンに自生する高山植物で、絶滅危惧植物です。直立した花茎の先に5cmほどの花をつけます。草高は40~60cmほどあり、葉の縁はギザギザののこぎり状で、葉の裏表は短い毛でおおわれていす。
チョウジギク
チョウジギクの名は、筒状の花が香料の丁字(クローブ)に似ていることからつきました。別名は「くまぎく」です。茎の先端から3~4つほど花茎が伸びており、全体は白い綿毛でおおわれています。薬草として古くから使われており、主に高血圧やめまい、しもやけに効能があるとされています。
見分け方一覧
葉の縁のぎざぎざ | 草高 | 葉の互生・対生 | 生息域 | |
ウサギギク | なし | 20~30cm | 対性 | 北海道から本州中部の高山 |
エゾウサギギク | なし | 10~30cm | 上部のみ互生 | 北海道から北 |
オオウサギギク | あり | 40~60cm | 全て対性 | 北海道亜高山帯の草地 |
チョウジギク | あり | 20~80cm | 対性 | 本州の日本海側、四国剣山の山地帯から亜山地帯 |
ウサギギクの育て方
高山植物のウサギギクですが、自宅でも育てることができます。ここでは、苗からの育て方を中心に説明します。
用土の選び方
高山では湿気の多い場所を好むウサギギクですが、あまり柔らかい用土のみでは土が詰まって水はけが悪くなるため、用土の選択には気をつけましょう。鉢底には軽石を入れ、なかに入れる土も目詰まりのしにくいものを選びます。水やりを繰り返すと土が粘土状になってしまいます。水はけが悪くなると、病気の原因にもなり得るでしょう。この場合は用土を変えるために植え替えをします。
おすすめの用土
- 桐生砂
- 軽石砂
- 日光砂
- 硬鹿沼土
管理
ウサギギクは春に芽吹き開花し、夏の間は葉を茂らせ、冬になると葉を落として休眠します。このサイクルに合わせて春と秋は日当たりのよい場所、夏は日蔭の涼しい場所に置きます。夏の湿度と高温の状態は、高山植物のウサギギクにとってはとても辛いためです。
季節の管理一覧
季節 | 姿・様子 | 施肥 | 水やり | 管理場所 |
春 | 芽吹き開花の時期 | 2月頃~6月まで2週間ごとに液肥を与える | 乾いたら1日1回たっぷり与える | 日向 |
夏 | 葉がたくさん生い茂った状態 | 与えない | 乾いたら1日1回たっぷり与える | 日蔭の涼しい場所 |
秋 | 葉がたくさん生い茂った状態から少し葉が枯れかかる | 9月~11月まで2週間ごとに液肥を与える | 乾いたら1日1回たっぷり与える | 日向 |
冬 | 葉が枯れて地上には何もない状態 | 与えない | 与えない | 日向 |
植え替えと施肥
芽吹きと開花時期の春に合わせて肥料をあげます。ウサギギクは春の開花後か、葉が多く茂り株が増えた秋頃に植え替えをおし、根につかないように元肥を施してください。株が増えた場合には、株分けして植え替えをしないと翌年の花付きが悪くなります。
病気や害虫
根腐れ
ウサギギクは湿気のある場所を好みますが、水はけの悪い土に植えると根腐れを起こします。根腐れ対策のためにも、定期的に植え替えが必要です。
アブラムシ
アブラムシは見つけやすい害虫です。新芽について養分を吸い取る以外にも、ウイルスなどの病気を移すことがあるため見つけ次第すぐに駆除しましょう。対策としては初夏と秋にオルトラン細粒を巻き根から吸い上げるように施すか、もしくは水和液を散布します。
ハダニ
ハダニの存在は、葉の裏をよく観察しないと見落としがちです。ハダニは初夏から秋にかけて発生しやすい害虫です。ハダニ対策として薬剤散布もありますが、すぐに耐性ができてしまうため防虫ネットで防護するのもよい方法でしょう。
まとめ
薬草としても使われているウサギギクは、自宅での栽培も可能です。正しい育て方や病気害虫対策をすることで、長く楽しめます。可憐なウサギギクの花を、自宅でも咲かせてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC