青いバラの歴史
青いバラと言えば、遺伝子組み換えで生まれたサントリーのブルーローズが有名ですね。ただ、実はそれ以前にも、青いバラを作出することは、多くのバラ作種家の永遠の夢であり、それに一生涯をかけた人がいます。その人物は小林森治(1932~2006)です。
ボタニ子
小林森治さんとは、どんな人物でしょうか?
小林森治と青竜
彼は36年を費やし、品種改良という方法で、赤い色をどんどん抜いていき、青に近い色のバラにしていきました。そして、ついに、2002年「青竜」を発表。その青いバラ「青竜」を東洋大学生命研究所で分析したところ、青い色素が検出されました。それはバラ独自のDNAを持つものだったそうです。
ボタニ子
品種改良で、青いバラを作ったんですね。
青竜は交配が難しかった
しかし、残念ながら「青竜」は花粉がほとんどつかないので、さらなる交配が出来ないそうです。ただし、小林氏は「青いバラは作れない」という定説を覆したとも言われています。小森氏が作った青いバラは、栃木県の「とちぎ花センター」や「真岡井頭公園」で今でも見ることができます。
青竜とサントリーの青バラの違いは?
小林氏の青バラと、後にご紹介するサントリーのブルーローズの決定的な違いは、品種改良か遺伝子組み換えかという点です。品種改良は「特徴を持った同じ種のものを交配していって、その長所を持った品種をつくること」で、遺伝子組み換えは「他の種からその特徴を持った遺伝子を組み替えること」です。
ボタニ子
「品種改良」か「遺伝子組み換え」かという点が、交配できるかどうかに、大きな違いがあるわけですね。
青いバラの花言葉
さて、サントリーブルーローズの開発秘話についても触れていきますが、まず先に、青いバラの花言葉からみていきましょう。「夢叶う」などが有名ですね。
青いバラの花言葉①「夢叶う」
サントリーの開発によって2009年、新しい青いバラが誕生しました。商品名は「SUNTORY blue rose Applause(サントリー ブルーローズ アプローズ)」です。従来の青いバラは、薄いグレーがかった紫でしたが、サントリーのブルーローズは、より青みが加わったものです。花名のアプローズとは「拍手喝采、称賛」という意味で、花言葉は「夢叶う」とされました。開発チームの喜びがその花言葉にあらわれていて、私たちも伝わってきますよね。
青いバラの花言葉② ブルーローズ以前は「不可能」
“That's a Blue Rose!”といえば「不可能」
そもそも、青いバラの研究開発は国内外の育種家によって、ずいぶん長く試行錯誤されていたのですが、なかなか青いバラを作ることができませんでした。青いバラを開発することは「不可能」の代名詞のようなものだったのです。“That's a Blue Rose!”と言えば、「不可能だ!」「ありえない!」の意味で、時々ビジネスでも耳にしました。でも、今ではその表現は的を得ていませんね。2009年に終わりを告げた表現です。
青いバラの花言葉③「奇跡」
ブルーローズには「奇跡」という花言葉もあります。ブルーローズが開発された後、海外においてブルーローズに新しい花言葉「attaining the impossible」がつけられました。その意味は「不可能なことを成し遂げる」です。ブルーローズを作ったサントリーは、まさにバイオテクノロジーによって「奇跡」を起こしたともいえますよね。
青いバラの花言葉④「神の祝福」
結果的には、青いバラの開発は日本で成功しましたが、その間、他国でも同時に開発が進んでいました。特許をめぐって競争をしていたといっても過言ではありません。「神の祝福」という花言葉は、奇跡を信じて研究を続け、ついにブルーローズを作り出した日本の研究チームにすれば、神からのねぎらい、祝福ととれたのでしょう。
青いバラの花言葉⑤「ひとめぼれ」
西欧ではかなわぬ人に一目ぼれしてしまった心の内を表すのに青いバラを連想するようです。誰しも目を奪われるほど美しい人や花を見ると、一目ぼれしてしまいますね。サントリーの研究チームも待望の青いバラを見た瞬間、きっと一目ぼれしたのではないでしょうか。
青いバラの開発秘話
それでは、ブルーローズが開発されるまでの道のりをたどってみましょう。1980年代はバイオテクノロジーが急速に進歩した時期です。それをきっかけに、世界中で青いバラを開発する研究が始まりました。
オーストラリアの企業と共同で開発開始
1990年、サントリーフラワーズとオーストラリアのフロリジーンは共同で、青いバラの品種の開発を始めました。フロリジーン(花の遺伝子という意味)はメルボルンに本社を置く、バイオテクノロジー企業で、花の遺伝子操作を専門にしています。
ブルーローズの開発経緯
二つの課題
青いバラを作り出すには「バラ以外の青い花に含まれている遺伝子から、青色遺伝子を取り出すこと」と「バラの細胞に青色遺伝子を入れて、その細胞から青いバラを作出する方法を見つけ出すこと」が両社の課題でした。
青色遺伝子の取得に成功!
サントリーの研究チームは青色遺伝子を取り出すために、濃い紫色のペチュニアに注目しました。1991年、青色遺伝子の採取に成功し、その成果は科学雑誌「Nature」に掲載されました。
咲かない?
しかし、なかなか青いバラが咲かなかったといいます。その理由はバラに青色色素を蓄積することができなかったからです。試行錯誤の年月は10年以上も経っていました。当時、開発研究者はあきらめかけたそうです。そんな時、彼の子どもたちが青い折り紙で作ったバラをプレゼントしてたそうで、これがきっかけで、彼は「頑張ろう!」と気持ちを新たにできたそうです。家族の力は大きいといえますよね。
ボタニ子
家族の力は、偉大ですね〜。
パンジーの青に着目
ついに1996年、パンジーの青色遺伝子を入れると、バラの中で青色の色素が作られるようになることを発見しました。
開発成功から販売へ
青みがかったバラが咲いた!
1998年から1999年頃に、やっと青みがかったバラが咲くようになってきました。そして2002年に研究チームは咲いている花の中から最も青い品種を選び出し、世界で初めて青色の色素が100%近く蓄積した青いバラを咲かせることができたのです。
2009年に一般販売が開始
2004年に広報発表、そして、2009年に一般への販売が開始されました。ブルーローズ開発ストーリーは理科などの教科書に掲載されたり、国立科学博物館などで展示されたり、多くの教材としても利用されているようです。
数々の賞を受賞
サントリー ブルーローズ アプローズは以下のような賞を受賞しました。
2004年
- バイオインダストリー協会(JBA)「特別技術賞」
- 日経BP社 日本イノベーター大賞「優秀賞」
- 日本植物細胞分子生物学会「特別賞」
- 日本植物生理学会 PCP論文賞を受賞!
- 植物科学研究所長・田中良和 農学賞及び読売農学賞
- 関西元気文化圏ニューパワー賞
- 第1回「JAPAN ROMANCE AWARD」ロマンステクノロジー部門
- 平成22年度全国発明表彰発明賞
ボタニ子
続いて、青いバラの花の本数別の花言葉を紹介します。
*写真:青竜