お茶の花ってそもそもどんな花?
お茶の花ってどんなものか見たことありますか?新芽が出てくる春の時期に低い緑色のお茶の木が並んだお茶畑や、季節の歌で「夏も近づく八十八夜」から歌い出しが始まる茶摘み歌は知っていても、お茶畑一面に花が咲いているのって想像がつきにくいのではないでしょうか。
お茶の花の基本情報
お茶の花がお茶畑で見られるのが少ない理由
お茶畑ではお茶の花ははわずかしか咲かず、見かける機会は大変少ないです。なぜなら、農家さんが育てるお茶畑では、茶葉の新芽への養分を多くするために、お茶の花が咲く前のつぼみの時期に摘み取り作業をしまうからです。
お茶の花を身近に楽しむには
日本のお茶の木はほとんどが中国産の品種で、季節を通して常緑のため、枯れる心配があまりありません。樹高は、お茶畑の(腰高辺りの)低い印象があるように1m~5mほどの高さです。春の季節にみつばちによって交配し、庭木としても育てやすいので、ご家庭でも鉢植えや地植えで楽しむことができます。
お茶の花の見た目は?
冬に咲く白ツバキと似ています。存在感がある白ツバキに比べると、お茶の花はつつましい印象が漂います。なお、つぼみはぽってりと丸い形をしており、花の大きさは3cm~5cmほどの大きさです。
お茶の花の科目
ツバキ科ツバキ属になります。ツバキとお花の咲き方が似ているのも納得できます。
お茶の花の咲き方
お茶の花の咲き方は開花するとき、葉の裏にそっと咲いて非常に控えめな印象を与えます。また、満開の状態では、お花の中央にある「おしべ」と「めしべ」が冠のようにひらいて咲きます。小ぶりな白い花びらの中にまっすぐ黄色いしべが広がるので、可愛らしい印象をあたえます。
お茶の花の開花時期
お茶の花は秋に咲くので、その見頃は(新茶の春ではなく)、10月~11月下旬ごろの時期です。また、冬の季語とされており、俳句でも正岡子規をはじめとして、数々の俳人の句で詠まれています。お茶の花ということもあり、茶道においても季節の茶花として活(い)けられる機会が多くあります。
お茶の花の花言葉
お茶の花の花言葉は「追憶」「純愛」です。由来は白くて素朴な印象の花からイメージされた。懐かしい雰囲気をもっていることからという由来があります。ちなみに、お茶の花の誕生花としての日付は、見頃の季節となる「11月29日」です。
お茶の花と白ツバキの違いを比較
科目がどちらもツバキ科になるので、似ているというのも分かります。そんな中でもやはり違いがあるので、ここではその違いについて比べてみました。
お茶の花と白ツバキの違いの見分け方
お茶の花に比べ、白ツバキは品種が多くあり、同じ真っ白の花弁をもつ白ツバキであっても数種類の品種があります。代表的な品種を元にお茶の花と比較してみます。
花のつけかたや咲き方の違い
お茶の花と白ツバキを比べてみると、花の開き方が少し違います。お茶の花は花弁が抱え込むように冠のように丸みを帯びて、咲く方向は短い柄でぶら下がるように下を向いて咲きます。白ツバキの咲く方向は上を向いて咲き、外にひらくようにラッパ型をしており、そこで見分けがつけることができます。
香りの違い
お茶の花と白ツバキの花の香りを比べたときに、お茶の花はほのかに清潔感のある柑橘系の香りがあります。一方で、白ツバキは品種が違っても多くの品種は香りはしません。
花のサイズの違い
手の平にのせると転がるほどの3cm~5cmくらいの大きさがお茶の花です。一方の白ツバキは大きさが品種により幅があり、4cmほどの大きさから、大きいものでは大輪タイプもあります。お茶の花と同じくらいの大きさのものでいうと、ツバキの品種、白侘助(しろわびすけ)がお茶の花と似たサイズです。
咲く見頃の違い
お茶の花は、10月~11月下旬ごろの時期に咲くのに対して、白ツバキは、11月~12月ごろ(または2月~4月ごろ)と品種により咲く時期の違いがあります。お茶の花が咲き終えてから、冬の季節に見頃を迎えるのが白ツバキです。
花言葉の違い
花言葉は、「純愛」「追憶」といった意味をもつお茶の花に対して、白ツバキは「完全なる美しさ」「申し分のない魅力」と対照的な印象がのこります。
お茶の実と種とは?
お茶の花が咲くとみつばちによって交配し、その後に実や種も出来ます。お茶農家さんはお茶の花が咲く前に新芽への養分確保のために摘み取ってしまう事が多いので、お茶の実や種は花と一緒でなかなかお目にかかれません。
お茶の実ってどんなの?
お茶の実の色や形は?
お茶の実は、緑色でかたく、でこぼこした形をしており、ゴツゴツした手触りをしています。熟してくると茶色く変色し、はじけて中の種が飛び出します。
お茶の実の利用方法
食べる事が出来ない実は、中身が種でほとんどが埋め尽くされているので、そのまま茶実粕(ちゃじつかす)として肥料に使われたりするなどの用途で使われます。
お茶の実を利用した抽出したオイル商品
お茶の実から抽出した油を使い、食用として、オリーブオイルのように商品化されているものもあります。また、お茶の産地で有名な静岡県でも食用のお茶の実油商品があったり、他にも口に入っても大丈夫な為スキンケアオイルがあったりします。
お茶の種ってどんなの?
お茶の種の形は?
実の中にはぎっしりと種が詰まっています。3つほどのコロンとした栗のような形で、色はかなり濃い茶色をしています。
お茶の種の利用方法
種からはカメリア油として抽出し、食用やお肌につけるスキンケアオイルとして使われていることもあります。
お茶の種からは発芽しないのか
お茶の種からも発芽はします。ですが、種から育てる場合、生育するお茶の個体差がとても大きく、管理がとても大変であるため、現在は種をまく方法で木を育てられておりません。種をから育てない代わりに、「挿し木」によって木を増やす方法が今は主流です。お茶の種を見かける機会が少ないのには、そうした背景があります。
お茶の花の利用方法とは?
じつは食用としても利用可能
珍しいお茶の花が食用として市場に出回る事はあまりなく一部の地域に限られますが、例えば、お茶の花を乾燥させたものにお湯を注いで、花茶として飲む事も可能です。ガラスの急須に、茶葉と一緒に入れて見た目と香りを楽しむことができるのでお勧めです。
島根県の「ぼてぼて茶」
煮出してご飯とともに、食用としての習慣が残っているのが島根県で「ぼてぼて茶」という料理があります、サポニンと呼ばれる成分がお茶の花には含まれており、このサポニンが泡立つ性質をもっているので「ぼてぼて茶」は泡立っています。
サポニンという成分に注目
聞きなれないサポニンという成分は、お茶の花、茶葉、実や種にも含まれている成分です。
サポニンの効能
お茶の花に一番多く含まれており、抗菌作用や血圧上昇抑制、消炎作用といった作用があります。香りが清潔感のあるのもこのサポニンが関係しています。
サポニンは幅広く利用されている
食として利用するだけではなく、お茶の実からとれる粕に含まれるサポニンの成分を利用して、天然の肥料として使われている商品もあります。
サポニンが多く含まれている植物
サポニンは大豆などのマメ科の植物に多く含まれている成分です。お茶にも含まれているのですが、茶葉にはわずかで、「お茶の花」にもっとも多く含まれています。
まとめ
お茶は庭木としても育てやすく、手入れしやすい高さなので、鉢植えや地植えでお茶の花を楽しむこともおすすめです。白椿との違いをよく観察するのもきっと面白いですよ。また、実や種の意外な活用方法もあるので、食用オイルなどは、地域のお土産としても喜ばれ流のではないでしょうか。
お茶の花